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本当の想い
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芳人さんとの約束通り、木曜日に和食料理店を訪れた私は、先に来店していた彼と目を合わせると、ちょっとはにかんだ。
気まずい。そんな気持ちを隠すためだったけど、芳人さんは優しく微笑みを返してくれた。
「元気そうだね」
「あ、はい」
「杉田さんに会ったよ、きのう。正確に言うと、杉田さんが会いに来たんだけどね」
いきなり佑樹の名前を出されて動揺するけど、芳人さんは穏やかだった。
「今日、結衣ちゃんに会うっていったら、会わないで欲しいって言われたよ」
「え……」
「でも無理って断った。そしたら杉田さん、何て言ったと思う?」
芳人さんはいたずらっぽく笑う。
「結衣は俺の彼女だから、そういうつもりで扱えって。悲しませておいて何様なんだって、思わず言っちゃったよ」
また芳人さんは笑うけど、目は笑ってなかった。
「俺は結衣ちゃんが杉田さんと一緒にいて幸せなら何も言わないよ。略奪とか、そういうのいやだし」
「芳人さん……」
「何に悩んでるの? 結衣ちゃん」
真剣なまなざしで見つめてくる芳人さんは、本気で私を心配してくれてるのだろう。
「別れた理由は、杉田さんに他に好きな人がいるからなんだよね?」
「……そうです」
「そういう感じはなかったよ。何かの勘違いだったの?」
首を横に振る。間違いでも勘違いでもない。
私が何も言わないでいると、芳人さんは息をもらして笑った。
「俺も本心を言うよ。そしたら、安心して何もかも話してくれる?」
「本心……?」
「そう、本心」
その時、定食が運ばれてくる。今日はとん汁のついたしょうが焼き定食。香ばしい匂いにホッとする。
「さめないうちに食べようか」
最近は少し冷えるようになってきた。温かな食事は体も心もあたためてくれる。
「俺はさ、結衣ちゃんにはじめて会った時、杉田さんの彼女だって聞かされて、結構ショックだったよ」
そんな様子だっただろうか。あの時の芳人さんは笑顔だった気がする。ショックを受けていたなんて思えない。
「杉田さんさー、かっこいいから俺には勝ち目ないかなって思ったよ。でもさ、居酒屋で偶然会えた時は、運命的だなって感じちゃってさ。ちょっと揺さぶってやろうって思って、会社で彼女いるの内緒にしてるって話、持ち出したんだよね」
「……それはもう」
「俺が話したことで結衣ちゃんを苦しめたなら謝るよ」
私は何度も首を横に振る。芳人さんに出会う前からこの悩みはあった。彼とは関係のない話。
「ごめん。これが俺の本心。略奪するのいやだってのはうそ。結衣ちゃんがこれ以上悲しむなら、奪いたいって思ってる」
やっぱり芳人さんの目は真剣で、冗談なんかじゃないんだろうって、私は困惑する。
「次は結衣ちゃんの番だよ。今日は全部話してくれないと帰さないよ」
「帰さないって……」
「俺はあいにく、お人好しじゃない。杉田さんみたいな余裕はないよ」
「……」
「自分の彼女と、その彼女に好意を持つ男が二人きりで会うっていうなら、俺は心配だから絶対一緒に行く」
それを聞いて、私はあまり傷つかない自分に驚いていた。
佑樹にとって二番目の彼女であるということを受け入れている証拠かもしれない。
「佑樹は私のこと好きじゃないから、そこまで心配はしないと思います」
芳人さんは眉をひそめる。今の私の言動は、きっと矛盾だらけだ。
「そういう風には……」
「見えませんよね?」
苦笑いして、私はそれを話す。
「身代わりなんです、私」
「身代わり? なんの?」
「元カノの」
静香さんは私にとって大切な人で、悪く言うのはとても苦しい。だけど、私の大切な人を奪っていく事実に、ずっと苦しめられている。
「私と元カノ、似てるんです」
考えたくないから極力言いたくない。口に出していうことは、そんなに簡単なことじゃない。でも、いま言わなければ私は一生、この事実に苦しめられるんじゃないかと不安で、仕方なく告白した。
「声が似てるんです」
「声?」
「佑樹、その声を手放したくないだけなんです」
「ほんと?」
「本当です。きっと、雅也さんもご存じです」
「雅也が?」
ますますいぶかしげに眉をひそめる芳人さんは、まだ半信半疑の様子だった。
「証拠……あります」
スマホを取り出して、七緒静華の動画を芳人さんに見せた。耳をすまして、彼は何回か繰り返し見ていた。そして、ゆっくりうなずいた。
「確かに、似てるね」
「雅也さんは私の声を聞いて、佑樹に紹介しようって決めたんだと思います」
「雅也の紹介で杉田さんと知り合ったの?」
「はい。その動画の女性は佑樹の元カノで、雅也さんとも知り合いだと思います」
芳人さんはスマホに視線を落として、ハァと大きくため息をついた。
「雅也も残酷なことするんだな。結衣ちゃんがその事実に気づかないなんて、ほんとに思ってたのかな」
うなずいた私は、スマホを受け取った。
「偶然がいろいろ重なって、知っただけですから」
私が佑樹の本棚の引き出しを開けなければ、元カノの写真には気づかなかった。私が七緒静華のファンでなければ、この動画の存在にも気づかなかったはずだ。
「佑樹は元カノを忘れられないから、私を手放したくないだけなんです。そうじゃなきゃ、私の知らない間に元カノを部屋にあげたりしないだろうし、元カノが別れてほしいなんて言いに来ないと思います」
芳人さんはしばらく無言だった。これを聞いて、何を思うだろう。
「結衣ちゃんはそれでいいの?」
心配そうに私を見つめる芳人さんの瞳に、嘘はないように見えた。
「本気で心配してる。それが事実なら、別れた方がいいよ。俺じゃなかったとしても、結衣ちゃんは新しい人を見つけるべきだよ」
それをしたいと何度もあがいてきた。
苦しんで苦しんで、あがいてあがいて。それでも佑樹がいいと、私は結論を出したのだ。
「もう少しのことだから」
「もう少し?」
「はい。彼女、静香さんっていうんですけど、静香さん、いま海外に行ってて、もうすぐ佑樹のもとに帰ってくるんです」
「どういうこと?」
「静香さんが帰ってきたら、もう私はいらないから……」
視線を下げると、芳人さんの手にはこぶしが握られていた。
「じゃあっ」
彼は声を荒らげる。
「じゃあ、結衣ちゃんは遊びってこと? 別れた結衣ちゃんを連れ戻すぐらい好きなのに、本命が来たらまた別れるって?」
「芳人さん、落ち着いてください」
芳人さんは必死に怒りにたえていた。私のために怒ってくれる人がいる。それだけで救われる気がした。
「杉田さんに連絡しなよ。俺が話してやるから。結衣ちゃんが言えないなら、俺が別れろって言ってやるから」
私のスマホに手を伸ばす芳人さんの手をとっさに握る。
「いいんです。私、佑樹の側にいたいから」
「結衣ちゃん……」
「佑樹と寄りを戻してから、私ちょっと幸せなんです」
ばかみたいに笑顔を浮かべる私を、眉をさげて見つめる芳人さんは首を横に振る。
「間違ってるよ、結衣ちゃん」
芳人さんは諭すけど、私は無理やり口角を持ち上げて、精一杯の笑顔を作る。
「いつか佑樹が私を手放してくれるまで待ちます。きっとそれは遠くないから」
七緒静華は来月、日本に帰って来る。そうしたら私はもう不必要になる。それまでの間だけでも、幸せでいたい。
「そんな幸せそうな顔見せられたら、何も言えなくなるよ」
「ありがとう、芳人さん。話聞いてもらえて、感謝してます」
私たちは、ふたたび黙って食事を続けた。
こうして芳人さんと食事をするのも、最後だろう。佑樹を悲しませたくないから、私は佑樹以外を見つめることはできない。
食事をすませた私たちは、次の約束はしないで、店の前で別れた。
そのまま私は佑樹のアパートへ向かった。途中、佑樹に今から行くとメールをした。
アパートにつくと、佑樹がドアの前で私が来るのを待っていてくれた。私が微笑むと、佑樹も安堵したようだった。元通りになったみたいだった。
佑樹と別れるのと、静香さんの身代わりでいることのつらさの差は少ない。だったら、佑樹と一緒にいられる時間を選択したい。
「今日はごめんね。芳人さんと食事してたの」
玄関に入ると、佑樹の背中に向かって謝った。
「うん……、かまわないよ」
「もう会わないからね」
そう言うと、佑樹は振り返って私の手を握った。
「今日は泊まってく?」
「……うん」
佑樹の目的はそれだけだから、いきなりそう言われるとつらいけど、私はうなずくしかできない。
「着替え、また持ってきていいよ」
全部荷物は持ち出してしまった。ここに私の着替えはない。
「今日は俺のシャツ使って」
佑樹は干してあるTシャツをハンガーから外すと、差し出してきた。それを受け取ると、彼は笑顔を見せた。
「週末さ、出掛けようか」
「あ、うん」
「ドライブなんて久しぶりだろ」
「……うん」
「どこ行きたい?」
佑樹とドライブに出掛けたのはいつぶりだろう。どこに行ったかもあまりよく覚えてないぐらい前のこと。
「きっと知らないうちに結衣をさみしがらせてたんだよな、俺」
「佑樹」
「言葉だけじゃダメだったんだ。気づかなくて、ごめん」
佑樹は頭をさげるかわりに、優しいキスをしてきた。こんな時は、佑樹にとっての私は、一番大切な存在なんだろうって思える。たとえ騙されていてもいい。
私は佑樹の首に腕を回す。
「愛してる」
静香さんの声で、愛してあげる。佑樹が好きだから。私がどれだけ愛をささやいても、佑樹に届く声は静香さんの声だけど。それでもいい。私が佑樹のこと愛してるって気持ちだけ、知ってもらえたらそれでいい。
芳人さんとの約束通り、木曜日に和食料理店を訪れた私は、先に来店していた彼と目を合わせると、ちょっとはにかんだ。
気まずい。そんな気持ちを隠すためだったけど、芳人さんは優しく微笑みを返してくれた。
「元気そうだね」
「あ、はい」
「杉田さんに会ったよ、きのう。正確に言うと、杉田さんが会いに来たんだけどね」
いきなり佑樹の名前を出されて動揺するけど、芳人さんは穏やかだった。
「今日、結衣ちゃんに会うっていったら、会わないで欲しいって言われたよ」
「え……」
「でも無理って断った。そしたら杉田さん、何て言ったと思う?」
芳人さんはいたずらっぽく笑う。
「結衣は俺の彼女だから、そういうつもりで扱えって。悲しませておいて何様なんだって、思わず言っちゃったよ」
また芳人さんは笑うけど、目は笑ってなかった。
「俺は結衣ちゃんが杉田さんと一緒にいて幸せなら何も言わないよ。略奪とか、そういうのいやだし」
「芳人さん……」
「何に悩んでるの? 結衣ちゃん」
真剣なまなざしで見つめてくる芳人さんは、本気で私を心配してくれてるのだろう。
「別れた理由は、杉田さんに他に好きな人がいるからなんだよね?」
「……そうです」
「そういう感じはなかったよ。何かの勘違いだったの?」
首を横に振る。間違いでも勘違いでもない。
私が何も言わないでいると、芳人さんは息をもらして笑った。
「俺も本心を言うよ。そしたら、安心して何もかも話してくれる?」
「本心……?」
「そう、本心」
その時、定食が運ばれてくる。今日はとん汁のついたしょうが焼き定食。香ばしい匂いにホッとする。
「さめないうちに食べようか」
最近は少し冷えるようになってきた。温かな食事は体も心もあたためてくれる。
「俺はさ、結衣ちゃんにはじめて会った時、杉田さんの彼女だって聞かされて、結構ショックだったよ」
そんな様子だっただろうか。あの時の芳人さんは笑顔だった気がする。ショックを受けていたなんて思えない。
「杉田さんさー、かっこいいから俺には勝ち目ないかなって思ったよ。でもさ、居酒屋で偶然会えた時は、運命的だなって感じちゃってさ。ちょっと揺さぶってやろうって思って、会社で彼女いるの内緒にしてるって話、持ち出したんだよね」
「……それはもう」
「俺が話したことで結衣ちゃんを苦しめたなら謝るよ」
私は何度も首を横に振る。芳人さんに出会う前からこの悩みはあった。彼とは関係のない話。
「ごめん。これが俺の本心。略奪するのいやだってのはうそ。結衣ちゃんがこれ以上悲しむなら、奪いたいって思ってる」
やっぱり芳人さんの目は真剣で、冗談なんかじゃないんだろうって、私は困惑する。
「次は結衣ちゃんの番だよ。今日は全部話してくれないと帰さないよ」
「帰さないって……」
「俺はあいにく、お人好しじゃない。杉田さんみたいな余裕はないよ」
「……」
「自分の彼女と、その彼女に好意を持つ男が二人きりで会うっていうなら、俺は心配だから絶対一緒に行く」
それを聞いて、私はあまり傷つかない自分に驚いていた。
佑樹にとって二番目の彼女であるということを受け入れている証拠かもしれない。
「佑樹は私のこと好きじゃないから、そこまで心配はしないと思います」
芳人さんは眉をひそめる。今の私の言動は、きっと矛盾だらけだ。
「そういう風には……」
「見えませんよね?」
苦笑いして、私はそれを話す。
「身代わりなんです、私」
「身代わり? なんの?」
「元カノの」
静香さんは私にとって大切な人で、悪く言うのはとても苦しい。だけど、私の大切な人を奪っていく事実に、ずっと苦しめられている。
「私と元カノ、似てるんです」
考えたくないから極力言いたくない。口に出していうことは、そんなに簡単なことじゃない。でも、いま言わなければ私は一生、この事実に苦しめられるんじゃないかと不安で、仕方なく告白した。
「声が似てるんです」
「声?」
「佑樹、その声を手放したくないだけなんです」
「ほんと?」
「本当です。きっと、雅也さんもご存じです」
「雅也が?」
ますますいぶかしげに眉をひそめる芳人さんは、まだ半信半疑の様子だった。
「証拠……あります」
スマホを取り出して、七緒静華の動画を芳人さんに見せた。耳をすまして、彼は何回か繰り返し見ていた。そして、ゆっくりうなずいた。
「確かに、似てるね」
「雅也さんは私の声を聞いて、佑樹に紹介しようって決めたんだと思います」
「雅也の紹介で杉田さんと知り合ったの?」
「はい。その動画の女性は佑樹の元カノで、雅也さんとも知り合いだと思います」
芳人さんはスマホに視線を落として、ハァと大きくため息をついた。
「雅也も残酷なことするんだな。結衣ちゃんがその事実に気づかないなんて、ほんとに思ってたのかな」
うなずいた私は、スマホを受け取った。
「偶然がいろいろ重なって、知っただけですから」
私が佑樹の本棚の引き出しを開けなければ、元カノの写真には気づかなかった。私が七緒静華のファンでなければ、この動画の存在にも気づかなかったはずだ。
「佑樹は元カノを忘れられないから、私を手放したくないだけなんです。そうじゃなきゃ、私の知らない間に元カノを部屋にあげたりしないだろうし、元カノが別れてほしいなんて言いに来ないと思います」
芳人さんはしばらく無言だった。これを聞いて、何を思うだろう。
「結衣ちゃんはそれでいいの?」
心配そうに私を見つめる芳人さんの瞳に、嘘はないように見えた。
「本気で心配してる。それが事実なら、別れた方がいいよ。俺じゃなかったとしても、結衣ちゃんは新しい人を見つけるべきだよ」
それをしたいと何度もあがいてきた。
苦しんで苦しんで、あがいてあがいて。それでも佑樹がいいと、私は結論を出したのだ。
「もう少しのことだから」
「もう少し?」
「はい。彼女、静香さんっていうんですけど、静香さん、いま海外に行ってて、もうすぐ佑樹のもとに帰ってくるんです」
「どういうこと?」
「静香さんが帰ってきたら、もう私はいらないから……」
視線を下げると、芳人さんの手にはこぶしが握られていた。
「じゃあっ」
彼は声を荒らげる。
「じゃあ、結衣ちゃんは遊びってこと? 別れた結衣ちゃんを連れ戻すぐらい好きなのに、本命が来たらまた別れるって?」
「芳人さん、落ち着いてください」
芳人さんは必死に怒りにたえていた。私のために怒ってくれる人がいる。それだけで救われる気がした。
「杉田さんに連絡しなよ。俺が話してやるから。結衣ちゃんが言えないなら、俺が別れろって言ってやるから」
私のスマホに手を伸ばす芳人さんの手をとっさに握る。
「いいんです。私、佑樹の側にいたいから」
「結衣ちゃん……」
「佑樹と寄りを戻してから、私ちょっと幸せなんです」
ばかみたいに笑顔を浮かべる私を、眉をさげて見つめる芳人さんは首を横に振る。
「間違ってるよ、結衣ちゃん」
芳人さんは諭すけど、私は無理やり口角を持ち上げて、精一杯の笑顔を作る。
「いつか佑樹が私を手放してくれるまで待ちます。きっとそれは遠くないから」
七緒静華は来月、日本に帰って来る。そうしたら私はもう不必要になる。それまでの間だけでも、幸せでいたい。
「そんな幸せそうな顔見せられたら、何も言えなくなるよ」
「ありがとう、芳人さん。話聞いてもらえて、感謝してます」
私たちは、ふたたび黙って食事を続けた。
こうして芳人さんと食事をするのも、最後だろう。佑樹を悲しませたくないから、私は佑樹以外を見つめることはできない。
食事をすませた私たちは、次の約束はしないで、店の前で別れた。
そのまま私は佑樹のアパートへ向かった。途中、佑樹に今から行くとメールをした。
アパートにつくと、佑樹がドアの前で私が来るのを待っていてくれた。私が微笑むと、佑樹も安堵したようだった。元通りになったみたいだった。
佑樹と別れるのと、静香さんの身代わりでいることのつらさの差は少ない。だったら、佑樹と一緒にいられる時間を選択したい。
「今日はごめんね。芳人さんと食事してたの」
玄関に入ると、佑樹の背中に向かって謝った。
「うん……、かまわないよ」
「もう会わないからね」
そう言うと、佑樹は振り返って私の手を握った。
「今日は泊まってく?」
「……うん」
佑樹の目的はそれだけだから、いきなりそう言われるとつらいけど、私はうなずくしかできない。
「着替え、また持ってきていいよ」
全部荷物は持ち出してしまった。ここに私の着替えはない。
「今日は俺のシャツ使って」
佑樹は干してあるTシャツをハンガーから外すと、差し出してきた。それを受け取ると、彼は笑顔を見せた。
「週末さ、出掛けようか」
「あ、うん」
「ドライブなんて久しぶりだろ」
「……うん」
「どこ行きたい?」
佑樹とドライブに出掛けたのはいつぶりだろう。どこに行ったかもあまりよく覚えてないぐらい前のこと。
「きっと知らないうちに結衣をさみしがらせてたんだよな、俺」
「佑樹」
「言葉だけじゃダメだったんだ。気づかなくて、ごめん」
佑樹は頭をさげるかわりに、優しいキスをしてきた。こんな時は、佑樹にとっての私は、一番大切な存在なんだろうって思える。たとえ騙されていてもいい。
私は佑樹の首に腕を回す。
「愛してる」
静香さんの声で、愛してあげる。佑樹が好きだから。私がどれだけ愛をささやいても、佑樹に届く声は静香さんの声だけど。それでもいい。私が佑樹のこと愛してるって気持ちだけ、知ってもらえたらそれでいい。
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