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暗転
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ブリトーニャ様の婚約者内定の報せは瞬く間に国中を駆け巡った。
もちろん、ステファン殿下は何も知らされていなかった。
私に跪いて愛を誓ったのも本気だったし、私も王太子妃になれると信じていた。
婚約前の儀式を全て終え、後は国王陛下の帰国を待つばかりだった状態からのちゃぶ台返しに、ステファン殿下は母親である王妃殿下に猛抗議をしてくれたし、アデリーナ様のお父様である公爵様も、国と城を預けられていた王弟殿下夫妻も、王命には逆らえない伯爵家のために頑張ってくれた。
しかし、相手が悪かったのだ。
ブリトーニャ様の嫁ぎ先をなんとしてでも確保したかったシュタイン国王は、ブリトーニャ様の持参金のひとつに、長年両国間で揉めていた領土問題を絡めた。
「国境にある、ダリアン島の所有権を今後一切主張しない。」
王妃殿下は2人の小娘を天秤にかけて、国益になる方の小娘を選んだ、それだけだった。
「国益」を前に公爵も王弟も沈黙するしかなかった。
…仕方ない。
国の安寧のために身を引く事、それもまた王に忠義を示すひとつの道…。
私の純潔なんか安いくらいだ。
この事を少しは悪いと思ってくれるのならば、伯爵家にも何かしらの施しはあるだろう。
そう思ったのに…。
「俺は、レイチェルに真の愛を乞うた。その身で他の女を妻にする気はさらさらない!!
レイチェルが俺の側を離れるなんて認めない!!」
肝心のステファン殿下だけが納得してはくれなかった。
この国で、一夫一妻制のこの国で、今の私の立場を肯定してくれる身分はない!
それなのに、私は城どころか、王太子殿下の居住区から出される事はなかった。
「お願いです。どうか私のことはご遠慮なく捨ててくださいませ。
真実の愛を疑うな、今後誰にも嫁ぐなと仰るなら修道院でもどこにでも参ります。」
涙ながらに願ってもステファン殿下は私を手放そうとはしては下さらなかった。
「…どうしてこうなっちゃったかなぁ。」
楽しそうなお茶会の様子を眺めながら、ため息をつく。
逆ならまだ良かったのに。
ブリトーニャ様と先に結婚して、その後に妾としてどこかでひっそりと愛でてくれたら良かったのだ。
そうしたら誰にも会わず、どこにも行かず、ただひたすらステファン殿下がやってくるのを待っていればいい。
そしていつか飽きられて打ち捨てられる、悲しいかもしれないけれど、それでも生きていける。
それならきっと日陰者と陰口を叩かれようとも耐えられた。
「レイチェル様、お茶のお時間です。」
侍女のエッタが私を呼びに来る。
そうか、もうそんな時間か。
「はい、わかりました。…あなたは下がって。」
「…申し訳ありません。」
エッタは表情をこわばらせつつも黙って部屋を出て行く。
だって、私のお茶を彼女に入れさせる訳にはいかないから。
部屋に戻り、湯を沸かすところから始めた。
煌びやかな色彩を放つ壺から茶葉をポットに2杯。
沸いたお湯を注ぎ入れて待つ。
王妃殿下に頂いた、私専用のブレンド茶だ。
「必ず日に3度飲むこと。決してステファンには飲ませないこと。」
ってさぁ、どういうお茶か想像つくってものでしょうに。
私の身に何かあれば、ステファン殿下が黙っていない。
その咎めは間違いなくエッタに向く。
エッタだって王妃殿下には逆らえないし、まして「王妃殿下に飲ませろ。」と言われましたとも言えないし。
だから自分で淹れて、誰にも触らせずに、言われた通りに飲み続ける。
今のところはどうやら避妊薬が入っているだけのようだ。
月のものが止まっただけで、吐き気もしなければ、血色が悪くなったわけでもない。
これはまだ許容範囲だろう。
ブリトーニャ様よりも先に身籠る訳にはいかない。
これ以上事態をややこしくしてはいけないのだから。
でも…。
いつ命に直結するものが混ぜられるかわかったもんじゃない。
それにいつまでも飲み続けても平気なものだとも思わない。
「今死ぬか、ひと月後に死ぬか、1年後に死ぬか…だわね、きっと。」
だったらいっそのこと、ひと思いに…。
そう思わないわけでもないのだけれど。
ステファン殿下は未だに私をお捨てにはならなさそうだ。
もちろん、ステファン殿下は何も知らされていなかった。
私に跪いて愛を誓ったのも本気だったし、私も王太子妃になれると信じていた。
婚約前の儀式を全て終え、後は国王陛下の帰国を待つばかりだった状態からのちゃぶ台返しに、ステファン殿下は母親である王妃殿下に猛抗議をしてくれたし、アデリーナ様のお父様である公爵様も、国と城を預けられていた王弟殿下夫妻も、王命には逆らえない伯爵家のために頑張ってくれた。
しかし、相手が悪かったのだ。
ブリトーニャ様の嫁ぎ先をなんとしてでも確保したかったシュタイン国王は、ブリトーニャ様の持参金のひとつに、長年両国間で揉めていた領土問題を絡めた。
「国境にある、ダリアン島の所有権を今後一切主張しない。」
王妃殿下は2人の小娘を天秤にかけて、国益になる方の小娘を選んだ、それだけだった。
「国益」を前に公爵も王弟も沈黙するしかなかった。
…仕方ない。
国の安寧のために身を引く事、それもまた王に忠義を示すひとつの道…。
私の純潔なんか安いくらいだ。
この事を少しは悪いと思ってくれるのならば、伯爵家にも何かしらの施しはあるだろう。
そう思ったのに…。
「俺は、レイチェルに真の愛を乞うた。その身で他の女を妻にする気はさらさらない!!
レイチェルが俺の側を離れるなんて認めない!!」
肝心のステファン殿下だけが納得してはくれなかった。
この国で、一夫一妻制のこの国で、今の私の立場を肯定してくれる身分はない!
それなのに、私は城どころか、王太子殿下の居住区から出される事はなかった。
「お願いです。どうか私のことはご遠慮なく捨ててくださいませ。
真実の愛を疑うな、今後誰にも嫁ぐなと仰るなら修道院でもどこにでも参ります。」
涙ながらに願ってもステファン殿下は私を手放そうとはしては下さらなかった。
「…どうしてこうなっちゃったかなぁ。」
楽しそうなお茶会の様子を眺めながら、ため息をつく。
逆ならまだ良かったのに。
ブリトーニャ様と先に結婚して、その後に妾としてどこかでひっそりと愛でてくれたら良かったのだ。
そうしたら誰にも会わず、どこにも行かず、ただひたすらステファン殿下がやってくるのを待っていればいい。
そしていつか飽きられて打ち捨てられる、悲しいかもしれないけれど、それでも生きていける。
それならきっと日陰者と陰口を叩かれようとも耐えられた。
「レイチェル様、お茶のお時間です。」
侍女のエッタが私を呼びに来る。
そうか、もうそんな時間か。
「はい、わかりました。…あなたは下がって。」
「…申し訳ありません。」
エッタは表情をこわばらせつつも黙って部屋を出て行く。
だって、私のお茶を彼女に入れさせる訳にはいかないから。
部屋に戻り、湯を沸かすところから始めた。
煌びやかな色彩を放つ壺から茶葉をポットに2杯。
沸いたお湯を注ぎ入れて待つ。
王妃殿下に頂いた、私専用のブレンド茶だ。
「必ず日に3度飲むこと。決してステファンには飲ませないこと。」
ってさぁ、どういうお茶か想像つくってものでしょうに。
私の身に何かあれば、ステファン殿下が黙っていない。
その咎めは間違いなくエッタに向く。
エッタだって王妃殿下には逆らえないし、まして「王妃殿下に飲ませろ。」と言われましたとも言えないし。
だから自分で淹れて、誰にも触らせずに、言われた通りに飲み続ける。
今のところはどうやら避妊薬が入っているだけのようだ。
月のものが止まっただけで、吐き気もしなければ、血色が悪くなったわけでもない。
これはまだ許容範囲だろう。
ブリトーニャ様よりも先に身籠る訳にはいかない。
これ以上事態をややこしくしてはいけないのだから。
でも…。
いつ命に直結するものが混ぜられるかわかったもんじゃない。
それにいつまでも飲み続けても平気なものだとも思わない。
「今死ぬか、ひと月後に死ぬか、1年後に死ぬか…だわね、きっと。」
だったらいっそのこと、ひと思いに…。
そう思わないわけでもないのだけれど。
ステファン殿下は未だに私をお捨てにはならなさそうだ。
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