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第6章 獣王国編
6-11 神の武器、二歳
しおりを挟む寝る前にハルがオリハに「おはなしして」とお強請りをしてきた。
最近は二人に付きっ切りで淋しい思いをさせてしまったのかも知れない、そう思った。
ついでにナツとフユの言葉の勉強にもなるかと、オリハルコン物語を語った。
当然、絵本調で。
語っている途中で寝息が三つ増え四つになった。
我の語りは子守歌の代わりにもなるのだろうか?
少し可笑しく感じたが最後まで語った。
聞いている者は誰もいない。
オリハは語っている内に懐かしくなったのだ。
それは所有者達にではなかった。
神鉄と同様に所有者を思っていた周りの者達の事だ。
確かに、世界は優しくない。
悪しき感情に支配される事もあった。
不幸な出来事も沢山あった。
それでも思い返せば、必ず所有者達の周りには誰かはいたのだ。
所有者を思い涙を流す者が。
所有者を思い叱りつける者が。
ギュストにさえ・・・神鉄がいた。
ハルに拾われヒトとなった。
ティダとシャルに出会った。
エインとマリアに出会った。
フェンリルに出会った。
そして子らが懐にいる。
心残りは沢山ある。
悲しい、悔しい、辛い・・・だが幸せだとも思える。
憂の目に合った所有者達も天へ還り地を見た時に、自分を思ってくれた人達を見て、今の己の様にそう思ってくれたなら・・・
そう願いながら物語と瞳を閉じた。
二ヶ月もそんな事を続けていると、変わった奴らがいると噂にもなる。
雪も散らつき始めた王都の郊外で、いつもの様にゆっくりとした素振りと型をさせていた。
そうすると遠巻きに見物に来る獣人もいた。
大抵は物珍しそうに眺めて帰っていく。
たまに声を出して馬鹿にしてくる者もいる。
それにナツとフユが不愉快そうな顔をする。
「集中が乱れておるぞ」とオリハは気にしない。
そうだ、オリハは大人なのだ。
そんな事で怒ったり暴れたりはしない。
だが不思議な事に「馬鹿そうなガキ」など対象を示した言葉を吐いた者は、何故かその場で昏倒した。
残念ながらオリハが何かをしたという証拠はない。
年若い制服姿の獣人なども来た。
王都には魔法や学問の研究、芸術の追求、兵士や警備、冒険者育成などを行う大学があり、そこの制服だと思われる。
鼻っ柱が高いのだろうか?
そういう者ほど、特定の対象を指定して気絶する率が上がる傾向にあった。
ナツとフユは思った、オリハはすっごい過保護だと。
オリハは自分の事を言われても意に介さないくせに、自分達にソレが向けられると表情が変わった。
何をしているのかは解らないが、言った奴は気絶する。
・・・胸の奥が不思議とあったかく感じた。
その言葉を口にしたく思う。
でもそれはいけない事のような気がした。
お母さんを裏切るような気がした。
だから二人とも、その気持ちにそっと栓をした。
「オリハ、アレなにしてるの?」
ある日の帰り道、気絶した者を指差してフユがそう聞いてきた。
「ぬ?あれは魔力による威圧だ」
へー、と答えるフユは良からぬ事を考えていた。
自分の事を言われても、どうせオリハがなんかしている。
だから気にならない。
でもオリハの事を言われるとモヤモヤとする。
だから出来るならアタシがやってみたい。
そんな事を考えていた。
「アタシできる?」
そう愛らしく問いかける白猫の頭を撫でて「明日から魔法の授業も増やそうか」そう答えた。
熱心だな、良い事だ、そう思い嬉しく思うが、本音を聞けばきっとオリハは悶え死んでいただろう。
そして12月も過ぎて新年を迎えた。
オリハはこの時期はあまり好きではない。
嬉しい実感を与えてくれるが、去年の痛みを思い出してしまう。
だから「侍女の心得」で得た知識で、その準備に勤しむ。
普段から特に腰回りを冷やさないように気をつけた。
オリハには子を成す予定はない。
古い卵子が排出されないように、子宮に回復魔法をかける事も検討したが・・・それはやめた。
痛みも含めてオリハには大事な事だった。
そして一月も半ばに差し掛かった頃、軽い倦怠感と目眩を覚えた。
その三日後、案の定始まる。
だが前ほどの痛みはなかった。
それでも痛いものは痛い。
食事の準備だけで精一杯だった。
ベッドから起き上がるのも億劫な為、数日は自主練を告げる。
心配する子ら、主にナツとフユに子供を授かれるように身体の中が新しくなるからだ、と説明した。
ハルが「弟か妹できるの?」と嬉しそうに聞いてきたので「夫がいないと出来ないのだ」そう答えた。
「夫婦が愛し合って子供が出来るのだ」と。
まだその先は早いと説明はしなかった。
フユはオリハを見て不安そうにしていた。
なので「猫獣人にはコレはない、その代わりその時期は少し凶暴になるから気をつけるのだぞ?」と教えておいた。
ナツには「犬獣人の女性にはコレはある、そういう時はちゃんと大事にするのだぞ?」そう説いた。
その後ナツとフユはお出かけと自主練をすると言った。
お小遣いに銅貨を数枚渡しておいた。
ハルはそれについて行くと言った。
泣き縋るオリハに「子離れの授業」と言い残し、三人で出掛けて行った。
オリハはアキを抱きしめベッドの上で枕を濡らした。
そして四月を迎えた。
ナツの型の種類も増やした。
フユも木剣を木のナイフに変えた。
手元が器用なので二刀持ちを勧めた。
魔法の授業もぼちぼち順調だ。
ナツは魔法への適性が薄かった。
身体強化が精一杯だろう。
フユは風属性と植物系魔法の適性があった。
近接戦闘とも相性は良い。
術式による魔力の糸化はまだまだ先だ。
ハルは正確な生まれ月は判らないが、三歳は過ぎた。
アキも少しづつ喋れるようになってきた。
オリハはこの世に生まれて2年目を迎えた。
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