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ブリトーニャ
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私はクラリーチェ様預かりとなり、しばらく使われていない王女様の居住区の棟で過ごすことに決まり、すぐに移るようにと命じられた。
この話を私はサラというクラリーチェ様の侍女から聞かされ、更にサラはしばらく私の側にいる事にもなったそうだ。
要は見張りだろうけれど、そんなの構わない!
いやっほぉーー!やったっ!
私はステファン殿下が来られない場所に、あの部屋から堂々と出て行ける!
あ、嬉しい。
あーどうしよう、顔がニヤける。
「王女棟の部屋じゃ、俺、忍んでも会いにいけないじゃないか。」
「だからですよ、殿下。クラリーチェ様が決めたのですからどうか諦めてください。
サラとエルンスト殿下のやりとりを横目で見ながら、私は思う。
…来なくていいから。というか頼むから来ないで!と。
エルンスト殿下に忍ばれて来られたら、今度こそ私の首はクラリーチェ様によって刎ねられる。
いい加減わかってきた気がする。
エルンスト殿下はふざけた口調で周囲を煙に巻く、お調子者の気質がある。
エルンスト殿下にとってこのサラという女性はどうやら鬼門というか、うだつが上がらないというか。
エルンスト殿下の冗談は全く通じずにいた。
「仕方ない。必要な期間なんだろう。レイチェル行こうか、せめて俺に送らせて。」
諦めたエルンスト殿下が私のエスコートを申し出てくれる。
だから、お願いします、とエルンスト殿下の手を取った。
隔離される想い人を惜しむ立場を装い続けようとエルンスト殿下、最後の最後まで演技をし続けるつもりらしいから、それに合わせるだけだ。
エルンスト殿下と私は手を繋いで部屋を出た。
すると、
「これ、なあに?」
「さあ?」
侍女や侍従、警護の騎士…。
沢山の人が仕事の手を止めて、廊下の端で私達が通り過ぎるまで敬礼の姿勢を保って…。
何を言われるわけでもないけれど、私たちが通り過ぎるまで深々とお辞儀をしてくれる。
こんな事は今までなかった。
ステファン殿下と歩いている時でさえ。
「エルンスト殿下はいつも使用人達にこうさせているのですか?」
「まさか。やめてくれ。そんな不遜な趣味はない。」
奇妙な光景に、エルンスト殿下はいつもそうさせているのかと思ったが違った。
流石に違うか…。
「レイチェルにだよ。」
と、ボソリ、エルンスト殿下が耳打ちで教えてくれる。
「私に?まさか。」
信じられない、そんなことがあるわけがない。城で働く人はあの日以来私をいない者のように扱ってきたのだから。
「だからだよ。彼らだって人の心くらいはあるさ。
それに誰に忠誠を誓うか、誰に尽くすべきか、彼らなりに考えて出した答えだ。」
そんな事はあり得ない。ここにいる人は皆国に忠誠を誓った人ばかり、もちろん私もだ。
仕えるべきは国王陛下だ。
「まあ、そのうち解る。」
とエルンスト殿下は言うけれど、そんな日は来るとは思えなかった。
廊下の端に立つ人達の中に、ブリトーニャ様が立っていた。
ブリトーニャ様は私に気付くとツカツカとこちらに向かって歩いてきて、私の行先を遮るように止まる。
どうやら噂を聞きつけて、待ち構えていたらしい。
お見送りではないことは直ぐにわかった。
今一番会いたくない人が、鬼のような顔で私を睨みつけていた。
私はそっと視線を下げて膝を曲げた。そうする事で私の気持ちが伝わると良いな、と思って。
だけど、ブリトーニャ様は遠慮なく私を罵る事にしたらしい。
「本当に喰えない人ね、あなたは。節操のなさに驚きます。」
私は黙っていた。
今、何か喋ったら、心の奥底にある出してはいけない感情が溢れ出てしまいそうだったから。
代わりに?エルンスト殿下が応じてくれた。
「私が請い願ったのですよ、ブリトーニャ。」
「それこそ節操なしの証なのでは?ステファンに侍りながら、エルンストにも粉を撒いていたのですから。」
「そうではありませんよ。あなたが城にやってくるはるかに前から私の想いはひとつでしたので。
私の愛する人を侮辱するのは謹んで頂きましょう。」
ははは、っとブリトーニャ様は笑う。
私だってこんな状況じゃなければ、笑ってしまったかもしれない。
何が私の愛する人だ、そんな見えすいた演技が通用するとは思えない。
「何はともあれ、その負け犬の淫売の顔を見なくて済むのは喜ばしいことです。
せいぜい王妃殿下のご慈悲がある事を祈っていればいいわ。」
「忘れたとは言わせませんよ。レイチェルに負けて、先にスゴスゴと尻尾を巻いて国に逃げたのはブリトーニャ、あなたの方ではなかったか。
それにステファンが結婚するのはダリアン島だ。
あなたはそれにくっついてきた寄生虫に過ぎない。」
エルンスト殿下の嫌味が止まらない。
さすがにブリトーニャ様の表情が怖いくらいに怒りに震えている。
「エルンスト殿下!もう、おやめになって!」
一言われて十返している。もう十分だ。
これから王族としてお2人はステファン殿下と共に在らねばならない。
出て行く私のために2人がやりあう必要はない。
やめて、と言った私に対して、エルンスト殿下はとんでもない言葉を口に出した。
「ええ、そうしましょう。未来の国母殿下が仰ることでしたら。」
エルンスト殿下の一言が、私とそしておそらくブリトーニャ様をも凍り付かせた。
「…国母?」
コクボって…あの国母?まさか!
なんだか話が見えなくなっていませんか?
この話を私はサラというクラリーチェ様の侍女から聞かされ、更にサラはしばらく私の側にいる事にもなったそうだ。
要は見張りだろうけれど、そんなの構わない!
いやっほぉーー!やったっ!
私はステファン殿下が来られない場所に、あの部屋から堂々と出て行ける!
あ、嬉しい。
あーどうしよう、顔がニヤける。
「王女棟の部屋じゃ、俺、忍んでも会いにいけないじゃないか。」
「だからですよ、殿下。クラリーチェ様が決めたのですからどうか諦めてください。
サラとエルンスト殿下のやりとりを横目で見ながら、私は思う。
…来なくていいから。というか頼むから来ないで!と。
エルンスト殿下に忍ばれて来られたら、今度こそ私の首はクラリーチェ様によって刎ねられる。
いい加減わかってきた気がする。
エルンスト殿下はふざけた口調で周囲を煙に巻く、お調子者の気質がある。
エルンスト殿下にとってこのサラという女性はどうやら鬼門というか、うだつが上がらないというか。
エルンスト殿下の冗談は全く通じずにいた。
「仕方ない。必要な期間なんだろう。レイチェル行こうか、せめて俺に送らせて。」
諦めたエルンスト殿下が私のエスコートを申し出てくれる。
だから、お願いします、とエルンスト殿下の手を取った。
隔離される想い人を惜しむ立場を装い続けようとエルンスト殿下、最後の最後まで演技をし続けるつもりらしいから、それに合わせるだけだ。
エルンスト殿下と私は手を繋いで部屋を出た。
すると、
「これ、なあに?」
「さあ?」
侍女や侍従、警護の騎士…。
沢山の人が仕事の手を止めて、廊下の端で私達が通り過ぎるまで敬礼の姿勢を保って…。
何を言われるわけでもないけれど、私たちが通り過ぎるまで深々とお辞儀をしてくれる。
こんな事は今までなかった。
ステファン殿下と歩いている時でさえ。
「エルンスト殿下はいつも使用人達にこうさせているのですか?」
「まさか。やめてくれ。そんな不遜な趣味はない。」
奇妙な光景に、エルンスト殿下はいつもそうさせているのかと思ったが違った。
流石に違うか…。
「レイチェルにだよ。」
と、ボソリ、エルンスト殿下が耳打ちで教えてくれる。
「私に?まさか。」
信じられない、そんなことがあるわけがない。城で働く人はあの日以来私をいない者のように扱ってきたのだから。
「だからだよ。彼らだって人の心くらいはあるさ。
それに誰に忠誠を誓うか、誰に尽くすべきか、彼らなりに考えて出した答えだ。」
そんな事はあり得ない。ここにいる人は皆国に忠誠を誓った人ばかり、もちろん私もだ。
仕えるべきは国王陛下だ。
「まあ、そのうち解る。」
とエルンスト殿下は言うけれど、そんな日は来るとは思えなかった。
廊下の端に立つ人達の中に、ブリトーニャ様が立っていた。
ブリトーニャ様は私に気付くとツカツカとこちらに向かって歩いてきて、私の行先を遮るように止まる。
どうやら噂を聞きつけて、待ち構えていたらしい。
お見送りではないことは直ぐにわかった。
今一番会いたくない人が、鬼のような顔で私を睨みつけていた。
私はそっと視線を下げて膝を曲げた。そうする事で私の気持ちが伝わると良いな、と思って。
だけど、ブリトーニャ様は遠慮なく私を罵る事にしたらしい。
「本当に喰えない人ね、あなたは。節操のなさに驚きます。」
私は黙っていた。
今、何か喋ったら、心の奥底にある出してはいけない感情が溢れ出てしまいそうだったから。
代わりに?エルンスト殿下が応じてくれた。
「私が請い願ったのですよ、ブリトーニャ。」
「それこそ節操なしの証なのでは?ステファンに侍りながら、エルンストにも粉を撒いていたのですから。」
「そうではありませんよ。あなたが城にやってくるはるかに前から私の想いはひとつでしたので。
私の愛する人を侮辱するのは謹んで頂きましょう。」
ははは、っとブリトーニャ様は笑う。
私だってこんな状況じゃなければ、笑ってしまったかもしれない。
何が私の愛する人だ、そんな見えすいた演技が通用するとは思えない。
「何はともあれ、その負け犬の淫売の顔を見なくて済むのは喜ばしいことです。
せいぜい王妃殿下のご慈悲がある事を祈っていればいいわ。」
「忘れたとは言わせませんよ。レイチェルに負けて、先にスゴスゴと尻尾を巻いて国に逃げたのはブリトーニャ、あなたの方ではなかったか。
それにステファンが結婚するのはダリアン島だ。
あなたはそれにくっついてきた寄生虫に過ぎない。」
エルンスト殿下の嫌味が止まらない。
さすがにブリトーニャ様の表情が怖いくらいに怒りに震えている。
「エルンスト殿下!もう、おやめになって!」
一言われて十返している。もう十分だ。
これから王族としてお2人はステファン殿下と共に在らねばならない。
出て行く私のために2人がやりあう必要はない。
やめて、と言った私に対して、エルンスト殿下はとんでもない言葉を口に出した。
「ええ、そうしましょう。未来の国母殿下が仰ることでしたら。」
エルンスト殿下の一言が、私とそしておそらくブリトーニャ様をも凍り付かせた。
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