異世界転生した俺は最強の魔導騎士になる

ひとつめ帽子

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第5章 遥か遠いあの日を目指して

第105話 八神獣

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 俺のデコピンに悶絶して転げ回ってたリリーが復活すると、涙目になりながら再びリアナの頭に飛び乗って文句をがなり立ててくる。

「ホントに痛かったんだけどッ!てか、ここまで連れてきてあげたのに感謝の一つもない訳ッ!?」

「感謝の代わりにさっきのデコピンに万の思いを込めておいただろ。伝わらなかったか?」

「激痛と怒りしか伝わってこなかったわよ!」

 俺の怒りはちゃんと伝わったようで何よりだ。
しかしなんとも元気な妖精である。
こちらはこの妖精に関わってから散々な思いをしてるのだが、そこに関しては全く意に介していないと見える。

「とにかく俺達は先を急ぐ。俺も怪我を治療したいし、リアナも休ませてやりたい」

 今はリリーがリアナを操っているで、一見はすればその姿は元気に見える。
しかし、実際には彼女の疲労は計り知れない。
長旅の上に慣れない野営、連日続く戦闘に加えて最後は彼女嫌いな虫祭りだ。
彼女の心身はこの三日で想像以上に磨耗している事だろう。

「だから早く解放してくれ。リアナは俺が背負っていくから」

「背負わなくてもアタシが歩かしていくからダイジョブよ。ていうか、この娘もそんな血塗れの背中に背負わされたくないでしょ」

 リリーは呆れたように言ってくる。

「……いや、ってお前は森に帰るんだろ?」

「え?帰んないし。アタシも一緒に付いてくし」

「何だって?」

 「当たり前じゃん」と、さも当然かのように言ってくるリリーを見て思わず俺は唖然としてしまう。

「お前はこの森の〝管理者〟なんだろ?森の〝管理者〟ってのがよくわからんがこの森にいなきゃいけないんじゃないのか?」

「ヤーよ、こんな野蛮な森で独りでいるなんて。凶暴な熊もいるし、バカデカい虫達はアタシを食べようとするし、森の精霊達には愛想尽かされるしッ」

「最後のはお前の自業自得だろ……」

「とにかく、森の安全を確保する事こそ〝管理者〟の務めな訳 ワケ。それにはアンタ達がちゃんと約束守ってここに戻って来てもらなきゃなのよ。それに久々に誰かと会話して楽しいから付いて行ってもいいでしょー?」

 むしろ付いていくから!と決定事項のように言い張るリリー。
森の管理者とか熊がどうのとか依然に、結局コイツは楽しい事がしたいらしい。
本当に何というか、自由過ぎる妖精である。
てか熊の問題は俺達にぶん投げる気満々なのな。
俺達はこの森とは無関係な筈なんだがな。

「そもそも、妖精ってのは森から離れて良いのか?妖精は森の中にいるってのが俺の中の常識だったんだけど」

「それは偏見だね。別にアタシ達は森にいなきゃいけない訳じゃないの。ただホラ、アタシ達の声ってアンタもそうだけど聞こえないんでしょ。だから精霊達のいる場所にしか基本的にいないってだけ。お話しできる相手がいなきゃツマンナイもん」

 そういうものなのか……。
精霊や妖精についてはよく知らないので森でしか生きられないモノだとばかり思ってたが、そうじゃないらしい。

「わかったわかった。付いてくるのは勝手にしてもらって構わないが、とりあえずリアナの身体は休ませてあげてくれよ。かなり疲れてるはずなんだ」

「そこは大丈夫」

 フフン、と鼻を鳴らして親指を立てるリリー。

「アタシが憑霊術をかけつつ治癒魔法もかけてるからこの娘の疲労は殆ど回復しているわ。もっとも、あまり眠れてなかったみたいだからまだこの娘は寝てるけどね」

 そうだったのか。
治癒魔法が使える事にも驚きだが、一応リアナの身体を気遣ってくれていた事には驚いた。
しかも怪我の治癒ではなく、体力スタミナ回復の治癒魔法とはなかなか便利なモノを扱えるようだ。
あの傍迷惑な光魔法よりよっぽど役に立つ。

「だからアンタの怪我も見せなさいよ。治したげるから」

「いや、俺には治癒魔法は効かないから大丈夫だ」

 普通に痛いし大丈夫でもないが、こればかりはどうしようもない。
と言っても、俺は月一でフェンリルとじゃれ合っていたので怪我には慣れっこだ。
それを知らないリリーは変人を見るような目をして首を傾げる。

「治癒魔法が効かないって、なんで?」

「話すと長くなるから気にするな。色々あったんだ」

 そう言って俺は「行くぞ」と歩き始める。

「えー、どゆことー?ねぇなんで治癒魔法が効かないのー?」

 なんでなんでー、とウザったく聞いてくるリリー。
やっぱりコイツは置いてくるべきかもしない、と思いつつ面倒なので歩きながらこれまでの経緯を簡単に説明しておいた。




「あの噂の〝時兎〟に過去に飛ばされたなんてねー」

 俺の話を聞き終えたリリーは興味深そうにそう呟いた。

「てか〝時兎〟ってやっぱ実在するんだね。それに時間を操れるって噂も本当なんだ。スゴーイ、ヤバーイ」

 テンションが上がっているリリーはどうやら〝時兎〟を知っている様子。
ならば色々と情報を集めたい。

「なぁ、神獣ってのは一体何なのかリリーは知ってるのか?」

 精霊達との交流があるリリーなら色々知ってそうなので尋ねてみる。

「一体何だ、って言われてもねー。『人族ってのは一体何なんだ』って質問と同じじゃなァい?」

 答えに困る質問だよねー、とケラケラ笑うリリーに俺はイラっとする。

「あんな化け物みたいな存在がどうして生み出されたのか知ってるか、って事だ」

「んー、それはねー。もともとは魔獣の一種だったらしいよ」

 魔獣——。
つまり、魔力を持った自然に生まれた獣の事だ。
魔物との違いは魔族や魔界の力によって生み出されたかどうか、だったか。

「魔獣の中でもアイツらはかなり特別な力を持ってたワケ。昔から各地で暴れ回ってんのよ。天災みたいな存在だけど、〝神獣〟って呼び方を最初にされたのは霊鳥が始まりだね」

「霊鳥……?」

「原初の神獣、〝不死の霊鳥フェニックス〟」

 不死とはまた……。
それがソイツの特殊能力だとしたら、とんでもないな。

「もともとあの霊鳥は害のない神獣だったのにねー。アンタ達人族がフェニックスの逆鱗に触れて怒らせたって聞いたわ。あとはアタシの知る限りじゃ害のない神獣なんて他には兎くらいなもんかな」

「それが〝時兎〟か」

「〝時兎アルミラージ〟。時を司る兎さん。時間を操れるとか不死より凄いよねー」

「兎の居場所は知ってるか?」

「知らなーい。そもそも、アイツは害がないってより他の生物に関わってないってだけだからね。見つけた時にはその姿が消えてしまう。そんな幽霊みたいな存在だって聞いた事あるよ」

 でも時間が操れるなんてアタシもその力が欲しいー、と目を輝かせるリリーを他所に俺は唇を噛み締める。
リアナの話じゃアルミラージは自分を探して欲しいとか言ってたらしいが……。
そもそも〝時兎〟の情報が殆ど得られない。
アイツだけが唯一俺達を元の時間軸に戻してくれる手掛かりだというのに……。
或いは、同じ神獣ならば何か兎の情報を持っているのだろうか?

「……ちなみに、他の神獣の事も知ってるのか?」

「噂くらいはね。〝幻惑の妖狐キュウビコ〟。魔法とは異なる妖術ってので悪さばっかりしてる悪戯狐。あと〝破滅の獅子ウガルルム〟。アイツは精霊界でも超有名。色んなモノを破壊してないと気が済まない破壊神みたいな凄く迷惑なヤツ」

 狐と獅子……。
確か、あの魔族が連れていた奴等はそうだったんじゃないだろうか。
嫌な記憶が呼び起こされ失った片腕の傷口がズキリと痛む。

「あとは〝絶魔の巨狼フェンリル〟。〝破滅の獅子〟にも負けずとも劣らないくらい戦闘狂だね。なんか人族が戦争してる時にアイツがよく乱入してきて両軍共崩壊したとか噂で聞いたよ」

 あー、なんかわかる気がする。
アイツはそういう奴だよ。
三度の飯より戦いが好きな奴だからな。

「〝三ツ頭の番犬ケルベロス〟は人族じゃ有名でしょ。人族のナントカ帝国ってのがケルベロスの縄張りを支配した挙句、飼い慣らして番犬代わりにしてるって聞いたけど」

「いや、初耳」

「アンタなーんにも知らないのねー」

 いちいち腹立つ言い方するなぁ、コイツ。

「あとは〝波呼びの大蛇リヴァイアサン〟。アイツのせいで海が荒れ過ぎて水の大精霊ウィンデーネ様がブチギレてるって聞いた事あるよ」

 そしてリリーは一息つき、後ろを指差す。

「最後に〝憤怒の暴君〟こと〝憤狂の大熊イーラ〟。普段寝てる時は可愛いの姿なのに、起きた途端にあの有様だからねー。寝起き最悪なヤツだよね」

 そこまで言って八つの指を立てるリリー。

「んーと、以上が神獣と呼ばれてる八つの神獣。覚えたカナ?」

「はいはい、リリー先生覚えました。ちなみに、神獣の居場所はそれぞれ知ってるのか?」

 冗談交じりで先生呼ばわりしたのだが、リリーは得意気に話を続ける。

「〝キュウビコ〟と〝ウガルルム〟は神出鬼没だからわっかんない。〝アルミラージ〟は存在自体がよくわかんない。〝フェンリル〟は争い事が好きだから戦争してたら来るかもね。〝ケルベロス〟はさっきも言ったけどナントカ帝国の領地のどっかにいると思うよ」

 得意気に説明してる割に中身はスカスカだった。

「そのナントカ帝国を思い出してくれ」

「興味ないから忘れちゃった。でもすっごく大きな国だったハズ。リヴァイアサンは海のどっかにいると思う。で、熊さんはあっちね、後でヨロシクッ」

 後で、って言われてもあんなヤツを相手じゃ入念に準備が必要だけどな。
少なくとも今日は戻らんぞ。

「あとフェニックスってのは?」

 その質問に、リリーは初めて答えに詰まった。
足を止めて何かを考え込み、探るような目つきで俺を見てくる。

「……それは……んー、アンタには教えれないかな」

「誰になら教えれるんだよ」

 またよくわからん事を、と思ったのだが、リリーにしてはいつになく真剣な面持ちであった。

「〝救世主〟を待ってんの。アタシ達も、フェニックスも、この世界もね」

 意味深な言葉だけを残したリリーであったが、「ま、アンタには関係ないか」とはぐらかして歩き出す。

 〝救世主〟——。
その存在を意味する事が何なのか、さっぱりわからない。
ここは救世しなければならないような世界になってんのか?
その意味を尋ねる前に、リリーが声を上げる。

「あ、ホラホラ!村が見えてきたよ!」

 元気よくリリーが指差したその先に、一つの村が見えてきた。
丸太で作られた外壁に守られている大きめな村である。
三日に渡る旅路果てに、ようやく俺達は〝ラムリカ村〟に辿り着いたのであった。
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