修道院に行きたいんです

枝豆

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朝の風景

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朝、目覚めると、その横にいつぞや見た光景が広がっている。

窓から差し込む朝陽の中で、輝く白い頬と流れる長い髪が醸し出す幻想的な美しい景色。
悲しいほど美しかったあの光景は、眩いほどに美しいものへと様変わりした。
俺が最も幸せを感じる時間。

「お目覚めですか?」
ゼットンが静かに声を掛ける。
俺は掛布を手繰り寄せて、レーチェをすっぽりと覆い隠してから、ゼットンに入室の許可を出した。

「ステファン殿下が控えの間でお待ちになっております。」

前はノックもせずに入ってくる事さえあったステフ。今は決してそんな事はしない。
唯一と言っていい、俺達の中で変わってしまった習慣のひとつ。

「…わかった。着替えるからもう少し待って貰ってくれ。」
至福は僅かな時間で終わりを告げた。


「おはよう、朝からすまないな。これに署名をお願いしたいのだが。」
ステフが差し出したのは王太子令の勅令の書類だった。
それはさして重要だとは思えない、些細な城の内向きの内容だった。
…ブリトーニャがやらなければならない事である。

「それは構わないけど。また徹夜したのか?」
「いや、寝たよ。これが気になって早く起きただけ。」
「…いつか身体を壊す。ちゃんと睡眠は取れよ。」
「ああ、そのうちな。」

言われるままサラサラと名前を書いて書類を戻す。

「朝飯くらい一緒に食わないか?」
「いや、まだしなくてはならない事が残っている。」

俺が誘ったのは晩餐ではなく朝食なのに。ステフはまるで一日中働いた後のような言い回しで、俺の誘いを断り去っていった。

「おはよう、エル。」
寝室の扉からレーチェがひょっこりと現れた。
「ステファン殿下がお見えになっていたと聞いたの。…また徹夜されたの?」
「いいや、早起きしたんだそうだ。」

そう答えるとレーチェの表情が曇る。
「お身体が心配だわ。あんなに働くのはブリトーニャ様の分も抱えていらっしゃるからよね。やっぱり私からブリトーニャ様に面会をお願いした方がいいのかしら?」
「それはカトリーナ殿下に止められているだろう?」
「そうだけど…。心配だもの。」
「2人の問題だ。」
そうだけど…と物憂げにステフが出て行った扉を、レーチェは見つめてため息をついた。

父と陛下は本格的に俺達2人の後継ぎ教育を始めた。2人は容赦なくステファンに仕事を振り分け、当然それを補佐する俺にもそれは回ってくる。

一方で、王妃と母はブリトーニャを排除したままでいる。
王太子妃が担うはずの政務はそのほとんどをステファンが肩代わりしている状態だ。

王太子の務め、国王からの教育的課題、王太子妃の代行、3つの服を着させられたステファンには全く心が休まる暇がない。
睡眠も食事もそこそこに仕事をこなし続ける毎日だ。
そこを癒すはずの妻ともうまくいっている様子は見られない。

「王太子妃の仕事はレイチェルに回しても良いんじゃないか?」
と言ってみたが、
「それをしてしまえば、ブリトーニャがいなくても政務が回る事を証明してしまう。そうなれば全てが終わる気がするから。」
と頑なに拒んでいる。

まあ、レーチェと仲良く2人で仕事をされてもなぁ…。
きっとその光景を目にしたら、飲み込んだはずの感情が腹から湧き出てくるだろう。
それもあって、ステフはレーチェには仕事を回さない。

…なんとかしないとな。

どうしたらいいかわからないけれど。
母たちいわく、次に札を切る番はブリトーニャだから、だそうだ。
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