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悩み
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私が知ってるレイチェルは…。
誰が見てもステファンの心を掴んで離さないのに、アデリーナを利用して私なんて…と言いながら、大人しく控えめな女を演じていた。わかっているのにわかってないフリをするあざとい女そのものだった。
ステファンと結婚する気がないのなら、さっさと去れ!とも思っていた。
そのくせ、私が城に入っても出て行く気配はないし、ステファンを惑わせ続け、かといって私とのことをどうにかしようとするつもりもなかった。
一体コイツはなにがしたいんだ!?とずっと思っていた。
私の不幸の始まりは兄嫁との折り合いが悪かったことだ。
初めから胡散臭かった兄嫁。貞淑さを演じていた兄嫁は父が他界し、兄が即位した途端、その本性を剥き出しにした。
貴族達を悪戯に争わせ、浪費の限りを尽くし、それを諌めた私を煙たがり、兄を誑かして邪魔者を外国へ行かせようと企んだ。
しかし兄嫁の企みはそんな上手くは運ばなかった。
ステファンは私を無視し続け、ひたすらレイチェルに媚びていた。
レスボートの王太子も私を選ばなかった。
別に構わない、私に興味もない者に嫁いでも辛いだけだ。
だからシュタインに戻ったのに。
兄嫁は兄を誑かして、私がシュタインに帰ることを許してはくれなかった。
私を外国へ出すために領土まで付けてしまったため、私はもうシュタインには戻れない。
戻ってきたキッテンの城は既に針の筵となっていた。この針の筵に座り続けながら、キッテンの王妃とならねばならない。
そんな理不尽な事が許されて良いはずがないではないか!!
…この女がいなければ!この女がいる限り、ステファンも私も真の夫婦にはならない。
そう思った私がいつの間にか悪者扱いなのはなんでなんだ!?
夫となる人に違う想い人がいる、キッテンではそれは許される事なのだろうか?
あり得ない…!
レイチェルは旗色が悪くなると、素早くエルンストに乗り換え、クラリーチェ様の庇護を得ると、さっさと城から逃げ出した。
残された私とステファンはすっかり悪者にされた。
にも関わらず、私が王妃として立つためには、レイチェルに詫び、レイチェルに膝き、相談役になってくれるように懇願しなければならない、とまで言われ。
理不尽さに腑が煮えくり返った。
そして迎えた結婚式の日。
そこにステファンの相談役のエルンストの姿はなかった。
もちろん私の相談役も決まっていない。
エルンストは散々帰城命令を出したというのに、「婚約者と共にでなければ帰れない。」と、それを悉く無視し続けている。
帰らないではなく、帰れない。
帰りたくないではなく、帰れない。
レイチェルを相談役になんて冗談じゃない!!
皆、「全く仕方のない子達ね。」と笑って許してしまう。
ステファンでさえ笑っている。
「相談役が出ない結婚式では格式が足りない、と噂されていらっしゃるのはご存じ?」
とステファンに聞けば、
「知っている。しかし事実だから仕方がない。」
と全く気にもしていない。
歯痒いくらいにステファンは王太子のプライドがなかった。
しかも、
「レイチェルだなんてあり得ません!私を蔑ろにすれば兄が黙っていません。」
と凄んでみせても、
「シュタイン王の出した条件は、ブリトーニャと王族の結婚、それだけだ。約束は果たした。これより先は内政干渉に過ぎる、と抗議させていただこうか。」
と折れる様子はない。
相談役がいない私には公務の割り当てが出来ず、結果ステファンは悉く私を無視して、ひとりで社交も政務も勤めてしまう。
こんなはずじゃなかった!
私は王太子妃なのに、皆が私をそうとは扱わないままだ。
しばらくしてキッテン育ちの侍女達は全て義母によって引き上げられた。
私の周りにキッテンの貴族がいなくなると、キッテンの流行りや風習が全くわからなくなった。
「マナー知らずのダメ妃」
「シュタインが忘れられない妃」
周りの貴族達は悪びれる様子すら見せず、私を嘲笑うだけ。
当然、カテリーナ様に叱られ、クラリーチェ様に呆れられて。
「早くあなたには相談役をつけないとダメなのかしら…ねえ?」
「全く、エルンストは何をモタモタしてるのかしら…ねぇ?」
とおふたりで視線を合わせて…。
まだエルンスト殿下に婚約者がいなければ、準王族から召し上げる事も出来たらしい。
けれど、エルンストにはすでに婚約者がいる。
あのレイチェルを城に戻す。
それを私が希わなければならない。
…あり得ない。
誰が見てもステファンの心を掴んで離さないのに、アデリーナを利用して私なんて…と言いながら、大人しく控えめな女を演じていた。わかっているのにわかってないフリをするあざとい女そのものだった。
ステファンと結婚する気がないのなら、さっさと去れ!とも思っていた。
そのくせ、私が城に入っても出て行く気配はないし、ステファンを惑わせ続け、かといって私とのことをどうにかしようとするつもりもなかった。
一体コイツはなにがしたいんだ!?とずっと思っていた。
私の不幸の始まりは兄嫁との折り合いが悪かったことだ。
初めから胡散臭かった兄嫁。貞淑さを演じていた兄嫁は父が他界し、兄が即位した途端、その本性を剥き出しにした。
貴族達を悪戯に争わせ、浪費の限りを尽くし、それを諌めた私を煙たがり、兄を誑かして邪魔者を外国へ行かせようと企んだ。
しかし兄嫁の企みはそんな上手くは運ばなかった。
ステファンは私を無視し続け、ひたすらレイチェルに媚びていた。
レスボートの王太子も私を選ばなかった。
別に構わない、私に興味もない者に嫁いでも辛いだけだ。
だからシュタインに戻ったのに。
兄嫁は兄を誑かして、私がシュタインに帰ることを許してはくれなかった。
私を外国へ出すために領土まで付けてしまったため、私はもうシュタインには戻れない。
戻ってきたキッテンの城は既に針の筵となっていた。この針の筵に座り続けながら、キッテンの王妃とならねばならない。
そんな理不尽な事が許されて良いはずがないではないか!!
…この女がいなければ!この女がいる限り、ステファンも私も真の夫婦にはならない。
そう思った私がいつの間にか悪者扱いなのはなんでなんだ!?
夫となる人に違う想い人がいる、キッテンではそれは許される事なのだろうか?
あり得ない…!
レイチェルは旗色が悪くなると、素早くエルンストに乗り換え、クラリーチェ様の庇護を得ると、さっさと城から逃げ出した。
残された私とステファンはすっかり悪者にされた。
にも関わらず、私が王妃として立つためには、レイチェルに詫び、レイチェルに膝き、相談役になってくれるように懇願しなければならない、とまで言われ。
理不尽さに腑が煮えくり返った。
そして迎えた結婚式の日。
そこにステファンの相談役のエルンストの姿はなかった。
もちろん私の相談役も決まっていない。
エルンストは散々帰城命令を出したというのに、「婚約者と共にでなければ帰れない。」と、それを悉く無視し続けている。
帰らないではなく、帰れない。
帰りたくないではなく、帰れない。
レイチェルを相談役になんて冗談じゃない!!
皆、「全く仕方のない子達ね。」と笑って許してしまう。
ステファンでさえ笑っている。
「相談役が出ない結婚式では格式が足りない、と噂されていらっしゃるのはご存じ?」
とステファンに聞けば、
「知っている。しかし事実だから仕方がない。」
と全く気にもしていない。
歯痒いくらいにステファンは王太子のプライドがなかった。
しかも、
「レイチェルだなんてあり得ません!私を蔑ろにすれば兄が黙っていません。」
と凄んでみせても、
「シュタイン王の出した条件は、ブリトーニャと王族の結婚、それだけだ。約束は果たした。これより先は内政干渉に過ぎる、と抗議させていただこうか。」
と折れる様子はない。
相談役がいない私には公務の割り当てが出来ず、結果ステファンは悉く私を無視して、ひとりで社交も政務も勤めてしまう。
こんなはずじゃなかった!
私は王太子妃なのに、皆が私をそうとは扱わないままだ。
しばらくしてキッテン育ちの侍女達は全て義母によって引き上げられた。
私の周りにキッテンの貴族がいなくなると、キッテンの流行りや風習が全くわからなくなった。
「マナー知らずのダメ妃」
「シュタインが忘れられない妃」
周りの貴族達は悪びれる様子すら見せず、私を嘲笑うだけ。
当然、カテリーナ様に叱られ、クラリーチェ様に呆れられて。
「早くあなたには相談役をつけないとダメなのかしら…ねえ?」
「全く、エルンストは何をモタモタしてるのかしら…ねぇ?」
とおふたりで視線を合わせて…。
まだエルンスト殿下に婚約者がいなければ、準王族から召し上げる事も出来たらしい。
けれど、エルンストにはすでに婚約者がいる。
あのレイチェルを城に戻す。
それを私が希わなければならない。
…あり得ない。
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