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どうなってるのかわからない
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クラリーチェ様が出て行った。
部屋は静まり返ったまま、私たちはただ座っていた。
「あはは、上手くいきそうだ。」
エルンスト殿下の高笑いが静寂を打ち破った。
その笑い声で我に帰ることが出来た。
「どういうことですか?」
エルンスト殿下は私を修道院に送り出してくれるのではなかったのか?と尋ねる。
うん?何かまずい?とでも聞きたげにエルンスト殿下は首を傾けた。
「よく思い出して。」
…何を?
「俺,なんて言った?」
…なんて言ったかな?
確か…、自由にすることは出来ないが、ステファンから離してあげると言った。
「そう。一回他の男にやられたーくらいじゃ、ステファンはどうするかな?」
「…さあ?」
怒ったステファン殿下の行動は知らないから。
私はまだステファン殿下を心底怒らせた事はなかった。
不機嫌にさせた事はある。
大抵は捨てて欲しい、と願った時で、毎回のように体を使って黙らせられて…。
もう、思い出したくもなかった。
「徹底的に君を慰めに掛かる。自分のことは棚に上げて。」
うっ、あり得ると思ってしまった。
「大事なのは、俺が遊びじゃなくて、本気だとステファンが思うこと、じゃないかな?」
あれ?確かに…。いやいや、丸め込まれるな、私。しっかりしろ!
エルンスト殿下は、こうも言った。
「俺、どうなっても知らないと言ったよね?」
と。
…はい確かに。でもそれは…絶対違うと思う。
私がエルンスト殿下に「抱いてくれ。」と言ったのに対しての、どうなっても知らない、だ。
「好きにしていい、とも言ったよね?」
はい、確かに言った。でもそれも私を抱いて…の流れだ。
「一緒に堕ちようって言ったよね。きみはそれに応じてくれたと思ったけど?」
はい、確かに…。
堕ちるのはステファンを騙す事じゃ無かったか!?
いや,確かに騙すんだけど!!
って!!
「ちょっと待って下さい!!全部都合よく取り過ぎです!!」
どこが?とエルンスト殿下は開き直る。
「私が思っていたのとは随分と違っていまして。」
エルンスト殿下と関係を持ち、「このふしだらな浮気者!!」と罵られ、ステファンに捨てられる…。
本気じゃなかった、とエルンスト殿下にも突き放されて、私は修道院に送られる。
これが私の描いた筋書きだった。
最高じゃないか!
「そうだね、だけどそれは今じゃないと思わないか?
どうせステファンにしろ俺にしろ、レイチェルが妊娠していない事を確かめないとならない。」
「ええ、そうですね!」
ステファン殿下もエルンスト殿下も王族だ。
ステファン殿下は第一位、エルンスト殿下は王弟に次ぐ第三位。
私が身籠もったと嘘をついて良からぬ事を企まない保証はない。するつもりもないけれど、それを証明する手立てはない。
「私は薬を盛られている筈です、どうせ妊娠なんかしてませんよ。」
「あはは。そう怒るなよ、冗談だ。でも上手く行っただろう?
もう、どちらの寝室にも行かされる事はない、どっちの子かわからなくなるからな。
必要な時間なんだ、しかもその間の夜伽はない。」
悔しっ!!
でも、確かにそうだ。
でもしてやられた!悔しい!とてもじゃないけれど喜べない!
「君が誰のものにもならずに城を出ようとしたら、ステファンは必死で君を引き留める。
誰かのものにしなければならないと思うから諦めてくれるんだ。」
「そんな事…。」
「あるよ。それしかない。」
…そうなのかな?どうなのかな?
ステファン殿下は王太子だ。冷静になれば、私への執着が消えたら、きっと私を引き止めない。
冷静になれなければ?執着が消えなければ?
…うーん、わからない。
「婚約不履行はいつでも出来る。レイチェルはそれを身に染みて知ってるはずだけど?」
「確かにそれはそうですね。」
初夜を先に済ませたのは、絶対婚約するという暗黙の了解があったから。
それはあっさりとひっくり返った。
そうか。
ギリギリまでエルンスト殿下は私を「婚約者」の場所に追い込んでおいて、土壇場でひっくり返すおつもりなんだ。
なるほど、時間稼ぎ…か。
そうなると違う心配が出てくる。
「クラリーチェ様は、私をどうするおつもりなのでしょう…。」
ブリトーニャ様を推して妃に据えたいのは王妃様だ。
嫌がるステファン殿下を納得させるために、私の存在を非公式ではあるが認めている。
クラリーチェ様は中立だと思っていた。
島の所有権のために沈黙されているだけで、本音はわからなかった。
そのクラリーチェ様が事態の収拾に乗り出した。
「大丈夫、母上は味方だよ。
他国からの姫を婚約者として迎えておきながら、反対側に別の女がいる,こんな事が知られたら、キッテンの醜聞になってしまう、と嘆いておられた。」
そうだろう、まともな貞節を持っているからこそ、王族の血筋は敬ってもらえるのだから。
でも。
息子を貶められて喜ぶ母親はいない。
ブリトーニャ様に続き、クラリーチェ様に疎まれたら…。
「俺は白騎士だよ、母や王妃にとっては助け舟だ。
どのみちいつかは穏便にレイチェルは城から出さなきゃならないし、ステファンには諦めて貰わないとならないんだから。
フィリア伯爵は、妾と公爵夫人ならどっちを取ると思うかい?」
父は…きっと,どっちでも良いと言うだろう。ただ何も考えず強い者に流されるだけだ。選べる立場にはいない。
すまないと思ってくれはするだろうけど。
うっ、ううー。
巻き込む覚悟はしたけれど、こんな巻き込まれ方は想像もしていなかった。
「…どこまで本気なんですかね?」
「どこまでも本気だよ。」
エルンスト殿下が真っ直ぐに私を見た。
「…どこまで馬鹿なんですかね?」
「酷いな、間抜けな男になるって言ったケド、馬鹿な男になるつもりは無かったよ。」
…だから!
「間抜けな間男,でしたよね?」
「…違うよ、レイチェルは純潔だったじゃないか。間男になんかなりようがないじゃないか。」
「だから!私は純潔じゃなかったし、そもそも私たち致してませんよね!!」
「言ったよ、最後まで俺を信じて、と。」
そう言われても…エルンスト殿下のどこを信じたらいいの?
もう、訳がわからない。
部屋は静まり返ったまま、私たちはただ座っていた。
「あはは、上手くいきそうだ。」
エルンスト殿下の高笑いが静寂を打ち破った。
その笑い声で我に帰ることが出来た。
「どういうことですか?」
エルンスト殿下は私を修道院に送り出してくれるのではなかったのか?と尋ねる。
うん?何かまずい?とでも聞きたげにエルンスト殿下は首を傾けた。
「よく思い出して。」
…何を?
「俺,なんて言った?」
…なんて言ったかな?
確か…、自由にすることは出来ないが、ステファンから離してあげると言った。
「そう。一回他の男にやられたーくらいじゃ、ステファンはどうするかな?」
「…さあ?」
怒ったステファン殿下の行動は知らないから。
私はまだステファン殿下を心底怒らせた事はなかった。
不機嫌にさせた事はある。
大抵は捨てて欲しい、と願った時で、毎回のように体を使って黙らせられて…。
もう、思い出したくもなかった。
「徹底的に君を慰めに掛かる。自分のことは棚に上げて。」
うっ、あり得ると思ってしまった。
「大事なのは、俺が遊びじゃなくて、本気だとステファンが思うこと、じゃないかな?」
あれ?確かに…。いやいや、丸め込まれるな、私。しっかりしろ!
エルンスト殿下は、こうも言った。
「俺、どうなっても知らないと言ったよね?」
と。
…はい確かに。でもそれは…絶対違うと思う。
私がエルンスト殿下に「抱いてくれ。」と言ったのに対しての、どうなっても知らない、だ。
「好きにしていい、とも言ったよね?」
はい、確かに言った。でもそれも私を抱いて…の流れだ。
「一緒に堕ちようって言ったよね。きみはそれに応じてくれたと思ったけど?」
はい、確かに…。
堕ちるのはステファンを騙す事じゃ無かったか!?
いや,確かに騙すんだけど!!
って!!
「ちょっと待って下さい!!全部都合よく取り過ぎです!!」
どこが?とエルンスト殿下は開き直る。
「私が思っていたのとは随分と違っていまして。」
エルンスト殿下と関係を持ち、「このふしだらな浮気者!!」と罵られ、ステファンに捨てられる…。
本気じゃなかった、とエルンスト殿下にも突き放されて、私は修道院に送られる。
これが私の描いた筋書きだった。
最高じゃないか!
「そうだね、だけどそれは今じゃないと思わないか?
どうせステファンにしろ俺にしろ、レイチェルが妊娠していない事を確かめないとならない。」
「ええ、そうですね!」
ステファン殿下もエルンスト殿下も王族だ。
ステファン殿下は第一位、エルンスト殿下は王弟に次ぐ第三位。
私が身籠もったと嘘をついて良からぬ事を企まない保証はない。するつもりもないけれど、それを証明する手立てはない。
「私は薬を盛られている筈です、どうせ妊娠なんかしてませんよ。」
「あはは。そう怒るなよ、冗談だ。でも上手く行っただろう?
もう、どちらの寝室にも行かされる事はない、どっちの子かわからなくなるからな。
必要な時間なんだ、しかもその間の夜伽はない。」
悔しっ!!
でも、確かにそうだ。
でもしてやられた!悔しい!とてもじゃないけれど喜べない!
「君が誰のものにもならずに城を出ようとしたら、ステファンは必死で君を引き留める。
誰かのものにしなければならないと思うから諦めてくれるんだ。」
「そんな事…。」
「あるよ。それしかない。」
…そうなのかな?どうなのかな?
ステファン殿下は王太子だ。冷静になれば、私への執着が消えたら、きっと私を引き止めない。
冷静になれなければ?執着が消えなければ?
…うーん、わからない。
「婚約不履行はいつでも出来る。レイチェルはそれを身に染みて知ってるはずだけど?」
「確かにそれはそうですね。」
初夜を先に済ませたのは、絶対婚約するという暗黙の了解があったから。
それはあっさりとひっくり返った。
そうか。
ギリギリまでエルンスト殿下は私を「婚約者」の場所に追い込んでおいて、土壇場でひっくり返すおつもりなんだ。
なるほど、時間稼ぎ…か。
そうなると違う心配が出てくる。
「クラリーチェ様は、私をどうするおつもりなのでしょう…。」
ブリトーニャ様を推して妃に据えたいのは王妃様だ。
嫌がるステファン殿下を納得させるために、私の存在を非公式ではあるが認めている。
クラリーチェ様は中立だと思っていた。
島の所有権のために沈黙されているだけで、本音はわからなかった。
そのクラリーチェ様が事態の収拾に乗り出した。
「大丈夫、母上は味方だよ。
他国からの姫を婚約者として迎えておきながら、反対側に別の女がいる,こんな事が知られたら、キッテンの醜聞になってしまう、と嘆いておられた。」
そうだろう、まともな貞節を持っているからこそ、王族の血筋は敬ってもらえるのだから。
でも。
息子を貶められて喜ぶ母親はいない。
ブリトーニャ様に続き、クラリーチェ様に疎まれたら…。
「俺は白騎士だよ、母や王妃にとっては助け舟だ。
どのみちいつかは穏便にレイチェルは城から出さなきゃならないし、ステファンには諦めて貰わないとならないんだから。
フィリア伯爵は、妾と公爵夫人ならどっちを取ると思うかい?」
父は…きっと,どっちでも良いと言うだろう。ただ何も考えず強い者に流されるだけだ。選べる立場にはいない。
すまないと思ってくれはするだろうけど。
うっ、ううー。
巻き込む覚悟はしたけれど、こんな巻き込まれ方は想像もしていなかった。
「…どこまで本気なんですかね?」
「どこまでも本気だよ。」
エルンスト殿下が真っ直ぐに私を見た。
「…どこまで馬鹿なんですかね?」
「酷いな、間抜けな男になるって言ったケド、馬鹿な男になるつもりは無かったよ。」
…だから!
「間抜けな間男,でしたよね?」
「…違うよ、レイチェルは純潔だったじゃないか。間男になんかなりようがないじゃないか。」
「だから!私は純潔じゃなかったし、そもそも私たち致してませんよね!!」
「言ったよ、最後まで俺を信じて、と。」
そう言われても…エルンスト殿下のどこを信じたらいいの?
もう、訳がわからない。
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