赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第2章 王都編

2-14 神の武器、至る日に向けて

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「ハーレムで強PTとか何様だ!」

「強くて美人とか何でてめえばっかり!」

「・・・リア充爆ぜろ」

「ち、違えってハーレムじゃねえって!」

「何だ!まだ足りねえのか!」

ここはギルド。
朝食を終えノンビリと三人でギルドに向かう途中からこの兆候は見えていた。

(これがギルマスの言っていた兆候か?)

こちらを見た人がほぼ手を止め足を止める。
よく行くパン屋の女性が店から出て声をかけてきた。

「ちょいとあんた、盗賊四十人斬ったって本当なの?」

二人は何それ聞いてない!という顔をする。
なので本当の事を言う。

「斬ってなどおらぬぞ?魔法で吹き飛ばしただけだ」

「すごいねー、あちょっと待ってね、これ持っておいき」と惣菜パンを沢山くれた。
ボー然とした表情でパンを受け取るシャル。
オリハは御礼を告げ、手を振る。

「いつやったの?」とジト目で見てくるので「二人に会う前だ」と前置きしてハルと出会った所から盗賊団を吹き飛ばした所まで、歩きながら説明した。

「はあ、成る程なーハルと出会った後か」

とティダはハルの頬っぺを突いた。

「二人と行動を共にしてからそんな暇はなかったであろう」

失敬な、と言わんばかりに頬を膨らませる。

「いや、まあ・・・うんそうだけどさ」

出来るだろ?と思われているのかと考える。
まあ出来るだろうとオリハは思う。

周りの視線は気になるがそんな話をしているとギルドについた。

そして恒例の合唱である。

我が息子故に手助けせぬわけにはいかぬな、とオリハが声をかける。

「我はティダの女ではないぞ?」

「オリハさん?!」

「母だ!」

「オリハさん?!」

ふむ、二回目となると先が読めるので同じ発音になるのだな、と思いつつ神輿で担がれていくティダに手を振る。

予定調和が如くシャルは黙々と手続きを行う。
昨日シャルからギルドカードには金を預けるシステムもあると聞いた。
どこの支店でも引き降ろせるらしい。

ヨロヨロになったティダは少しギルマスと話があるらしい。
夕方には帰れると思う、との事。


訓練場に行くにはまだまだ時間があるので、買い物に行こうという事になった。

魔道書を立ち読みして私のレポートが世界を変えるとか言い放ったり、何の役に立つかわからない魔道具を見たり、服を見てはアレが似合うシャルにはこれだろう、フリフリはもう、など楽しい時間を過ごす。

「オリハさん次はどこ行くの?」

そうシャルに問われて唸る。
東に行って獣人とモフモフも悩ましい。
が先に南に行きたい理由があった。

行き先は魔人国だ。
大気中の魔素濃度が高く食物に影響を与えてしまう。
オリハルコンであった時にその所為で人間国、獣王国に宣戦した記憶があった。
なので今どうなっているのかオリハは見ておきたかった。

「南だな、魔人国に行ってみたい」

「じゃあ南の王国までは付き合えそうですね」

「来るのか?!」

溜息をつき肩を竦めこう言った。

「オリハさん一人にしたら何するかわからないじゃないですか」

「ぐぬぬっ」

「それに楽しいですしね」

ああそうだな我も楽しい、口に出さずにそれを心に収めた。

ポーション類だけ購入して食糧は前日に、となった。


荷物を家に置き、貰った惣菜パンを昼食にして二人で食べて訓練場へ向かう。

マインがブンブンと手を振っている。
その横にはプラチナブロンドの可愛らしい女の子がいる。

「オリハさん!聞いてください」

とテンションが高すぎるので落ち着けと促す。
要約すると、この間イジメをしていた奴らが退学届けを出したらしい。
伯爵家の三男だったらしいが、王命により家が爵位剥奪になりそうだ、と。

「そうか、良かったな」

そう言い頭を撫でたオリハだが大元の要因はオリハにあり、遠巻きに彼を救った事に気づくことはなかった。

横の可愛らしい女の子が肘でマインを突いた。

「私はエリザ、いえリズと申します、マインが最近明るくなられたので聞けば虫・・・いえ素敵な師が出来たと聞きまして」

何か不吉な単語が聞こえた気がしたがオリハだ、と紹介を返した。

立ち居振る舞いから貴族なのだろうと推察する。
訓練していると思しき者から視線も感じる。
それなりの立場の者なのだろう。

「リズと話すようになってからあいつらが絡みだして・・・」

「あら私のせいだと?」

「い、いや違うよ!」

とティダ以上に尻にひかれているようだ。

「魔力解析?をして欲しい」と頼まれたのでやってあげる。
火だった。
ティダよりも凄く色濃かったが性格的特徴に当てはまる内容を言わずに端的に教えた。
オリハはリズの目を見る事が出来なかった。

授業内容を伝えるとやはり魔法学校の生徒なのだろう。
術式という目新しい考えに目を輝かせた。
その魔法の考え方はレポートにして魔術師会に提出した旨を言い、いずれは教育方針も変わるだろう、とシャルが伝えた。

「まあ、早速手配しなきゃですね」

そう言うと手なりで模擬戦をしている男に目をやり、その男は頷くと走って行った。

(・・・もう隠す気ないではないか)

最後の魔力操作も終えた頃にはリズの目には恋敵を見るような怨讐はなく輝いていた。

飴玉を手に取り、模擬戦の相手が居なくなって数刻ずっと素振りをしている男に目をやった。
男が頷いたので皇・・・リズとマインに飴玉をあげた。

お別れの際、最後まで懸命に手を振ってくれたマインの将来を思わずにはいられなかった。


これから十年後、マインは火薬ではなく「Color」を使用した魔法大型花火の技術の開発に成功する。

彼の生み出した速射連発式大型花火は以降様々な国の式典で使用される事となる。
その花火は彼の名前を受けこう呼ばれた。
スターリーマイン、と。

マインとリズの関係はまた別のお話。



夕食の準備をしているとティダも帰ってきた。
シャルが魔人国が行き先だと伝えるとティダも了承した。

依頼の関係で三日後でもいい?と聞かれた。
挨拶回りもあるので構わないと伝えた。


王都も後数日か、見て回っていない所もまだまだある、ゆっくり見て回ろう。
そう思い食後の茶を啜った。

何時もならオリハの方が先に起きているのにティダが牛乳とパンを食べていた。

「依頼も明日には終わるから明後日出発できる」

そう言い残し出て行った。
息子との語らいが減り残念に思う。
だが娘が二人いるのだ、と思い直す。

起きてきたシャルに目を輝かせ、朝食の買い食いと王都周辺の散歩を提案する。

まだ食べたことの無い物や新商品だという物を二人で適当に買ってベンチに腰掛けて食べた。

ハルがベンチから手を離して二歩ヨロヨロと歩いた時は我が子は天才だ!とシャルと大はしゃぎして視線を集めた。

武器屋なども見て回った。
シャルがミスリル製の杖とかどうなんですか?と聞いてきた。
大きく魔力を操る時はいいが少量の調整は伝導率が高いので難しくなる、と教えた。

意匠の凝った物など多数あるが、オリハの見た中ではティダの剣を超えるものは見当たらなかった。

シャルは新しいローブを買っていた。
夏用だそうだ。


その後昼食を食べ、工場地帯、住宅街へと足を運ぶ。
貴族街は当然近寄らない。
シャルもこの辺りは見たことないです、との事。

親子三人で手を繋ぎ歩く姿を見るシャルに思わず問いかけた。

「ティダとはどうなのだ?」と。

シャルがティダにどう思っているのかはどうしてもわかってしまう。
物思うこともあり、つい聞いてしまった。

少し寂しそうな顔をしてこう言った。

「五十年経っても思いが変わらずにいられる自信がないんです」

ティダは人族として成人しているが、エルフとしてシャルは成人すらしていない。
シャルが成人した時ティダは・・・

「だから姉でいいんです、今は」

聞いても何も出来ないのに聞いてしまった。
自分の中に今ある想いの贖罪。
無いとは言い切れない可能性を前に、思わず言葉にしてしまった事を深く反省して頭を撫でた。

そして飴玉を口に放り込んだ。


家に帰り夕食を作る。
買っていた食材、数ヶ月は留守にする。
使い切らなくてはならない。

場合によっては主人だけがいない台所に戻ってしまうから。


「ただいま~肉~甘いもの~」

と疲れた顔をしてティダが帰ってきた。
部屋に荷物を置いて椅子に座り明日、明日で終わる~と呟く。

「何か手伝おうか?」と聞いたが「ギルマスからの勅命だし明日で終わるから~」と肉をガツガツと食べた。

食後には甘いミルクティーを入れてやろう。
甘々の母の味だ。


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