修道院に行きたいんです

枝豆

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偽り

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殿下はこれからは自分のことをエルンストと呼び捨てるか、またはエルと呼ぶように,と言った。

「必要ですか?」
「必要です。」
そう言い切られては断る事はできない。
畏まりました、と了承するしかない。

では、こちらへ。
立ち上がったエルンスト殿下は続き部屋の扉を開けた。
扉の奥は寝室になっていた。
どうやらここはエルンスト殿下のお部屋だったらしい。

「ここで休んでいてください。しかし服を脱いで裸で。」

頭の中が真っ白になった。
「な、何をするつもりなのですか!?」
「何もしません。信じてくれ、と言いましたよね。
私は…間抜けな間男に成り下がろうと思います。」
「そんな事すれば…私もあなたもタダじゃ済まない…。」
下手をすれば私は死罪、エルンスト殿下は廃嫡か流罪か…?
何を言っているのだろう?

違うどこか俯瞰で自分を見ているもうひとりの自分が思った。

…違う、そうはならないわ。
私は公の立場がない。私は王太子の何かではない。
伯爵令嬢の私には王弟子息からの要求は拒めない。
…公式には。

もちろん非公式なら別。ステファン殿下は私をとても大切に扱うし、周りにもそれを求めていらした。
だからみんな私には当たり障りのない態度を見せる。敬う事なく,蔑む事なく。
人の態度の表と裏はこの半年,嫌というほど見てきた。
私がここにいたくない理由のひとつかもしれない。

「…偽るのですか?ステファン殿下を騙すおつもり?」
「左様です。」

無理だ!何言ってるんだ、何もしないでステファンを、みんなを欺ける訳がない!
何もしないで…。いや待て、何かあれば?…。

覚悟を決めるのは一瞬だった。
迷ってはいけない,怯んではいけない。
チャンスはおそらくこれきりだ。
他の男の部屋に入った事がステファン殿下の耳に入れば、私はきっと2度とあの部屋から出しては貰えなくなってしまうに違いないのだから。

「私にステファン殿下を裏切れと仰るの?あなたはステファン殿下を裏切れるの?」
「違います。先に裏切ったのは王妃殿下であり、ステファンです。
裏切った者にいつまで忠誠を誓うつもりは、私にはありません。
決別の時が来た、それだけのことです。」

「…わかりました。覚悟を決めましょう。私はステファン殿下と決別しようと思います。

でも、それなら貴方も脱いでください。
ただ私が裸で寝ているだけではステファン殿下の目は欺けません。」

言い出したのはエルンスト殿下の方だ。
だったらとことん巻き込んでやる!
私は腹を決めた。そして私は堂々とこの城を出ていくんだ!

エルンスト殿下の顔が真っ赤になった。そら,見なさい、そんなことじゃあのステファン殿下は騙せない!

私は可能な限り服を緩めた。

「殿下、早く脱いでください!照れてる場合じゃないです!時間がありません、さあ急いで!!」
弾かれたエルンスト殿下がぎこちなく服を脱ぎ始める。

パサリ、と夜着の肩がはだけ落ちる。
置かれていて身につけていたのはこれだけ。下着の類はそもそも身につけてはいなかった。

私の覚悟を知ってくれたのか、エルンスト殿下も服を脱ぎ始めた。
流石に直視する事はできずに、するりと掛布の中に滑り込んで、枕に顔を埋めた。
エルンスト殿下がベッドによじ登ってくる気配を感じて、包まっていた掛布の中に殿下を引き込んだ。
私だって照れている場合じゃない。

「経験は?女性を抱いた事はありますか?」
「…ある。」
「…なら、私を抱いてください。」

なっ!と言いかけてエルンスト殿下は口を噤む。
「…本当の間男になれと?」
「そうです。でなければきっと誰の目も欺くなんて出来ません。」

はぁ、とエルンスト殿下はため息を吐いた。

「どうなっても知りませんよ。」
「…覚悟しています。手打ちすら願ったのに、それすらステファンは許してはくれませんでした。
…もう最悪の事はないんです。私には。

殿下を巻き込んでしまうことは申し訳なく思います。
私にその価値があるとも思えませんが、せめて好きになさって下さい。」

真っ直ぐにエルンスト殿下を見つめた。睨んだと言った方が正しい。
覚悟を知って欲しかった。

「では、一緒に堕ちましょう…どこまでも。
エルと呼んでください、とお願いしましたよ。」

エルンスト殿下は私の首筋にキスをするところから始める事にしたようだ。
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