赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第2章 王都編

2-7 神の武器、いい武器

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オリハは一人立っていた。
真っ暗な闇の中で。

ああ、これが夢というものか。

と、オリハは納得する。
何故か?ハルがいないからだ。

気がつけば両手に大鎌を構えている。
それを左へ右へ縦横無尽に振り翳す。
発散せしは純粋なる狂気。
その狂気は止むことのない血の雨を降らせる。

・・・これは我の身体だ。
あの時のようにはいかぬ。
今では自在に動かせるはずだ。

我を離せっ!

渾身の力を込めて抗う。
だが純粋なる狂気に芯まで染められ抗う事を禁じられる。

更に力を込めようとして・・・鼻の穴に指を突っ込まれた。

「ふごっ?!」

「はーあー」

ハルが胸の上に座っていた。

「・・・ハルが母を助けてくれたのか?」

そう言い上半身を起こす。
どうせ初めて経験する夢なら良い夢を見られればよかったのに、そう思いながらハルに感謝のキスをする。

窓から外を眺める。
少し朝日が射している。
ハルを抱っこ紐で背中に背負い台所へ向かう。

今まで主人のいなかった台所はようやく主人を迎え輝いている。

ちなみにこの世界には冷蔵庫と似たものがある。
魔石という魔素の結晶に冷気を込め箱の形を成したものだ。

魔石は大気中に魔素の多い魔人国でしか手に入らない。
昔は魔石の利権を争い戦争もあったが、コストもなく生産されていく魔石はいつのまにか飽和に近いものとなり、現在魔人国の輸出産業の目玉となっている。


冷蔵庫から昨日しまったいくつかの食材を取り出し簡単にだが朝食の準備をする。

物音に気がつき目を覚ましたのか、ティダとシャルが目をこすりながら起きてきた。

「「おはよーございまーす」」

「うむおはよう、もうすぐ出来るぞ」

そういえば今まで宿屋の主人かハルにしか朝の挨拶をしていなかったと思い至る。

(ふむ・・・なかなか悪くないな)

ふふっと口から笑いがこみ上げる。


訓練場から出た後、宿屋を探そうと思っていたら「空いてる部屋があるからどうですか?」と誘われた。

誘われたのはシャルとティダが王都で借りている家だ。

「愛の巣に邪魔するのは失礼ではないか?」と聞いたら全力で否定された。
シャルは顔が少し赤かった気がする。
どちらにしても暫くは王都にいる事になる。
宿代もバカにならないだろう。
なら家賃も一部払う事で了承した。

「食事はどうしておるのだ?」

「シャル苦手なんだよな」「あんたもでしょ」と言い合いを始める。
殆ど外食か買ってきて済ませているらしい。
「朝食くらいなら我が作ろう」と言いこうなった。

その後食料品を買いに行く事にした。
王都だけあって人も多い。
エルフやドワーフ、魔人族も少なからずいる。
さすがに妖精族はいない。

「獣人はおらんのだな」

ふと呟いてしまう。
あまり生まれた地域から出たがらないらしい。
「東の王国なら獣王国も近いし見かけるかも」と教えてもらった。

恐らく寿命的なものもあるのやもな、オリハはそう考える。
平均年齢でいうと人族よりも十年から二十年は獣人の方が短い。
旅をすると年数もかかる。
やはり住み慣れた土地からは出たがらないだろう、そう考えた。


買い物を済まして家に案内してもらう。
荷物はティダが頑張ってくれている。

玄関をくぐるとリビングになっている。
左奥に台所があり時計回りにお手洗い、部屋、部屋、部屋といった具合だ。

真ん中の部屋が空いているとの事でそちらを使わせてもらう。
客室として使うつもりだったようだが、来る客がいないらしい。

魔法で簡単に掃除をして荷物を解きリビングへ向かう。
シャルが部屋から魔法院時代の教本を持ってきてくれた。

シャルは懐かしそうに読んでいる。
ティダは頭に疑問符を浮かべながら。
そしてオリハは顔をしかめながら。

シャルは質問したそうにしていたが「明日マインと一緒にやろう」と言うと渋々納得した。

恐らく勘違いしているであろうシャルに「ロバは「Color」のみで出したものだ」と伝えた。
案の定驚いていた。
多分別の魔法だと思っていたのだろう。
それを明日までの宿題にしておいた。


そして現在に至る。

「おふぃははんひょうははひすふの?」

「飲み込んでから喋りなさいよ」

とシャルがジト目で見ている。
飲み込んでごちそうさまをする。

いつの間にか二人とも頂きますとご馳走様をするようになっていた。

「今日は何するの、でよいか?」

その様を微笑ましく思いながらオリハが聞く。

「うん、そうそう」

「午前中特に用がないなら武器を見に行きたい」とショートソードを見ながら言う。
出来れば長い方が返り血を浴びにくいというのが理由だ。

「有名な所と俺がいつも行く所とどっちがいい?」

変な気遣いを感じて思わず笑みがこぼれる。
「ティダの行きたい方で良い」と答えた。
シャルは家でもう少し宿題を頑張るそうだ。
「まだ答えはいらぬか?」と聞いたらぶんぶんと首を縦に振っていた。


~~~~~~~~~~~~~~~


「じいさーん邪魔するぜー」

「邪魔するなら帰れ!」

いつもの返事だ。
そういやこのじいさんが「よく来たな」とか言ってるのは見たことも聞いたこともねえな。

二年前に他の冒険者のケツに引っ付いて何とか王都にきた。
その時ようやくF級からE級に上がって独り立ちすることになった。

剣も防具もお古でボロボロだったし、少し金も貯まったから記念に新しく買おうとおもったんだ。

この店で買うのを決めたのは俺のスキルだ。
シャルにもスキルの事は言ってねえ。
勝手に発動するから頼りにならないしな。

んで色々見てたら「向こうの店の方が安いぞ」とか言うから「この店の武器の方が強そうだ」って言ったんだ。
そしたら適当に防具と剣を見繕ってくれた。

「一ヶ月毎に必ず剣をメンテナンスに持ってこい」

「ちゃんと使えるようになったら剣を打ってやる」

よくわかんなかったけどそれから毎月剣を持っていった。
その都度「下手くそ」とか「扱いが悪い」とか散々言われたけど俺のために言ってくれてる気がしてなんか嬉しかったんだ。

一年経って初めて褒められた。

「ちったあマシになったな」

「おお!褒められた」って言ったら「調子に乗るな!」って怒られた。
んで裏から今持ってるこの剣を持ってきた。
俺が店に飾ってあるのをよく見てたからか、同じツヴァイハンダーを用意してくれてたみたいだ。

「飾ってあるやつのがカッコいいじゃんか」って言ったら殴られた。
よくわかんねえ。


「今日は客連れてきたんだよ」

で、オリハさんも入ってきた。

「すまぬな、剣を買いにきた」

「・・・ああ好きに見な」

ん?何か俺と違うくね?
オリハさんの見た目か?
まあ珍しいし綺麗だしな。

・・・かーちゃんじゃないけど。

今日は付き添いだし俺はあのツヴァイハンダーを見てた。
オリハさんがその場で見渡して数打ちの剣が置いてあるところに行った。

「店主よ、この子はここで良いのか?」

って剣を十本位の中から一本引き抜いた。
あのじいさんが目を見開いたの初めて見た。
いつも太い眉毛に隠れてて目があったのも初めて知った。

んで、オリハさんが俺を呼んで数打ちの剣を握らせた。

・・・うんただの剣だ。

その後さっきオリハさんが選んだ剣を握らせた。

・・・あれ?しっくりくる。

手に吸いつくって言うのかな?全然違う。
見た目同じなのになんでだ?

「これが良い剣というものだ」

なんか凄い納得した。
でも何であの数打ちの中にあるんだ?
何で分かんの?そう顔に出てたのか「それが剣士としての目利きだ」って言われた。

「店主・・・」

じいさんが溜息をついて頭を掻きむしってる。

「・・・そのガキにゃ十年早いぞ」

え?何でそれで会話が成立してんの?
身長が低いし髭が長いから地面を擦りながらカウンターから出てきた。
んであのカッケー剣のケースを外してくれた。
じいさんが「んっ!」て髭で握れって言ってきた。

おーやっぱ・・・あれ?何か折れそうな気がする。
何だろ頼りにならない気がする。

「そっか、この剣の飾りを俺の剣につければいいんだ」

じいさんがジャンプして殴ってきた。
痛え。

「クククすまぬ、確かに十年早かったな」

じいさんが剣を直してカウンターに戻っていった。

何か子供扱いされた気がする。

その後じいさんが奥から黒革のキレイな鞘を出してきた。

「・・・本当に良いのか?」

「ああ、貰ってやってくれるんだろ?」

ってあの数打ちのいい感じの剣をオリハさんが買った。

何かじいさんとオリハさんのやり取りが大人って感じがしてカッコよかった。
俺ももう少し年とったらあんな風になれんのかなあって思ったらスキルが発動した。

・・・なれないのかよ。


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