22 / 29
永遠の条件
4
しおりを挟む
***
ワークショップの荷物を持って裏口を出た私は、驚いて足を止めた。裏の駐車場に停まる車から降りてくる夏凪さんが見えたのだ。
彼がこの駐車場を使うことは滅多にない。何かあったのだろうか。
「夏凪さん? お仕事は?」
ダンボールを抱えたまま、こちらへやってくる彼に駆け寄る。
いつもずいぶん遅くまで書斎で仕事をしているようだけど、まったく疲れを感じさせない笑顔を見せる彼にホッとする。具合が悪いわけではないようだ。
「客のところへ行った帰りだよ。今日はワークショップだったなと思って、寄ったんだ」
「ワークショップに参加してくれるの?」
「いや、悪いがその時間はない。佐那子の送り迎えがしたくてね」
「そのために来てくれたの?」
そんなことのために? とちょっと驚くが、彼は当然だよといった表情でうなずくと、両腕を伸ばしてダンボールをつかむ。
「持つよ」
「あ、ありがとう」
「軽いな。今日は何?」
「ねんど遊びするの。いろんなものが作れるから、楽しいと思う」
今日は、小学5年生の健吾くんと麻衣ちゃんは遠足で、ワークショップは欠席。小学1年生の実花ちゃんだけの参加になるから、前から彼女がやりたいと言っていた紙ねんど細工をするつもりだ。
「そうか。絵だけじゃないんだな」
「子どもたちがやりたいって言えば、なんでも」
絵や工作以外にも、美術に関することならなんでもやってあげたいと思ってる。子どもたちの笑顔を見守るのが、私の楽しみであり、使命にも感じている。
「本当に、施設の仕事が本業みたいに楽しそうに話すんだな」
「画家の仕事は施設を守るための手段ですから」
「なるほど。どうしたら、佐那子が画家の仕事に集中してくれるかと考えていたが、余計なことだったな。時間はいつも通り? ワークショップが終わる頃に迎えに行くよ」
彼は苦笑いを見せたが、すぐに気を取り直した。施設に関わる私のがんこさにあきれているようだけど、理解もしてくれたみたい。
「お仕事が途中なら、わざわざいいのに」
「少しでも佐那子と一緒にいたいんだよ」
夏凪さんはそう言うと、さりげなく顔を近づけてくる。
「あ……」
「今日はまだしてない」
ダンボールを持つ彼は、下からのぞき込むようにして唇を合わせてきた。
青空の下、昼間から庭でキスするなんて、恥ずかしい。赤らむ私を彼は抱きしめたそうにしたが、手をふさがれているからそれもかなわなくて残念そうにする。
「今夜ははやく帰るよ」
「はい。お夕食作っておきますね」
「ああ、楽しみにしてる」
彼はふっと目を細めてそう言うと、私を施設まで送ってくれた。
ワークショップの荷物を持って裏口を出た私は、驚いて足を止めた。裏の駐車場に停まる車から降りてくる夏凪さんが見えたのだ。
彼がこの駐車場を使うことは滅多にない。何かあったのだろうか。
「夏凪さん? お仕事は?」
ダンボールを抱えたまま、こちらへやってくる彼に駆け寄る。
いつもずいぶん遅くまで書斎で仕事をしているようだけど、まったく疲れを感じさせない笑顔を見せる彼にホッとする。具合が悪いわけではないようだ。
「客のところへ行った帰りだよ。今日はワークショップだったなと思って、寄ったんだ」
「ワークショップに参加してくれるの?」
「いや、悪いがその時間はない。佐那子の送り迎えがしたくてね」
「そのために来てくれたの?」
そんなことのために? とちょっと驚くが、彼は当然だよといった表情でうなずくと、両腕を伸ばしてダンボールをつかむ。
「持つよ」
「あ、ありがとう」
「軽いな。今日は何?」
「ねんど遊びするの。いろんなものが作れるから、楽しいと思う」
今日は、小学5年生の健吾くんと麻衣ちゃんは遠足で、ワークショップは欠席。小学1年生の実花ちゃんだけの参加になるから、前から彼女がやりたいと言っていた紙ねんど細工をするつもりだ。
「そうか。絵だけじゃないんだな」
「子どもたちがやりたいって言えば、なんでも」
絵や工作以外にも、美術に関することならなんでもやってあげたいと思ってる。子どもたちの笑顔を見守るのが、私の楽しみであり、使命にも感じている。
「本当に、施設の仕事が本業みたいに楽しそうに話すんだな」
「画家の仕事は施設を守るための手段ですから」
「なるほど。どうしたら、佐那子が画家の仕事に集中してくれるかと考えていたが、余計なことだったな。時間はいつも通り? ワークショップが終わる頃に迎えに行くよ」
彼は苦笑いを見せたが、すぐに気を取り直した。施設に関わる私のがんこさにあきれているようだけど、理解もしてくれたみたい。
「お仕事が途中なら、わざわざいいのに」
「少しでも佐那子と一緒にいたいんだよ」
夏凪さんはそう言うと、さりげなく顔を近づけてくる。
「あ……」
「今日はまだしてない」
ダンボールを持つ彼は、下からのぞき込むようにして唇を合わせてきた。
青空の下、昼間から庭でキスするなんて、恥ずかしい。赤らむ私を彼は抱きしめたそうにしたが、手をふさがれているからそれもかなわなくて残念そうにする。
「今夜ははやく帰るよ」
「はい。お夕食作っておきますね」
「ああ、楽しみにしてる」
彼はふっと目を細めてそう言うと、私を施設まで送ってくれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる