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恋が始まる
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***
バカだな……俺は。
和美の告白を拒むなんて愚か者だ、俺は。
ほろほろと涙を流す和美が哀れに見えて、泣き止むことのない彼女の背中を何度も撫でる。
「怜司さん……っ、私、もう……っ」
「和美……」
しゃくりあげて泣く和美をそっと離す。こんな風に泣く女なんだと、漠然と感じながら見つめた。
もっと強くて、あざとくて、淡白な女だと思っていただろうか、俺は。
考えたらいけないと、頭を振る。違うと認めても、彼女の気持ちには応えてやれないのだ。
ブラウスを肩にかけてやり、ベッドから降りる。
「帰るといい。これ以上何も言ってやれない」
「怜司さ……んっ」
俺の手をつかみ、もう片方の手でネックレスを握りしめる和美は、首を何度も横に振る。
何も聞かなかったことにしてほしい。そう言うのだろうか。しかし無理だ。
「もう会うことはないよ」
会ったらいけない。和美の気持ちが本物である限り、俺は彼女を不幸にしかしない。そして、その気持ちを素直に嬉しく思う気持ちを隠せる自信はない。
和美はショックを隠せない表情で俺の手を離すと、無言で首の後ろに手を回す。ネックレスを外そうとしているのだ。
「ネックレスはもらってくれ」
かがみ込み、彼女の手を首元から離させる。彼女は濡れたまつげを何度かまばたきさせる。
「……いいの?」
わずかな希望を与えてしまったようだ。祈るような目で見つめてくる和美から、俺はすぐに目をそらす。
「置いていかれても困るだけだ」
突き放すようにあえて言う。彼女の気持ちを受け入れたら、俺たちはともに堕ちていくだけだ。そこに和美の幸せはない。
「もう帰るんだ」
返事はない。ベッドの周囲に散らばった服を無言でかき集めた彼女は、一度は俺を見上げたが、顔を背けたままの俺に失望したのか、そのままベッドルームを飛び出していった。
***
「怜司くん、どうしたの? 気難しい顔してる。仕事が忙しいのはわかるけど、大丈夫? 無理しないで」
「え、ああ、大丈夫だよ。別に忙しいってほどでもないよ」
「そう、なら良かった。怜司くんが元気ないと心配よ」
みのりさんはコーヒーの入ったマグカップを俺の前に置く。そのテーブルの奥では、春翔が電車のおもちゃで遊んでいる。
石神春翔は4歳になったばかりだ。どんなおもちゃを好むのかもわからなかったが、どうやら気に入ってくれたらしい。
「最近なかなか会えなかったから嬉しいわ」
「急に来たりして悪かったよ」
「ううん、怜司くんが私の部屋に来てくれるなんて初めてだから嬉しいの」
「初めてかな。いや、まあ初めてだな」
以前に一度だけ来たことがあるが、みのりさんは覚えてないのだろう。
「これからはここでも会えるのね」
「ああ、たまには来るよ。今夜は良かったら三人で食事しないか? 春翔の誕生日祝いをしよう」
あまり気乗りしない。そんな気持ちを隠して笑顔を見せると、罪悪感を覚えるほどの笑顔でみのりさんは喜んでくれた。
バカだな……俺は。
和美の告白を拒むなんて愚か者だ、俺は。
ほろほろと涙を流す和美が哀れに見えて、泣き止むことのない彼女の背中を何度も撫でる。
「怜司さん……っ、私、もう……っ」
「和美……」
しゃくりあげて泣く和美をそっと離す。こんな風に泣く女なんだと、漠然と感じながら見つめた。
もっと強くて、あざとくて、淡白な女だと思っていただろうか、俺は。
考えたらいけないと、頭を振る。違うと認めても、彼女の気持ちには応えてやれないのだ。
ブラウスを肩にかけてやり、ベッドから降りる。
「帰るといい。これ以上何も言ってやれない」
「怜司さ……んっ」
俺の手をつかみ、もう片方の手でネックレスを握りしめる和美は、首を何度も横に振る。
何も聞かなかったことにしてほしい。そう言うのだろうか。しかし無理だ。
「もう会うことはないよ」
会ったらいけない。和美の気持ちが本物である限り、俺は彼女を不幸にしかしない。そして、その気持ちを素直に嬉しく思う気持ちを隠せる自信はない。
和美はショックを隠せない表情で俺の手を離すと、無言で首の後ろに手を回す。ネックレスを外そうとしているのだ。
「ネックレスはもらってくれ」
かがみ込み、彼女の手を首元から離させる。彼女は濡れたまつげを何度かまばたきさせる。
「……いいの?」
わずかな希望を与えてしまったようだ。祈るような目で見つめてくる和美から、俺はすぐに目をそらす。
「置いていかれても困るだけだ」
突き放すようにあえて言う。彼女の気持ちを受け入れたら、俺たちはともに堕ちていくだけだ。そこに和美の幸せはない。
「もう帰るんだ」
返事はない。ベッドの周囲に散らばった服を無言でかき集めた彼女は、一度は俺を見上げたが、顔を背けたままの俺に失望したのか、そのままベッドルームを飛び出していった。
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「怜司くん、どうしたの? 気難しい顔してる。仕事が忙しいのはわかるけど、大丈夫? 無理しないで」
「え、ああ、大丈夫だよ。別に忙しいってほどでもないよ」
「そう、なら良かった。怜司くんが元気ないと心配よ」
みのりさんはコーヒーの入ったマグカップを俺の前に置く。そのテーブルの奥では、春翔が電車のおもちゃで遊んでいる。
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「最近なかなか会えなかったから嬉しいわ」
「急に来たりして悪かったよ」
「ううん、怜司くんが私の部屋に来てくれるなんて初めてだから嬉しいの」
「初めてかな。いや、まあ初めてだな」
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「これからはここでも会えるのね」
「ああ、たまには来るよ。今夜は良かったら三人で食事しないか? 春翔の誕生日祝いをしよう」
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