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言ってはいけない言葉
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「こちらは大学時代のサークル仲間で、小坂晃弘くん。彼はさっき話してた友人の山野勇介よ」
「小坂です、はじめまして」
パンケーキを前にちょっと頭をさげる小坂くんに対して、勇介は快活な笑顔で「よろしくな」と言う。初対面の相手にするとは思えない態度で、小坂くんの背中を軽く叩いた勇介は、私の隣に座った。
「さっき話してたって、なんのことだよ?」
早速かみつくように尋ねてくる。
二人で会うのはなんとなく気が進まなかったけど、小坂くんがいてくれて良かったと内心思いながら応える。
「両親のこと話してたのよ。勇介が相談に乗ってくれたって話」
「へえ、あの美談? そういや、ご両親はその後どう?」
「元気にしてるわ。たまに会ってデートもしてるみたい」
「仲良いんだなー。俺も見習わないとな」
「勇介は彼女いないの?」
「まだ傷心だぜ? 和美も危なっかしい恋愛に首突っ込んでるみたいだしよ、それどころじゃないな」
「なによ、危なっかしいって。そんなんじゃないから」
「本当かよー」
あきれ顔の勇介が首をすくめた時、私たちのやりとりを黙って聞いていた小坂くんが口を開く。
「朝霧さん、俺がこんなこと言うのおかしいけどさ、石神さんは大丈夫じゃないかな」
「え、大丈夫?」
「うん、お客さんのことは話せないなんて言っておいてなんだけどさ、石神さんは結婚してないし、結婚指輪はめてる理由は、好きな人がいるからとかそういうことじゃないと思うよ」
「は? なんだ、それ」
私より先に勇介が反応する。
すぐに私は、怜司さんが小坂くんの働いてるバーの常連客で、そこで彼に出会ったことをかいつまんで説明した。
私と怜司さんと小坂くんの関係はすぐに勇介も納得したが、やっぱり彼の発言をすんなりは受け入れられないようだった。
「だってあの人さ、結婚してるって俺には言ったぜ?」
勇介の言葉には私も驚く。いったいいつ、勇介はそんな話を怜司さんとしたのだろう。
「俺もよくは知らないけど、結婚指輪は形見だって聞いたことがある。だからもし指輪のことで朝霧さんが心配してるなら、それは大丈夫じゃないかなって思うんだけど。あ、でもマズイな、こんな話。やっぱり聞かなかったことにしておいてよ。マスターにばれたらクビだよ、俺」
小坂くんは後悔するみたいに額に手を当てる。
「それ、本当?」
「あ、まあ、うん。ここだけの話にしておいてよ、朝霧さん」
「ええ。それを知ったところで、彼には聞けないもの」
小坂くんはそう言ってくれるけど、怜司さんにみのりさんや春翔くんという私より大切な人がいるのは間違いない。
私たちが付き合っているのは、真剣にという話ではない。最初から恋人になりたいなんて思って付き合っているわけじゃない。
だから私が彼の恋人として持つ悩み自体が、彼にとっては負担でしかない。
「和美、ややこしいやつとは別れちまえばいいんだよ」
「そんな簡単に言わないでよ」
勇介の言うように出来たらどんなに楽だろう。だけどなかなか切り出せない。怜司さんを本気で好きだなんて、どんな顔して言えるだろう。
「朝霧さん……あのさ」
「なに?」
「あのさ、石神さんは優しくていい人だよ。優しすぎるんじゃないかな……。俺はそう思う」
「……小坂くん」
大丈夫だよと、小坂くんは優しく微笑む。そんな彼を見て励まされる私の肩に手を置いた勇介は、にやっと笑って彼に言う。
「おまえ、いいやつだな。そんないいやつぶってると欲しい女は奪えないぜ」
「あ、それは……わかってる」
勇介に心を見透かされたとばかりにほんのり赤くなった小坂くんは、話をそらそうとパンケーキに視線を落とす。
「今度、朝霧さんのためにデザート用意して待ってるから、また店に来てよ」
それが、今の小坂くんの精一杯の言葉のようだった。
「こちらは大学時代のサークル仲間で、小坂晃弘くん。彼はさっき話してた友人の山野勇介よ」
「小坂です、はじめまして」
パンケーキを前にちょっと頭をさげる小坂くんに対して、勇介は快活な笑顔で「よろしくな」と言う。初対面の相手にするとは思えない態度で、小坂くんの背中を軽く叩いた勇介は、私の隣に座った。
「さっき話してたって、なんのことだよ?」
早速かみつくように尋ねてくる。
二人で会うのはなんとなく気が進まなかったけど、小坂くんがいてくれて良かったと内心思いながら応える。
「両親のこと話してたのよ。勇介が相談に乗ってくれたって話」
「へえ、あの美談? そういや、ご両親はその後どう?」
「元気にしてるわ。たまに会ってデートもしてるみたい」
「仲良いんだなー。俺も見習わないとな」
「勇介は彼女いないの?」
「まだ傷心だぜ? 和美も危なっかしい恋愛に首突っ込んでるみたいだしよ、それどころじゃないな」
「なによ、危なっかしいって。そんなんじゃないから」
「本当かよー」
あきれ顔の勇介が首をすくめた時、私たちのやりとりを黙って聞いていた小坂くんが口を開く。
「朝霧さん、俺がこんなこと言うのおかしいけどさ、石神さんは大丈夫じゃないかな」
「え、大丈夫?」
「うん、お客さんのことは話せないなんて言っておいてなんだけどさ、石神さんは結婚してないし、結婚指輪はめてる理由は、好きな人がいるからとかそういうことじゃないと思うよ」
「は? なんだ、それ」
私より先に勇介が反応する。
すぐに私は、怜司さんが小坂くんの働いてるバーの常連客で、そこで彼に出会ったことをかいつまんで説明した。
私と怜司さんと小坂くんの関係はすぐに勇介も納得したが、やっぱり彼の発言をすんなりは受け入れられないようだった。
「だってあの人さ、結婚してるって俺には言ったぜ?」
勇介の言葉には私も驚く。いったいいつ、勇介はそんな話を怜司さんとしたのだろう。
「俺もよくは知らないけど、結婚指輪は形見だって聞いたことがある。だからもし指輪のことで朝霧さんが心配してるなら、それは大丈夫じゃないかなって思うんだけど。あ、でもマズイな、こんな話。やっぱり聞かなかったことにしておいてよ。マスターにばれたらクビだよ、俺」
小坂くんは後悔するみたいに額に手を当てる。
「それ、本当?」
「あ、まあ、うん。ここだけの話にしておいてよ、朝霧さん」
「ええ。それを知ったところで、彼には聞けないもの」
小坂くんはそう言ってくれるけど、怜司さんにみのりさんや春翔くんという私より大切な人がいるのは間違いない。
私たちが付き合っているのは、真剣にという話ではない。最初から恋人になりたいなんて思って付き合っているわけじゃない。
だから私が彼の恋人として持つ悩み自体が、彼にとっては負担でしかない。
「和美、ややこしいやつとは別れちまえばいいんだよ」
「そんな簡単に言わないでよ」
勇介の言うように出来たらどんなに楽だろう。だけどなかなか切り出せない。怜司さんを本気で好きだなんて、どんな顔して言えるだろう。
「朝霧さん……あのさ」
「なに?」
「あのさ、石神さんは優しくていい人だよ。優しすぎるんじゃないかな……。俺はそう思う」
「……小坂くん」
大丈夫だよと、小坂くんは優しく微笑む。そんな彼を見て励まされる私の肩に手を置いた勇介は、にやっと笑って彼に言う。
「おまえ、いいやつだな。そんないいやつぶってると欲しい女は奪えないぜ」
「あ、それは……わかってる」
勇介に心を見透かされたとばかりにほんのり赤くなった小坂くんは、話をそらそうとパンケーキに視線を落とす。
「今度、朝霧さんのためにデザート用意して待ってるから、また店に来てよ」
それが、今の小坂くんの精一杯の言葉のようだった。
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