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第2章 王都編
2-13 神の武器、試験
しおりを挟む今日はギルドの一芸試験の日だ。
朝からのんびりと世間話をして少し早めに街に出た。
ギルドの近くのパンケーキのお店に来た。
早めの昼食だ。
ハムと野菜の方を頼もうとしたが、試験前なのか心が優しさを求めフワフワの方にした。
今回の一芸試験の受験者はオリハを含め五名。
時間的にオリハが最後の申請だったようだ。
登録をしてから全員訓練場へと向かう。
引率は受付の女性、審査員は先に訓練場に行っているらしい。
「受けるのは若い者が多いのだな」
受験者達を見てオリハはそう言った。
「冒険者登録したらもう受けられませんからね」
オリハさんみたいに研鑽に明け暮れた人の方が珍しい、因みに私は院卒で受けてDでした、とはシャル談である。
程なく訓練場へと着いた。
わざわざ仮テントを立て三人が座っていた。
真ん中の人がギルマスで、鎧を着た人がこの国の騎士団の人だとティダが教えてくれた。
ローブを着てるのが魔法院の教授、兼魔術師会の役員だと忌々しくシャルが教えてくれた。
審査を受ける代わりに優秀な人材があれば引き抜く権利もあるとの事。
受付の女性が書類を三人に配った。
ギルドで事前に渡された物だが、書類は地名がよくわからないとシャルに言ったら適当に書いてくれた。
我の娘は優秀だ。
ギルマスに呼ばれてシャルとティダがテントへ向かう。
シャルは院の教授と挨拶を交わしていたが、違いに嫌いなようだ。
戻ってきて、あの人エルフ嫌いなんですよ、と衝撃発言された。
大丈夫です最初から分かってましたから。
そういうシャルの目が今日は何故か怖い。
順番は登録順らしくオリハは最後だった。
そういえばシャルが最後になるよう仕向けた気もしなくはない。
順番に試験が開始される。
オリハは結界を張って最高位魔法でも詠唱破棄で撃てば良いか、と決めていた。
院の教本に目を通して最高位よりも上の階位魔法はロストマジックとして研究対象らしい。
前の四人はF F E Fだった。
E判定の魔法使いの男の子の時だけ院教授がDと騒いでギルマスが溜息をつきEまで落とした。
シャルも苦々しく見ていた。
そしてオリハの番を迎えた。
人如きに審査など!とは思わないが、神の武器として恥ずかしくない結果は出したい所。
「オリハさんなら大丈夫ですよ、ハルちゃんが試験中に怖がらない様にロバを出してあげといた方がいいんじゃないですか?」
と威圧的な笑みを向けてきたので、う、うむとロバを出した。
何か今日のシャルは怖いな、そう思いながらテント前に歩みを進めた。
「な・・・何だねそれは!」
いきなり院教授に詰め寄られた。
もう一人の騎士はよくわかっていない。
ギルマスは目を見開いていた。
よくわからず他の受験者と一緒にいるティダとシャルを見た。
ティダはよくわかっていない顔だ。
シャルは手を叩いて笑っている。
「何だ、とは?」
聞かざるを得ない。
「い、いや!その浮いてるものだ!」
「これか?これは「ちょっと待ったー!」
とシャルが乱入してきた。
最初から狙ってたのか、とジト目で見る。
全てが上手くいったと言わんばかりの笑みを浮かべている。
「これはロストマジックです」
このシャルの一言にギルマスも院教授も目を見開いた。
騎士の方はほう、あれが!と驚く程度だ。
そしてこのロストマジックは攻撃向きではなく、生活魔法、嗜好を豊かにするタイプになります、と引き続き説明をする。
嵌められたから後は任せようとオリハは諦めた。
「だからどんな魔法だね!」
「あら教授、ロストマジックは公開するかどうかは発見者の任意ですよね?」
お忘れですか?ウフフ、とぐぬぬ、が続く。
ギルマスは溜息をつき頭を抱えている。
騎士は置いていかれた。
「この魔法を公開した場合の級ですが?」
これにはギルマスが答えた。
「貢献度はC級だ、戦闘能力も問われるが経歴を見る限り問題ないだろう」
知らない間にC級に合格したようだ。
「ではさっそく「で、おいくらですか?」
院教授の声をシャルが遮り空気を凍らせる。
もう騎士の人は空気だ。
「まさか!タダで公開しろなんてないですよねぇ」
それと、と杖を向けて無詠唱でハルの周りのロバの色を変える。
おお、いつの間にと思うオリハも空気だ。
ハルだけがきゃっきゃっと存在していた。
「この魔法を教えてもらってその技術の延長で無詠唱まで会得出来ました」
「き、金貨五百枚でどうだ!」
「で、ここにその魔法と詳細を纏めたレポートがあります」
その為にレポート書いていたのかー、とティダも空気だ。
「な、七百枚だ!」
「ありがとうございました!」
と一礼をしてレポートを渡した。
成る程、値上げしなかったという事は適正な価格であったのだろうな、そう思う受験者オリハは空気だった。
「あー今回の一芸試験はこれで終了だ、ギルドでギルドカードを発行するから取りにくるように」
無理やりギルマスがまとめた。
取り敢えずニコニコ笑顔のシャルをティダとオリハで左右から頬っぺたを持ち上げた。
「いひゃいひゃいぎょめんさしゃい」
その後ギルドに行きカードを受け取った。
一芸試験でC級合格は十年以上なかったらしく話題になるだろう、と言われた。
そのままシャルを連行して行ったが程なく戻ってきた。
もう一部ギルド用にレポートを用意していたらしい。
迷惑をかけた自覚はあるらしくこちらは無料との事。
金貨は明日魔術師会からギルドに持ってくるそうです、と未だニコニコ顔のシャルの頬っぺたを持ち上げた。
そして場所を変え、祝勝会ならぬ反省会ならぬ吊し上げ会が始まった。
シャル曰く、院生時代から嫌がらせが多かった。
自分が一芸試験の時の審査員で、ギルマスはC級を提示したが詠唱が汚いとか文句をつけられDにされた、と。
「だから~どうしても目に物を見せたかったんです~」
と言うシャルはもう出来上がっていた。
「後はオリハさんが魔法使ったら無理矢理、院に引っ張られてると思って」
そう言いイジイジするシャルの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「褒められたもんじゃないけど、まあこれでオリハさんも狙われる心配はへるよな」
ティダもぐしゃぐしゃにした。
「そういや金貨の価格はあんなもんなの?」
「私の算用だと六百枚だったから百枚多いくらいね~」
「では三等分で「「ダメ」」
「PT組んでるって言っても限度ってもんがあるよ、それに俺何もやってねーし」
「ぐぬぬっ」
「元々はオリハさんの技術なんだから、私はレポートにまとめただけですからね」
「そうだなーシャルの取り分は多くて二百枚の所だろうな」
「では二百枚だ」
「・・・満額渡すとか教育上よくないですよ?」
「ぐぬぬぬぬっ」
間を取って百五十枚に収まるのはさして時間はかからなかった。
交渉の基本の最低ラインをしっかりと決めたティダ、シャル組の勝利であろう。
この辺りをオリハが気づいた上で楽しんでたのかはオリハのみが知る。
「その代わり今日は母が奢る」
「祝勝会の本人が奢るってどーなの」
「祝勝会ではないシャルの吊し上げ会だ」
「えー頑張ったのにー」
こうして楽しい飲み会の時間は過ぎていく。
翌朝、王都には二つの噂が流れた。
一つは一芸試験でC級合格者が出た事。
一つは盗賊団四十人から村を救った人の事。
この二つの噂の共通言語であるダークエルフが同一人物であり、二つの噂が一つの噂になるのに時間はかからなかった。
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