人生七回目、さすがにもう疲れたので好きに生きます

木崎優

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番外編

前日談 とある少女の話3

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 お父さんに引き取られて、私は新しい家族を紹介された。
 お父さんの奥さんと、私と腹違いの兄と姉。私と仲良くしたい、とは思っていないのだろう。彼らのよそよそしい態度に、私もどうすればいいのかわからず、ただただ愛想笑いを浮かべていた。

 新しいお家はとても大きくて、一度案内してもらったくらいじゃどこに何があるのか覚えられそうにない。食事も美味しくて、お腹いっぱい食べることができた。
 お風呂も着るものも、これまでの生活とは違う。

 かつて思い描いていた豪勢な生活なのに――嬉しい、とは思えなかった。

「……つまんない」

 体が沈むくらい柔らかい寝台に、肌触りのよい寝衣で寝転がる。
 お父さんの家族も、この家で働いている人たちも、私にどう接していいのかわからないのか、皆とてもよそよそしかった。
 お客様扱い、とも少し違う。腫物にさわるような感じで、遠巻きに眺められたりもした。

「なんで私、引き取られたんだろ」

 どうしても娘が欲しかった、ようには見えない。ずっと離れて暮らしていた娘を可愛がりたいようにも見えない。
 わざわざお金を積んでまで私を引き取る理由はなんなのか――わけがわからないまま数日が過ぎたある日、私はお父さんの上司が主催する舞踏会に出席することになった。


 きらきらとした宝石があしらわれた首飾りや、つややかなドレス。これまで目にすることもなければ、触れることすらなかったそれらを身にまとい、目がちかちかしそうなほどにきらびやかな人たちを眺める。
 場違いだとしか思えない光景に、どうすればいいのかわからない。

 着慣れないドレスも装飾品も重いし、下手に動くと破いてしまいそうで怖い。
 お父さんは会場に着いて早々どこかに行ってしまった。だけど私には話ができるような相手はいない。誰かに話しかけたとしても、共通の話題があるとは思えない。

「……あの子とは話せたのになぁ」

 思い出すのは、貴族だったのに気さくで、妹が大好きな男の子。
 ほとんど妹の話ばかりだったけど、それでも盛り上がった、といえば盛り上がっていた。

 だけど、ここにいる人たちとそんな話ができるとは思えない。
 もうこうなったら、舞踏会が終わるまで突っ立っていよう。

 そう決心した私の前に、一際豪華な装いをした男性が現れた。

「え」

 思わず変な声を出してしまったのは、こんな場違いな私にいったいなんの用があるのかと思ったからだ。

「……驚かせてしまったか。見ない顔だったから、少し話をしようと思ったのだが……構わないだろうか」
「え、ええ、はい。大丈夫、です」

 とてつもなくお金がかかっていそうな装いからして、彼はとても偉い人なのかもしれない。

 ――この時の私は、重いドレスに負けないように踏ん張るのに必死だった。だからこの人が遅れて会場に入ってきたことも、挨拶していたことにもまったく気づいていなかった。
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