20 / 38
苦しくて
2
しおりを挟む
***
目を覚ますと、夜中かと思うぐらい辺りは真っ暗だった。
ベッドの中でめいいっぱい腕を伸ばし、周囲を探ってみるが、結衣どころか、結衣のぬくもりすらない。
あわててベッドを飛び降りて、リビングに入ると、開けっぱなしの窓から月明かりがさしこみ、カーテンが揺れているのが見えた。
灯りをつけてバスルームをのぞいてみるが、結衣の姿はない。
ふたたびベッドルームへ戻って、ため息をつく。
旅行バッグが、ない。しまったと思う。
どうして眠ってしまったんだろう。結衣が声を聞かせてくれたから、安心してしまった。だから、こんな簡単なことに気づかなかった。
結衣が出ていこうとしていたのは、今日にはじまったことではなかったのに。
結衣のスマホに電話をかけてみたけど、案の定、出ない。
時計を確認すると、まだ夜の8時。電話は無理でも、メールなら返事をくれるかもしれない。
何度もメールを無視されたのに、しょうこりもなくメールした。
どこにいる?
焦りながら、文字を打った。
結衣が俺と別れたがった理由はまだ聞いていない。壊れかけた関係は元通りになると信じていた。
結衣は、川口亜紀に静香と会っていたことを聞いただろうか。俺が結衣を『彼女じゃない』と言った言葉も。
それを聞いて出ていく気になったのだったら、誤解だと話したい。こんな誤解を抱えたまま別れるなんて考えられない。
祈るように指を組み合わせた手を額にあてて、ただひたすら結衣の返信を待つ。
なんでもいい。
返事をくれ、結衣。
思いがけず、すぐにメールは届いた。結衣からだった。メールを開いた俺は、愕然とした。
今までありがとう。とても幸せでした。
別れましょう。そう言われるよりも、つらい言葉が画面の中にはあった。
お礼を言われたら、俺はなんと返せばいい?
帰ってこい。
別れるなんていうな。
話し合おう。
言葉は浮かぶけど、どれも適切ではない気がした。
結衣が俺に求めた言葉は何なのだろう。
愛してる。その言葉すら受け入れてくれなかった結衣は、何を欲したのだろう。
目を覚ますと、夜中かと思うぐらい辺りは真っ暗だった。
ベッドの中でめいいっぱい腕を伸ばし、周囲を探ってみるが、結衣どころか、結衣のぬくもりすらない。
あわててベッドを飛び降りて、リビングに入ると、開けっぱなしの窓から月明かりがさしこみ、カーテンが揺れているのが見えた。
灯りをつけてバスルームをのぞいてみるが、結衣の姿はない。
ふたたびベッドルームへ戻って、ため息をつく。
旅行バッグが、ない。しまったと思う。
どうして眠ってしまったんだろう。結衣が声を聞かせてくれたから、安心してしまった。だから、こんな簡単なことに気づかなかった。
結衣が出ていこうとしていたのは、今日にはじまったことではなかったのに。
結衣のスマホに電話をかけてみたけど、案の定、出ない。
時計を確認すると、まだ夜の8時。電話は無理でも、メールなら返事をくれるかもしれない。
何度もメールを無視されたのに、しょうこりもなくメールした。
どこにいる?
焦りながら、文字を打った。
結衣が俺と別れたがった理由はまだ聞いていない。壊れかけた関係は元通りになると信じていた。
結衣は、川口亜紀に静香と会っていたことを聞いただろうか。俺が結衣を『彼女じゃない』と言った言葉も。
それを聞いて出ていく気になったのだったら、誤解だと話したい。こんな誤解を抱えたまま別れるなんて考えられない。
祈るように指を組み合わせた手を額にあてて、ただひたすら結衣の返信を待つ。
なんでもいい。
返事をくれ、結衣。
思いがけず、すぐにメールは届いた。結衣からだった。メールを開いた俺は、愕然とした。
今までありがとう。とても幸せでした。
別れましょう。そう言われるよりも、つらい言葉が画面の中にはあった。
お礼を言われたら、俺はなんと返せばいい?
帰ってこい。
別れるなんていうな。
話し合おう。
言葉は浮かぶけど、どれも適切ではない気がした。
結衣が俺に求めた言葉は何なのだろう。
愛してる。その言葉すら受け入れてくれなかった結衣は、何を欲したのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる