仮初めの甘い誘惑

水城ひさぎ

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永遠の条件

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 ワークショップの荷物を持って裏口を出た私は、驚いて足を止めた。裏の駐車場に停まる車から降りてくる夏凪さんが見えたのだ。

 彼がこの駐車場を使うことは滅多にない。何かあったのだろうか。

「夏凪さん? お仕事は?」

 ダンボールを抱えたまま、こちらへやってくる彼に駆け寄る。

 いつもずいぶん遅くまで書斎で仕事をしているようだけど、まったく疲れを感じさせない笑顔を見せる彼にホッとする。具合が悪いわけではないようだ。

「客のところへ行った帰りだよ。今日はワークショップだったなと思って、寄ったんだ」
「ワークショップに参加してくれるの?」
「いや、悪いがその時間はない。佐那子の送り迎えがしたくてね」
「そのために来てくれたの?」

 そんなことのために? とちょっと驚くが、彼は当然だよといった表情でうなずくと、両腕を伸ばしてダンボールをつかむ。

「持つよ」
「あ、ありがとう」
「軽いな。今日は何?」
「ねんど遊びするの。いろんなものが作れるから、楽しいと思う」

 今日は、小学5年生の健吾くんと麻衣ちゃんは遠足で、ワークショップは欠席。小学1年生の実花ちゃんだけの参加になるから、前から彼女がやりたいと言っていた紙ねんど細工をするつもりだ。

「そうか。絵だけじゃないんだな」
「子どもたちがやりたいって言えば、なんでも」

 絵や工作以外にも、美術に関することならなんでもやってあげたいと思ってる。子どもたちの笑顔を見守るのが、私の楽しみであり、使命にも感じている。

「本当に、施設の仕事が本業みたいに楽しそうに話すんだな」
「画家の仕事は施設を守るための手段ですから」
「なるほど。どうしたら、佐那子が画家の仕事に集中してくれるかと考えていたが、余計なことだったな。時間はいつも通り? ワークショップが終わる頃に迎えに行くよ」

 彼は苦笑いを見せたが、すぐに気を取り直した。施設に関わる私のがんこさにあきれているようだけど、理解もしてくれたみたい。

「お仕事が途中なら、わざわざいいのに」
「少しでも佐那子と一緒にいたいんだよ」

 夏凪さんはそう言うと、さりげなく顔を近づけてくる。

「あ……」
「今日はまだしてない」

 ダンボールを持つ彼は、下からのぞき込むようにして唇を合わせてきた。

 青空の下、昼間から庭でキスするなんて、恥ずかしい。赤らむ私を彼は抱きしめたそうにしたが、手をふさがれているからそれもかなわなくて残念そうにする。

「今夜ははやく帰るよ」
「はい。お夕食作っておきますね」
「ああ、楽しみにしてる」

 彼はふっと目を細めてそう言うと、私を施設まで送ってくれた。
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