赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第2章 王都編

2-1 神の武器、とオーク

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あの村を出て南に二日歩いた所に町があった。
町で昼食と夕食を頂き宿をとった。
不思議なもので同じような料理でも作り手が違えば味も異なるものだ。

村の料理の方が美味か感じられた。

チラチラと視線を向けられるのもあまり良い気はしない。
幻視魔法で姿を変えるか?
とも思ったがオリハはやめておく事にした。

町をぶらついてから宿に戻ってそこの娘に飴玉をあげた。
少女の疑念の感情が歓喜に変わっていくのを感じる。

子供は単じ、ん、ん、純粋で良い。
明日町を出る前に多めに買っておこう。

翌朝の朝食は宿で頂いた。
パンにベーコンエッグ、鶏ガラスープとシンプルなものだった。

両の手を合わせいただきますをする。

娘が「それは何?」と聞いてきた。
食べる物と作った人に感謝をする、という所作だと教え頭を撫でた。

周りの疑念が薄くなるのを感じた。

我が周りの感情がわかる故に警戒してしまうからやもしれぬな、そう思った。

「ほう、これは優しい味だな」

一口スープを飲んで呟いてしまう。
調理場の女将が「薬草を入れてるんです」そう教えてくれた。
特に問題ないとの事でレシピを教えてもらった。

そういえば特に趣味らしい趣味もない。
どうせ旅をするのだ、控えて回るのも良いな。

町を出る前に、筆記具と飴玉を買った。
早速、最初の村で食べた時に聞いた美味いと感じたレシピと先程のスープのレシピを書いた。


ここから南に下り王都に至るのは街道を行けばよいらしい。
乗合の馬車でハルの夜泣きで迷惑をかけるのは良くないだろうと徒歩で行く事にした。
別段急ぐ旅でもない。

領境は特段何もなかった。
見回りの衛兵と出会ったがオリハが微笑を浮かべていれば警戒も薄れた。
寧ろ「魔物に気を付けてください」など心配された。

やはり飴玉と微笑だ、そう思った。


そして更に四日かけてこの町についた。
ここは王都の北側に隣接する公爵領の宿場町だ。
このまま街道を下っていけば王都に着く。

リュックの食糧も底をついたので明日は買い出しと食い歩きだな、とオリハは口角を上げる。

時間も遅かったので到着した日は宿で夕食を頂いた。
まあ味は可もなく不可もなく。
エールは安定して美味い。

ハルがおねむの時間だったので名残惜しいが部屋へと戻った。


そして朝を迎えた。

(今日はメモ帳を使える店があればよいが・・・)

そう思いながら準備を整え階下へ降りた。
宿での朝食は遠慮した。
屋台が先の通りにあると聞いたからだ。
宿屋の息子が朝から屋台と聞いて羨ましがっていたので、飴玉をあげた。

屋台のある通りへハルを抱いて歩いた。

まだ時間が時間なのか閑散としているが、いくつかの屋台は既に開いているようだ。

花屋があった。
花を愛でる気持ちはないが小さな花が咲き乱れているのを見るのは心が安らぐ。

(まだだ)

道具屋があった。
ポーションや毒消しなどなど。
己には関係ないとばかりに歩を早める。

(慌てるな)

武具屋が剣や籠手などを並べている。
ロングソードとはいわないが、もう少し長めの得物が欲しいと思っていた事も忘れて歩みをさらに早める。

「へい!ら「五本貰おうか!」

「ま、毎度」

我慢できなかった。

昨日宿屋の食堂で屋台の話を聞いたオリハ。
「何か美味いものはあるか?」と聞いた答えがオーク肉の串焼きだった。

オークの殆どはラードで出来ている。
半分どころではない。
残りも優しさでは無い。
食用になる部位は肩肉や腿肉の赤身。
人型である事、魔物である事、そういうことを除けば肉としては最上質だ。

ハイオーク、オークジェネラルと上位種になればなるほど食用部位と味は増す。
ただ最上位のオークキングは生命力も高く、討伐する頃には肉は切り刻まれ、食べれる状況ではない。
オリハの過去の記憶の中でさえ食された覚えはなかった。


屋台が出てるかはわからない。
いや、今日オーク肉の持ち込みがあったらしいぞ。
おーそれじゃ明日は屋台出てるかもな。

そして現在に至る。

「サービスだ」と付けてもらったテールスープと串焼きを紙袋で、反対側にハルを抱え町を歩く。

町の入り口で壮年の衛兵と軽く挨拶を交わす。
「天気も良いので風に当たりながら」とハルと紙袋を見せた。
壮年の衛兵は羨ましそうに串焼きを見つめ、「あまり遠くに行かないように」と気にかけてくれた。

村の入り口の前は少し小高い丘になっており、超えると村からは見えなくなっている。
丘を越え少し下ると左側が林になっていて、その手前に野原が拡がり、腰掛けやすい岩があった。

その岩に腰掛け野原にハルを降ろす。
脱走されないようにロバを二頭出し、ハルを籠絡した。
魔物に感謝はどうかと思ったが、作ってくれた人はいるので問題あるまい、と手を合わせてから一口頬張る。

噛みしめるたびに口の中に拡がる脂、肉を肉たらしめんとするしっかりとした食感、肉本来の旨味。
そして甘味。
それを己が持つ全能力で堪能するオリハの頬には一筋の涙がこぼれた。

貰ったテールスープを啜った。
程よく溶け出した脂の優しさが口に拡がる。

「・・・オーク狩ろう」

オリハが二口目を頬張ろうとした時、ハルが二頭のロバを捕まえて勝鬨をあげた。
伝え歩きをした頃から身体能力も上がり四足歩行の速度も上がっていた。

さすがは我が娘だと微笑み、新難易度の三頭にしてその様子を見ながらオーク肉を頬張るのであった。

三頭になったロバは囮を用いハルの魔の手をかいくぐる。
届きそうなロバよりも、目の前を通るロバに注意を惹かれてしまっていた。

その様子を微笑ましく眺めながら五本目の串焼きを嗜む。

(はあ・・・どうせならもう少し待てぬものか)

色々と見て回るという旅立ちだった。
だが、 オリハにはもう一つ目的があった。
少しでもハルが過ごしやすい未来のために、襲ってくる者共を排除するという目的が。

この町に来てから妙な感情の視線があった。
荷馬車の野盗のそれだった。

襲ってくる気配もないので様子見をしていた。
朝屋台に向かう時に複数の気配を感じたので釣りあげたのだ。


林から男が十人こちらに下衆な笑みを浮かべ近寄って来た。
オリハひ串焼きをヒラヒラさせながらわかりきった問いをする。

「・・・何か用か?」

返事はない。
一人の男が顎でオークのような男に指図する。
「へいっ」と返事をしノシノシと早歩きに近づきハルへ手を伸ばそうとした。
オリハにとっては緩慢とした動きだ。
伸ばした手に串焼きを投げ刺し「痛えっ!」と上半身を起こした男の顔面に上段回し蹴りをいれる。

反り返った勢いと蹴りの勢いで、後方へ飛ぶのではなく後頭部から地面に突き刺さり土下座の体を成した。

目の前で起きたコメディを前にはしゃぐハル。
オリハは逆に深い溜息をつく。

(はぁ・・・まだ二口は残っておったのに)

「て、てめえ!何しやがる!」

首を傾げ、ハルを拾い答える。

「断りもなく人の娘に手を伸ばしておいて、何もクソもあるまい」

とオークの尻を踏みつけた。
舌打ちをして「おい、殺すなよ」と剣を抜く。
オリハもやれやれと肩を竦めショートソードを引き抜いた。

九人に囲まれている。
下衆な余裕の笑みを浮かべる頭が一つ地面に落ちる。
振り返りオリハはまた駆ける。
駆け抜けるたびに一人一人と地に伏せる。

臭いの元が減っていく度にオリハは安堵の笑みを浮かべた。

「コノヤロウ!」と剣を振り下ろす男の左側を二度クルッと回り駆け抜けた。
一度目で手が、二度目で頭をが落ちた。

気がつけば最初に顎で指示を出した男とオリハだけが立っていた。

何か口を開こうとした男に、喋るなと言わんばかりに剣を投げつける。
勿論加減して。

「くっ!」

辛うじて逆袈裟で剣を弾いた。
その生じた死角の目の前にはオリハの膝があった。
男の顔面に浅黒く艶めかしい膝が突き刺さる。
その膝を地面に向けて振り切れば、二体目の土下座人形の完成だ。

飛び膝蹴りから着地しオリハは両手を伸ばす。
いつの間にか宙を舞っていたハルがポスっと着地する。

「きゃっきゃっきゃっ」

服を見渡し返り血がないことを確認する。
ショートソードを拾い浄化魔法で血糊をとり鞘に収めた。

「「・・・は?」」

その様子を林から見つめる二つの影があった。

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