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44話〜奴隷から村人へ

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「そのままでいい、座って聞いてくれ。 私はお前達を奴隷として扱うつもりは無い、ここでお前達全員に自由を渡すつもりだった」

村人達は不安そうな顔でバーンダーバの話を聞く。

「だが、それではお前達が死んでしまうと言われた。 無知故に自由さえ渡せば皆が幸せになると思い込んでいた、すまない。 だから、村を作ることにした。 着いてくるかどうかは自由だ、ここで自由になりたいなら止めはしない」

「ついてきてくれるなら食事は約束しよう、だが、私も村など作ったことは無い。 着いてくるなら私に協力して欲しい、村を作る手助けをして欲しいんだ」

 バーンダーバが言葉をきる、村人達は隣の人間と顔を見合わせる。

 1人の男がおずおずと手を上にあげる。

「なんだ?」

「失礼します、私はカリフです。 ご主人様、 お伺いしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんだ、カリフ」

「ご主人様がここにいる奴隷を買われたのは何かをさせるためではなかったのですか?」

「違う、惨状を見て胸が痛くなったからだ。 元々は自由にするだけのつもりだったが、それではダメだと言われたのでここにいる皆の為の村を作ることにした」

「そうですか」

「それと、私はカリフの主人では無い。 お前達も奴隷では無い。私の名前はバンだ、これからはそう呼んでくれ」

 カリフが「はい」と頷いて座る、いまいち状況を飲み込めていないような表情だ。

 他の男が手をあげる。

 バーンダーバが手で促す。

「私はコバンです、村は1から作るのですか?」

「あぁ、そうだ」

 それを聞いて男は項垂れた「それじゃあ死んじまう」とボソボソと呟く。

 他の者も不安は隠せない、皆、口々に「おしまいだ」「屋根も無いのか」と呟いている。

「よく聞けっ!」

 カルバンが急に声を張り上げた。

「お前らは戦災奴隷だ! あのままあそこにいたんじゃここにいる半分以上は死んだだろう! それを助けたのはこの男、バンだ! 冒険者であるバンが魔剣と交換でお前達の命を救ったんだ!」

「俺の見立てじゃその魔剣は白金貨100枚は下らん代物だった! それを引き替えにお前らは救われたんだ!」

 村人達が周りの者と顔を見合わせる。

「こいつは、バンはお前らをすぐに自由にしてやる、お前らを奴隷と呼ぶな、そう言った! だが、俺はそうは思わん! 受けた恩は返すべきだ! 自分が奴隷になったんなら自分を買い戻すべきだ! そうでなけりゃあお前らはずっと奴隷のままだ!」

 カルバンが腕を振りながら力強く話す。

「コイツはこう言ってる! 「力を貸してくれ」と! 命の恩人に力を貸してくれと言われて渋るようならテメェら全員死んじまえっ! そんな奴は奴隷がお似合いだ!」

「さあ! どうすんだ!?」

 カルバンの発破にざわざわと波紋のように村人達に何かが伝わっていく。

「俺は頑張るよ、飯は貰えるって言うしな」
「俺もだ、受けた恩は返す」
「私も、子供達と頑張るわ」
「良い村を作ろう」
「やろう」
「あぁ、死ぬ気でやりゃあ出来るさ」

 そんな力強い声が聞こえる。

「腹は括ったな! 死ぬ気でやれよお前ら!」

「「「「「「はいっ!!」」」」」」

 村人達は意を決した顔で返事をした。

『カルバンは口が上手いな、皆、見事にノせられておる。 かははははっ』

 フェムノが喋ると水を打ったようにシンと静まった。

 全員の目線がフェイに集まる。

 正確にはフェイの背中の剣に・・・

『あー、我は聖剣フェムノである! お前達には聖剣の加護もあるっ! 必ずや平和な良い村が出来るだろう!』

 頭に直接喋るのを忘れたフェムノが苦し紛れにそんな事を言うと「うおぉーー」っと大歓声が上がった。

 先程、治療された者達はフェムノが銀色に光るのを見ている。

 その神々しい輝きを見た者達はフェムノが喋って「聖剣フェムノである」と言ったことに納得した顔をしている者までいる。

 そんな中、1人の男がフェイを睨みつけていた。

 立ち上がり、拳を強く握って身体をワナワナと震わせている。

 アビーを助けた壮年の男だ。

 そして、フェイを指さして怒声を発した。

「貴様が勇者かっ!? なぜだっ! なぜ儂のもとへこなんだっ!」

 先程までの生気のない目ではなく、その目には怒りと憎しみが溢れていた。

「儂が誰かわかるかっ!」

 フェイが怯えたようにバーンダーバやロゼを見る、2人は訝しげな視線を返す。

「儂はな、300年、貴様が来るのを待っていた・・・ 来たる魔帝と戦う為に」

 老人の身体から凄まじい闘気が溢れだしている。

「儂の名はゲルハルト! 時の大神に頼まれ、貴様と共に戦う為に封印された男じゃ! なぜ来なかった! 返答次第では決闘も辞さぬぞ!!」

 ・・・

 ・・・・・・

 バーンダーバにフェイ、ロゼが顔を見合わせる。

 見合わせてから、憐憫の視線をゲルハルト向ける。

「どうした! 返答せよ!」

 ゲルハルトは睨む眼光にさらに力を込める。

『かぁーはっはっはっは』

 案の定、聖剣フェムノの高笑いが聞こえてきた・・・
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