赤子に拾われた神の武器

ウサギ卿

文字の大きさ
81 / 162
第6章 獣王国編

6-11 神の武器、二歳

しおりを挟む


寝る前にハルがオリハに「おはなしして」とお強請りをしてきた。
最近は二人に付きっ切りで淋しい思いをさせてしまったのかも知れない、そう思った。
ついでにナツとフユの言葉の勉強にもなるかと、オリハルコン物語を語った。
当然、絵本調で。
語っている途中で寝息が三つ増え四つになった。

我の語りは子守歌の代わりにもなるのだろうか?

少し可笑しく感じたが最後まで語った。
聞いている者は誰もいない。
オリハは語っている内に懐かしくなったのだ。
それは所有者達にではなかった。
神鉄と同様に所有者を思っていた周りの者達の事だ。

確かに、世界は優しくない。
悪しき感情に支配される事もあった。
不幸な出来事も沢山あった。
それでも思い返せば、必ず所有者達の周りには誰かはいたのだ。
所有者を思い涙を流す者が。
所有者を思い叱りつける者が。
ギュストにさえ・・・神鉄がいた。

ハルに拾われヒトとなった。
ティダとシャルに出会った。
エインとマリアに出会った。
フェンリルに出会った。
そして子らが懐にいる。

心残りは沢山ある。
悲しい、悔しい、辛い・・・だが幸せだとも思える。
憂の目に合った所有者達も天へ還り地を見た時に、自分を思ってくれた人達を見て、今の己の様にそう思ってくれたなら・・・
そう願いながら物語と瞳を閉じた。


二ヶ月もそんな事を続けていると、変わった奴らがいると噂にもなる。
雪も散らつき始めた王都の郊外で、いつもの様にゆっくりとした素振りと型をさせていた。
そうすると遠巻きに見物に来る獣人もいた。
大抵は物珍しそうに眺めて帰っていく。
たまに声を出して馬鹿にしてくる者もいる。
それにナツとフユが不愉快そうな顔をする。
「集中が乱れておるぞ」とオリハは気にしない。
そうだ、オリハは大人なのだ。
そんな事で怒ったり暴れたりはしない。
だが不思議な事に「馬鹿そうなガキ」など対象を示した言葉を吐いた者は、何故かその場で昏倒した。

残念ながらオリハが何かをしたという証拠はない。

年若い制服姿の獣人なども来た。
王都には魔法や学問の研究、芸術の追求、兵士や警備、冒険者育成などを行う大学があり、そこの制服だと思われる。
鼻っ柱が高いのだろうか?
そういう者ほど、特定の対象を指定して気絶する率が上がる傾向にあった。

ナツとフユは思った、オリハはすっごい過保護だと。

オリハは自分の事を言われても意に介さないくせに、自分達にソレが向けられると表情が変わった。
何をしているのかは解らないが、言った奴は気絶する。
・・・胸の奥が不思議とあったかく感じた。
その言葉を口にしたく思う。
でもそれはいけない事のような気がした。
お母さんを裏切るような気がした。
だから二人とも、その気持ちにそっと栓をした。

「オリハ、アレなにしてるの?」

ある日の帰り道、気絶した者を指差してフユがそう聞いてきた。

「ぬ?あれは魔力による威圧だ」

へー、と答えるフユは良からぬ事を考えていた。
自分の事を言われても、どうせオリハがなんかしている。
だから気にならない。
でもオリハの事を言われるとモヤモヤとする。
だから出来るならアタシがやってみたい。
そんな事を考えていた。

「アタシできる?」

そう愛らしく問いかける白猫の頭を撫でて「明日から魔法の授業も増やそうか」そう答えた。
熱心だな、良い事だ、そう思い嬉しく思うが、本音を聞けばきっとオリハは悶え死んでいただろう。


そして12月も過ぎて新年を迎えた。
オリハはこの時期はあまり好きではない。
嬉しい実感を与えてくれるが、去年の痛みを思い出してしまう。
だから「侍女の心得」で得た知識で、その準備に勤しむ。
普段から特に腰回りを冷やさないように気をつけた。
オリハには子を成す予定はない。
古い卵子が排出されないように、子宮に回復魔法をかける事も検討したが・・・それはやめた。
痛みも含めてオリハには大事な事だった。

そして一月も半ばに差し掛かった頃、軽い倦怠感と目眩を覚えた。
その三日後、案の定始まる。
だが前ほどの痛みはなかった。
それでも痛いものは痛い。
食事の準備だけで精一杯だった。
ベッドから起き上がるのも億劫な為、数日は自主練を告げる。

心配する子ら、主にナツとフユに子供を授かれるように身体の中が新しくなるからだ、と説明した。
ハルが「弟か妹できるの?」と嬉しそうに聞いてきたので「夫がいないと出来ないのだ」そう答えた。
「夫婦が愛し合って子供が出来るのだ」と。
まだその先は早いと説明はしなかった。
フユはオリハを見て不安そうにしていた。
なので「猫獣人にはコレはない、その代わりその時期は少し凶暴になるから気をつけるのだぞ?」と教えておいた。
ナツには「犬獣人の女性にはコレはある、そういう時はちゃんと大事にするのだぞ?」そう説いた。

その後ナツとフユはお出かけと自主練をすると言った。
お小遣いに銅貨を数枚渡しておいた。
ハルはそれについて行くと言った。
泣き縋るオリハに「子離れの授業」と言い残し、三人で出掛けて行った。

オリハはアキを抱きしめベッドの上で枕を濡らした。


そして四月を迎えた。
ナツの型の種類も増やした。
フユも木剣を木のナイフに変えた。
手元が器用なので二刀持ちを勧めた。
魔法の授業もぼちぼち順調だ。
ナツは魔法への適性が薄かった。
身体強化が精一杯だろう。
フユは風属性と植物系魔法の適性があった。
近接戦闘とも相性は良い。
術式による魔力の糸化はまだまだ先だ。
ハルは正確な生まれ月は判らないが、三歳は過ぎた。
アキも少しづつ喋れるようになってきた。

オリハはこの世に生まれて2年目を迎えた。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...