赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

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第6章 獣王国編

6-8 神の武器、愛詩曲

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とても嫌な臭いがした。
この臭いは昔を思い出してしまう。
ヒトが嫌いで憎くて襲いたくて殺したくて食べたくて仕方なかった頃の自分の臭い。
だから解ったの。
これが私を生んだ魔澱みの出来かけだって。

でも・・・今の私には吐き気がする嫌な臭い。
大切な子らを憎もうとする臭い。
大事な同類とその子らを殺そうとする臭い。

何故オリハが、こんなものを探していたのかはわからない。
目で尋ねても「上手くいくかわからんのだ」とはぐらかされた。

暫く進むと嫌悪感が顔に溢れてきた。
オリハも気がついたみたい。
それでもやめようとしない。
そのくらい大事なことなのかしら?
・・・泣き虫の友人に最後まで付き合う、そう決めたのだから我慢するけどね。

本当にこの子は何者なのかしら。
最初は捕らえる為の罠かと思った。
今はヒトの形をした仲間にしか見えない。
そして私よりも深い業を背負った・・・

まあ誰でもいいわ。
私の大事な子供達を託せる唯一の存在。
・・・妹が一番しっくりくるわね。
しっかり者なのに何処か抜けてる。
頼りになるのか、ならないのか判らない。
そんな手間のかかる妹、うふふ、オリハはどう思っているかしら。
また・・・会えるかしら、子供達と一緒に。

そんな事を思っていたら、臭いの元についた。
でも、何かあるのに何もない。
そんな感じだった。
オリハが、子らに教えようと四苦八苦していた「Corol」でそこに色をつけた。
現れたのはピンク色の小さな魔澱みだった。

・・・何でピンクなのかしら。
そんな私の疑問を無視して声をかけてきた。

「フェンリル・・・上手くいけばお主の願いが叶うはずだ、今からこの臭いを消す、その間に願い続けろ、心の底からだ」

そう真剣な眼差しで私に言う。
そして子らを自分の背後に退げて、私を臭いの前に座らせた。
・・・私の為?願いが叶う?
ふふふ、本当に可愛らしい妹だわ。
オリハが言うのだから信じる。
だから、心の底から渇望するわ。
叶わないと諦めていた夢を。
恋い焦がれ求めたソレを。

オリハはそのピンクの渦を対象にして、破邪の子守唄を歌った。
渦の臭いが減っていくのがわかるわ。
だから私はオリハの言う通りに渇望する。
諦めたソレを。
望んだソレを。
憧れたソレを。

そして臭いが無くなった瞬間・・・その場の空気が弾けた。
私は思わず横たわってしまった。
オリハは・・・自分だけ結界を張ってるのね。
子供達もいるから仕方ないけど、それなら私にも張って欲しかった。

そしてピンク色の煙が辺りを立ち込める。
・・・でも本当に?願いが?
そんな事は無い、まさか、そう思いながらも、胸の鼓動が否が応でも高まった。

煙が少しづつ晴れてくる。
隙間から美しい白銀の毛並みが見えた。
う、うそ、本当に?!
で、でも私は・・・
そう横たわりながらも、同様を隠せないでいた。

「ああ淑女レディすまない、お怪我はありませんか?」

現れたのは端正なお顔立ちで、円らな瞳の薔薇を背負った王子様フェンリルでした。
そ、そんな、淑女だなんて・・・もう私なんてオバさんなのに・・・

「そんな事はありません、私こそ生まれたばかりの若輩者ですが・・・一目見て貴女に恋に落ちてしまいました」

そう言って、頬を擦り合わせます。
嗚呼、薔薇がっ!薔薇が見えますっ!
・・・ほ、本当に?私なんかでいいの?

「そんなっ!寧ろ貴女しかいません、貴女しか見えないのですっ」

ナ、ナツ!フユッ!お母さん、お姫様になっちゃった!どうしましょう!

あら・・・オリハが固まっているわ。
うふふ、多分、子供を望むと思ったのね。
女は欲張りなものよ?
王子様も求めたら一石二鳥じゃない?
もう、オバさんだからって諦めてたのに・・・
現実に戻す為に、鼻息を吹きかけた。

「・・・ぶはっ?!」

お帰りなさい、オリハ。
貴女にならきっと私の言葉は伝わると思う。
本当にありがとう、夢が叶ったわ、ウフフ。

「ぐぬぬっ」

・・・だからね、貴女も諦めちゃ駄目。
良いのよ、女は欲張りで。
子供も、女の幸せも、何もかも諦めちゃ駄目よ。
大丈夫、オリハなら必ず掴めるから。
お姉ちゃん信じてるから。
・・・ほら、泣かないで。

そう言い泣き虫の妹に頬ずりした。

・・・ナツ?・・・フユ?
もうあなた達は立派な魔獣よ。
自慢の子供達よ。
だから次はヒトとして一人前になりなさい。
そして誰よりも強く、そして優しくなりなさい。
私もお別れは少し淋しい、いえ、とても淋しいわ。
でもそれ以上にあなた達の幸せを願っています。

そう言い泣き噦る我が子に頬ずりをしました。

ハル?アキ?
あなた達のお母さんはとても強い。
でもとても弱いの。
だから助けてあげてね?

そう言い「なっ!?」と顔を赤くするオリハを無視して、言葉の通じないハルに頬ずりしました。
ハルならもう判っていると信じて。

では王子様・・・行きましょうか?

「どちらに?私のお姫様」

ウフフ、勿論二人の愛の巣ですわ。

「ああ!待っておくれ、私の愛しい君よっ」


・・・ナツとフユを頼みますよ・・・オリハ。


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