異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第5章 遥か遠いあの日を目指して

第103話 妖精のお願い

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 そろそろリアナの身体を返してもらおうか、と俺が切り出そうとした時リリーが口を開く。

「あのさァ、さっきから小声で警戒してるのってアレでしょ?あの暴れん坊の熊でしょ?言っとくけどアイツはこの辺りにはいないからね?」

 と、千載一遇の情報をくれたのであった。

「そうなのか?」

「こっからずっと向こうの方に陽当たりが良くて沢山花が咲いてる場所があるんだよネ。昨日はその辺りで眠ってたから、まずこの辺にはいないわね」

 そう断言するリリーの言葉に俺は少しだけホッとした。
何せあれだけ大騒ぎしてしまったのだから、いつ暴れる神獣とやらに出会すのかと常に警戒し続けていたからだ。

「それに、アタシはアイツの気配を覚えたから近付いたらすぐわかるし」

「そりゃ本当か?」

「あったりまえでしょー。アタシはこれでもこの森の管理者なんだかんね」

 ふふん、と自慢げな様子のリリー。

「……蜘蛛の巣に引っかかって食われそうだったのに?」

「うっさいわね!誰にだって失敗の一つや二つあんでしょーがッ!」

 ……いや、そりゃそうだけどその失敗は俺達がいなけりゃ死んでた位致命的なものだったんだがな。

 なんとも頼りない妖精ではあるが、この森の最も危険な存在を察知する力があるのは大きい。

「……ちなみに、ラムリカ村へと続く林道って安全かどうかわかるか?」

「んー?そのなんとか村は知らないけど、人族ヒュームが使ってたっぽい道は比較的安全かもネ。でも途中で神獣の寝床付近を通るだろうからそこは注意した方がいいかも」

「なるほど……。ちなみに、巨大蜘蛛に追われたせいで林道から離れ過ぎちまったんだが、森の中をリリーは案内出来たりするか?」

「ったりまえでしょー」

 どうやら、思いもかけず危険回避付きのナビゲーターを発見したようだ。
……いや、蜘蛛の巣にかかったりする辺りやや信頼に欠けるが、それでもかなり心強い案内役と言える。

「なぁ、リリーさえ良ければ俺達を森を抜けるまで案内してくれないか?」

「えー?うーん、まぁ別に案内くらいなら……。あ、それじゃあアタシのお願いも聞いてよネ!」

 良い事を閃いたかのように顔を輝かすリリー。

「案内したげる代わりに、あの暴れん坊を森から追い出すのを手伝ってよ!」

「いや、それは無理だろ」

「即答ッ!?」

 間髪入れずに答える俺にリリーが鋭く突っ込んだ。

「あのさ、俺達はその神獣とやらに関わりたくないんだよ。今はとにかく安全に、そして早急にこの森を抜けたいんだ。だから案内して欲しいって頼んだんだが」

 わざわざ虎の尾を踏むような真似はしたくない。
何より俺達は、というより主に俺が手負いなのだ。
傷が治らない身体が不便でならない。

「んー、じゃあ村に行った帰りでいいから手伝ってよ。アタシだけじゃ手に負えないんだもん。この森の精霊達はアタシの言う事きかないし」

「……管理者なのに?」

「とりあえずあの暴れん坊の熊をアンタ達で追い出して、って命令してからアタシの言う事きかなくなったのよ!ホント使えないんだから!」

 それを聞いてダメだコイツ、と俺は額に手を当てる。
そんな丸投げ状態の命令するだけで解決するなら森の精霊達だけでどうにかしてるだろ。
そりゃあ精霊達もストライキ起こす訳だ。
精霊術なんて植物を操れるあんな凄い力を伝授できる癖に、どうして蜘蛛の巣から逃れられなかったのか疑問だったが。
まさかそんな闇があったとは……。

「つってもな……。噂を聞く限り、かなりの化け物の熊なんだろ?それを森から追い出すなんて俺達だって出来ないぞ?」

「ダイジョーブダイジョーブ!アタシのフォローもついてるからさッ。それにこの娘っ子、めちゃ精霊達との相性が良いから!もう半端ないから!」

 すげぇ頼りにならない上に具体性のない言葉である。
何一つ安心できるものが無かったぞ。
今の発言でリアナの株が上昇し、この妖精の株が大暴落した訳だが……。
果たしてコイツの案内は信頼に足るのだろうか?
それすら怪しくなってしまう。

 俺は大きく溜息をついてから、リアナに取り敢えず身体を返してもらうようお願いした。





「それで、リアナはどう思う?」

 リリーの憑霊術を解除され、元に戻ったリアナに俺は意見を尋ねてみる。

「うーん……私としては、困ってる妖精さんや森の精霊達を助けてあげたいとは思うかな」

 なんとも健気でお優しい言葉である。
リアナが良い娘すぎてその存在が眩しく見えた。
捻くれた俺はあの妖精の値踏みをし始めていたというのに……。

「だが、現実問題俺達の力でどうこう出来るものでもないぞ?」

「それはそうだよね。でも、シンは幻獣に詳しいし、力になれるんじゃないかな?」

「俺が詳しいのは〝狼〟だけどな。〝熊〟は専門外だよ。それに、まだ神獣と幻獣が同じなのかも断言できない」

「うーん、そうだね……。なんにしても、私はシンの判断に従うよ。私なんてそれこそ役に立たないだろうし……」

 そう言ってしょんぼりする彼女だが、俺はそんな事はないと首を振る。

「ゴブリンの群れをやっつけたのは俺だけの力じゃない。あの馬鹿みたいなデカい蜘蛛を押さえ込んだのも俺やあの小さい妖精だけの力じゃない。だから俺はリアナの事を頼りにしてるし、もっと自分に自信を待って良いんだ」

 だから、と俺は続ける。

「リアナの意見も俺は尊重するし、俺達の問題は一緒に考えたいんだ」

「シン……ありがと」

 顔を綻ばせるリアナに、俺は恥ずかしくなって頬をかいた。
そんな俺達をニヤニヤした顔付きで見ている妖精がそこにいた。
若干それにイラッとしながら俺は掛け声を上げて立ち上がる。

「よし、そんじゃあ決めた」

 ニヤケ面のリリーを真っ直ぐ見据えて俺は提案する。

「俺達からの願いは森を出るまでの案内だ。その代わりの条件の神獣を森から追い出す、ってのには協力はするが完遂出来る保証は出来ない。俺達の手に余るようなら即座に手を引く。それでも良いか?」

 その提案にリリーはしばし考えていたが、親指を立てて突き出しコクリと頷いた。
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