嘘つきフェイク

水城ひさぎ

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私を幸せにしてくれる人

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***


 シーツに包まり、何度目を閉じても眠気に襲われない。むしろ時間が経つにつれて目は冴えていくようだ。

 いつもは気にならない目覚まし時計の秒針が規則的に動く音すら耳障りで、いっそのこと止めてしまおうかと考えながら、目を閉じる。

 はやく眠ってしまいたい。今日のことは、何も見なかったことにしてしまいたい。
 しかしその決意も、突如音を立てたスマホに阻まれ、睡魔に嫌われた私を決定的なものにした。

「もしもし……」

 ためらいがちに電話に出る。怜司さんからの電話とわかっていて、出たくないと思いながら出る気持ちが私を萎縮させる。

「まだ起きてたか?」

 聞きたかったけど、聞きたくなかった彼の声が私を揺さぶる。

 こんな遅い時間に彼が電話をかけてきたことはない。逆を言えば、この時間にしか電話をかけてこれない状況が、今日の彼にあったのだ。

 泣きたくなる気持ちをこらえて、言葉を吐き出す。

「こんな時間にどうしたの?」
「いや、和美からの電話が気になってた」
「私からの、電話?」

 あっ、と声を上げる。すっかり忘れていた。

「ごめんなさい。髪留めを忘れてしまって。取りに行ってもいいかなって聞こうと思ってたの」

 慌てる様子の私に、怜司さんはそっと息を吐き出して笑う。いつもの彼だ。

「やっぱりそうか。今日は遅いから、明日取りに来るか?」

 しかし、私はいつもの私ではなくて。

「捨ててもらっても、かまいません」

 そう言った途端、ピリッとした空気が電話を通じて流れてくる。

「どういう意味?」

 胸が苦しくなる。怜司さんに会いたくない、なんて心にもないことは言えない。

「もう俺に会いたくない?」
「そういうことじゃなくて」
「捨てろと言われても困るよ」
「そう、ですよね。明日、明日取りに行きますから」
「ああ、待ってる。じゃあ、おやすみ」
「はい。おやすみなさい」

 そう言っても、電話は切れない。
 私が先に切るのを彼は待っているようだ。いつもなんとなく同じタイミングで同時に切るのに。

「和美?」

 私を心配する彼の声が切ない。
 彼だって気にしてるのだ。今日私が見たことをどう思っているのか、気にならないはずはない。

「私、誰にも言いませんから……」

 あの男の子の存在を、彼が隠したいのかもわからない。だけど彼から言い出さない以上、私には触れて欲しくないことだったはず。

「おやすみなさい」

 一方的にそう言って、今度はすぐに電話を切った。
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