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教会に行きたいんです(終)
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私達4人は合議を図るために日に一度は4人で顔を合わせる。
朝のお茶だったり、昼食だったり、寝る前の晩酌だったり…色々だ。
今、ステファン殿下がエルンストを説得しようと試みている。
私達が城に戻ってきてから、度々試みているこの案件は、エルンストの許可が降りずになかなか実現しない。
「もう大丈夫だろう。」
「嫌だ!」
「ずっとこのままって訳にはいかないだろう!」
「い・や・だ!」
駄々っ子の夫とそれを宥める父親のようなステファン殿下。
2人の力関係はドッカリとここに落ち着いた。普段は双子のように意見が合うおふたりなんだけど、政務の細々とした件から大きな政策まで、一旦何かが引っかかるとエルは絶対にゴーサインは出さないし、エルを納得させるためにステファン殿下は必死で策を練り直し、必死でエルを説得していく。
「あの…エル?どうしても…ダメ?」
エルを上目遣いで見上げて、もう一度私からもお願いしてみたんだけど。
「ダ・メ!」
とニベもない…。
諦めちゃダメ!
「あのね…。」
「聞きたくない!ダメなものはダメだし!嫌なものは嫌だ!」
エルはプイっと横を向いてしまう始末…。
エルが嫌がっているのは、ある慈善活動だった。
もちろん王族としても公爵としてもエルは慈善活動を疎かにはしてはいない。
寄付金の額は王族費だけで暮らしているステファン殿下をはるかに凌いではいる。
いるんだけれど…。
頑なに拒んでいるのは…。
エルは私が望めば病院や学校への奉仕活動は喜んで行かせるのに、教会や修道院への奉仕活動は絶対にさせない!と息巻いている。
理由はわからなくもないんだけど…。
困っちゃったなぁ…。
「もういい加減諦めたら?」
トーニャが援護してくれた言葉にもエルが返したのは睨みつける視線だけ。
「レーチェ、あなたまだ修道院に行きたいと思ってる?」
「まさか!」
あっ、でも…。
行きたいは行きたいかも…。だって…。
でもこれはエルには絶対に許しては貰えない気がする。
だから…言わない。
「でしょう?
もう過去の笑い話でしかないと思うんだけれど。レーチェは夫に甘すぎるのよ!」
「でも…嫌だと言うなら仕方ないわ。無理を通すつもりはないの。エルなりの理由があるんだと思うから。
トーニャ、またお願いできる?
子供達のためにお菓子を焼くから、それを持って行って。」
教会や修道院に行かせてもらえない私は、そこにいる人たちのために、お菓子を焼いたり小物を製作して贈ることくらいしかできない。
バザーで売って貰えたら、施設の生活をほんの少し豊かにしたり、贅沢を取り上げられた人たちの生活に潤いになってくれたら…って思うから。
でもそれを直接渡せないのが少し悲しいかな。
いつも、トーニャに託して、トーニャから渡して貰ってる。
「ええ、それは構わないけど…。子供達は残念がるわね。」
「…ね、一度くらい会ってみたいわ。」
今回どうしても教会に行きたいのは子供達が歌を歌うからなんだけど。
「いつも美味しいお菓子をくれるレイチェル様にもどうしても聞いてもらいたいの。」
という可愛らしいささやかなお誘いがあったら、どうしても行きたいと思うものだとは思うんだけど。
だから、ステファン殿下にお願いして、エルを説得してもらおうと思ったのに…。
「ねえ、エル…。」
「ダメだ!」
はあ、人の話を聞きもしないんだから!!
「あーあ、せっかく2人仲良く手を繋いで教会デート出来るって楽しみにしてたのに。まだ袖を通していない礼拝服をエルにお披露目したいって言ってたのに。
全く残念だわね、レーチェ。」
トーニャの言葉を聞いてピタっとエルの動きと表情が固まった。
それを見て絶句しちゃう。
まさか?ねえ、まさか?そうなの?
それで気持ちが動いちゃうの!?
「行きましょう、エル。一緒に。」
恐る恐るお伺いを立ててみた。
真っ直ぐにエルを睨みつけるように見つめる。
「エルと手を繋いで、エルと真っ直ぐに行って、必ずエルと一緒に帰るから。
ねえ、お願い。」
きっとうんと言ってくれるって、私は信じてる。
朝のお茶だったり、昼食だったり、寝る前の晩酌だったり…色々だ。
今、ステファン殿下がエルンストを説得しようと試みている。
私達が城に戻ってきてから、度々試みているこの案件は、エルンストの許可が降りずになかなか実現しない。
「もう大丈夫だろう。」
「嫌だ!」
「ずっとこのままって訳にはいかないだろう!」
「い・や・だ!」
駄々っ子の夫とそれを宥める父親のようなステファン殿下。
2人の力関係はドッカリとここに落ち着いた。普段は双子のように意見が合うおふたりなんだけど、政務の細々とした件から大きな政策まで、一旦何かが引っかかるとエルは絶対にゴーサインは出さないし、エルを納得させるためにステファン殿下は必死で策を練り直し、必死でエルを説得していく。
「あの…エル?どうしても…ダメ?」
エルを上目遣いで見上げて、もう一度私からもお願いしてみたんだけど。
「ダ・メ!」
とニベもない…。
諦めちゃダメ!
「あのね…。」
「聞きたくない!ダメなものはダメだし!嫌なものは嫌だ!」
エルはプイっと横を向いてしまう始末…。
エルが嫌がっているのは、ある慈善活動だった。
もちろん王族としても公爵としてもエルは慈善活動を疎かにはしてはいない。
寄付金の額は王族費だけで暮らしているステファン殿下をはるかに凌いではいる。
いるんだけれど…。
頑なに拒んでいるのは…。
エルは私が望めば病院や学校への奉仕活動は喜んで行かせるのに、教会や修道院への奉仕活動は絶対にさせない!と息巻いている。
理由はわからなくもないんだけど…。
困っちゃったなぁ…。
「もういい加減諦めたら?」
トーニャが援護してくれた言葉にもエルが返したのは睨みつける視線だけ。
「レーチェ、あなたまだ修道院に行きたいと思ってる?」
「まさか!」
あっ、でも…。
行きたいは行きたいかも…。だって…。
でもこれはエルには絶対に許しては貰えない気がする。
だから…言わない。
「でしょう?
もう過去の笑い話でしかないと思うんだけれど。レーチェは夫に甘すぎるのよ!」
「でも…嫌だと言うなら仕方ないわ。無理を通すつもりはないの。エルなりの理由があるんだと思うから。
トーニャ、またお願いできる?
子供達のためにお菓子を焼くから、それを持って行って。」
教会や修道院に行かせてもらえない私は、そこにいる人たちのために、お菓子を焼いたり小物を製作して贈ることくらいしかできない。
バザーで売って貰えたら、施設の生活をほんの少し豊かにしたり、贅沢を取り上げられた人たちの生活に潤いになってくれたら…って思うから。
でもそれを直接渡せないのが少し悲しいかな。
いつも、トーニャに託して、トーニャから渡して貰ってる。
「ええ、それは構わないけど…。子供達は残念がるわね。」
「…ね、一度くらい会ってみたいわ。」
今回どうしても教会に行きたいのは子供達が歌を歌うからなんだけど。
「いつも美味しいお菓子をくれるレイチェル様にもどうしても聞いてもらいたいの。」
という可愛らしいささやかなお誘いがあったら、どうしても行きたいと思うものだとは思うんだけど。
だから、ステファン殿下にお願いして、エルを説得してもらおうと思ったのに…。
「ねえ、エル…。」
「ダメだ!」
はあ、人の話を聞きもしないんだから!!
「あーあ、せっかく2人仲良く手を繋いで教会デート出来るって楽しみにしてたのに。まだ袖を通していない礼拝服をエルにお披露目したいって言ってたのに。
全く残念だわね、レーチェ。」
トーニャの言葉を聞いてピタっとエルの動きと表情が固まった。
それを見て絶句しちゃう。
まさか?ねえ、まさか?そうなの?
それで気持ちが動いちゃうの!?
「行きましょう、エル。一緒に。」
恐る恐るお伺いを立ててみた。
真っ直ぐにエルを睨みつけるように見つめる。
「エルと手を繋いで、エルと真っ直ぐに行って、必ずエルと一緒に帰るから。
ねえ、お願い。」
きっとうんと言ってくれるって、私は信じてる。
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