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誤算
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「カトリーナ様、お尋ねしたい事があるのですが。」
「何かしら?私にわかること?」
もうすぐ義母となるキッテンの王妃カトリーナ様に呼ばれたお茶の席で、私は思い切って、エルンスト殿下が去り際に言った「相談役」とは何か?と尋ねた。
白く細い指に絡め取られていた華奢なティーカップをカトリーナ様は静かに皿の上に戻して寛いでいた背中をしゃんと伸ばした。
これはカトリーナ様が義母から王妃に変わった印だ。
「キッテンの王族は基本は合議制なのよ。」
独裁者を出さない為に、全ての王の家族には必ず相談役がつく。王の家族がすることその全てに相談役となる王族の賛同が必要なの。
静かに王妃は私にそう言い渡した。
王妃の話によると、現在の王族は6名しかいない。私がステファンと結婚して7名、エルンストが結婚して8名になる。
「お義母様は王妃令を出せますわよね?」
「ええ、出せるわ。だけどそれには今だとステフか王弟の家族誰かの賛成がいるわね。
そうしないと独裁を阻止できなくなるから。」
「少なくなさすぎませんか?」
「多ければそれだけ意見が割れるわ。これくらいでちょうど良いのよ。」
王族が増え過ぎてもまたそれはそれで困るから、増え過ぎると政務には関わらないように準王族に格下げになる。
それでも特に問題は感じないとカトリーナ様は言う。カトリーナ様にはなんでも相談できるクラリーチェ様がいるから、だと。
「私にも相談役が付きますか?」
「ええ、付くわ。
しばらくは私の補佐としてついてもらう事になるから、クラリーチェが相談には乗ってくれると思うけど、そのうちちゃんと決めないととは思うわ。
まあ、おそらくエルンストの伴侶ね。だからこのままだとレイチェルよ。」
…レイチェル!そ、そんな、あの女狐が!?
私は困る、と言っても良いのだろうか?
「お義父様にはもうひとり弟殿下がいらっしゃいましたよね。」
「ええ、いるわ。だけど結婚離脱して準王族になったから。その妻も娘も準王族で法令には関わらないわね。」
「他に女性で相談役になっていただけそうな方は…。」
「いないわね。それに他の人だとステフとエルが納得しないわ、きっと。」
つまり。
私が将来王妃になって法令を出そうとすれば、エルンストかエルンストの伴侶の賛同が不可欠で。それはレイチェルになる。あのレイチェルが!!
しかも。
公爵の賛同もいる。
筆頭公爵家はクラリーチェ様の生家。
カトリーナ様のお兄様も公爵。
だけど、嫁に出た娘や妹の意向に逆らってまで私に賛同するとは思えない。
あとの公爵はアデリーナの生家とライナス公爵…。
クラリ、目眩がした。
エルンストの、
「レイチェルとは仲良くした方がいい。それが君のためだ。お飾りの王妃のままでいたくなければ。」という言葉が蘇った。
「政務の事はおいおいでいいわ。私達はまだ死ぬつもりはありませんから。」
とカトリーナ様は少し不機嫌さを滲ませられて、この話は打ち切られた。
クラリーチェ様にも同じことを聞いた。
答えは全く同じだった。
しかも、「そんなことを下調べしないで、ステファンに都合よく嫁ごうだなんて思ってなかったわよね。」
と含みあるニッコリ笑顔で言われた。
「そういうことを知ってもらうための婚約者選定の期間だった訳だし。
知らなかったなんて言わないわよね。」
とまで。
知る訳がない!だってステファンはいつもいつもあの女の側にいて、私には見向きもしてなかった…。婚約した後、結婚した後の話どころか、時折渋々といった表情を隠しもしないで最低限の会話をしてあの女の元へと去ってしまっていた。
「レイチェルとは仲良くした方がいい。それが君のためだ。お飾りの王妃のままでいたくなければ。」
「叔母も母もレイチェルに負い目がある事を忘れないで。」
今更…どうしろというのだろう。
どんなに大切な事でも、些細な事ですら、ステファンは私には何も話さないというのに。
「何かしら?私にわかること?」
もうすぐ義母となるキッテンの王妃カトリーナ様に呼ばれたお茶の席で、私は思い切って、エルンスト殿下が去り際に言った「相談役」とは何か?と尋ねた。
白く細い指に絡め取られていた華奢なティーカップをカトリーナ様は静かに皿の上に戻して寛いでいた背中をしゃんと伸ばした。
これはカトリーナ様が義母から王妃に変わった印だ。
「キッテンの王族は基本は合議制なのよ。」
独裁者を出さない為に、全ての王の家族には必ず相談役がつく。王の家族がすることその全てに相談役となる王族の賛同が必要なの。
静かに王妃は私にそう言い渡した。
王妃の話によると、現在の王族は6名しかいない。私がステファンと結婚して7名、エルンストが結婚して8名になる。
「お義母様は王妃令を出せますわよね?」
「ええ、出せるわ。だけどそれには今だとステフか王弟の家族誰かの賛成がいるわね。
そうしないと独裁を阻止できなくなるから。」
「少なくなさすぎませんか?」
「多ければそれだけ意見が割れるわ。これくらいでちょうど良いのよ。」
王族が増え過ぎてもまたそれはそれで困るから、増え過ぎると政務には関わらないように準王族に格下げになる。
それでも特に問題は感じないとカトリーナ様は言う。カトリーナ様にはなんでも相談できるクラリーチェ様がいるから、だと。
「私にも相談役が付きますか?」
「ええ、付くわ。
しばらくは私の補佐としてついてもらう事になるから、クラリーチェが相談には乗ってくれると思うけど、そのうちちゃんと決めないととは思うわ。
まあ、おそらくエルンストの伴侶ね。だからこのままだとレイチェルよ。」
…レイチェル!そ、そんな、あの女狐が!?
私は困る、と言っても良いのだろうか?
「お義父様にはもうひとり弟殿下がいらっしゃいましたよね。」
「ええ、いるわ。だけど結婚離脱して準王族になったから。その妻も娘も準王族で法令には関わらないわね。」
「他に女性で相談役になっていただけそうな方は…。」
「いないわね。それに他の人だとステフとエルが納得しないわ、きっと。」
つまり。
私が将来王妃になって法令を出そうとすれば、エルンストかエルンストの伴侶の賛同が不可欠で。それはレイチェルになる。あのレイチェルが!!
しかも。
公爵の賛同もいる。
筆頭公爵家はクラリーチェ様の生家。
カトリーナ様のお兄様も公爵。
だけど、嫁に出た娘や妹の意向に逆らってまで私に賛同するとは思えない。
あとの公爵はアデリーナの生家とライナス公爵…。
クラリ、目眩がした。
エルンストの、
「レイチェルとは仲良くした方がいい。それが君のためだ。お飾りの王妃のままでいたくなければ。」という言葉が蘇った。
「政務の事はおいおいでいいわ。私達はまだ死ぬつもりはありませんから。」
とカトリーナ様は少し不機嫌さを滲ませられて、この話は打ち切られた。
クラリーチェ様にも同じことを聞いた。
答えは全く同じだった。
しかも、「そんなことを下調べしないで、ステファンに都合よく嫁ごうだなんて思ってなかったわよね。」
と含みあるニッコリ笑顔で言われた。
「そういうことを知ってもらうための婚約者選定の期間だった訳だし。
知らなかったなんて言わないわよね。」
とまで。
知る訳がない!だってステファンはいつもいつもあの女の側にいて、私には見向きもしてなかった…。婚約した後、結婚した後の話どころか、時折渋々といった表情を隠しもしないで最低限の会話をしてあの女の元へと去ってしまっていた。
「レイチェルとは仲良くした方がいい。それが君のためだ。お飾りの王妃のままでいたくなければ。」
「叔母も母もレイチェルに負い目がある事を忘れないで。」
今更…どうしろというのだろう。
どんなに大切な事でも、些細な事ですら、ステファンは私には何も話さないというのに。
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