28 / 100
お出かけ2
しおりを挟む
私はすぐに牛乳屋のお爺さんに見つかった。
見つかったのだけれど、一瞬飛び出るかと思うくらいに大きく目を見開いたお爺さんはすぐに柔和な笑みを浮かべて、口元に指を一本立てて、ウィンクしてくれた。
そして引き上げた空のミルク缶で私を隠してくれたのだ。
お屋敷の門を出て、すぐに荷台から御者台へと移してくれた。
「…懐かしいなぁ。若奥様を思い出すよ。」
「若奥様?クラリーチェ様の事ですか?」
うん、そうだよ、とお爺さんはかつての思い出を語ってくれた。
やっぱりこの服はクラリーチェ様のお忍び用の服で間違いなさそう。
「街の視察とかそれらしいこと言ってたけどな、ありゃただのお忍びでの遊興だったな。今のあんたみたいな服を着て、時々俺のことをコッソリ待っていたもんだよ。
元々、結構気ままに街歩きをされていらっしゃったらしいんだが、ブルーノ様とご結婚されてからは流石になかなか…なぁ。
…頼むから、約束しとくれ。絶対に無茶はしねぇって。
クラリーチェ様もエルンスト様もとっても優しいいいお方だ。
あんたがあの方々にとってなんなんだかはよくわかんねぇが、きっとあんたを大切に思ってる。訳があって気ままに外には出せねぇんだ。
ワシが配達をしてる間だけの少しだけだ。
昼の教会の鐘が鳴ったら、ワシとお屋敷に戻る。
それでいいんなら、このまま街へ連れてってやる。でなきゃこのままお屋敷に戻る。
…どうする?あんた次第だ。」
…驚いた。
てっきり面倒ごとはゴメンだと引きずり降ろされると思っていた。
でもこのお爺さんは、クラリーチェ様に信用されてて、お爺さんもクラリーチェ様やエルンスト殿下を信頼してる。
こういってはなんだけど、出入りの業者に過ぎないお爺さんなのに…。
ライナス公爵家との絆を感じた。
…裏切っちゃいけない、そんな気がした。
「教会に行きたいだけなんです。行って子祭様にひと目お会いしてお願いしたい事があるんです。
…だから、お約束します。必ず戻りますし、無茶なことはしません。」
そうか、わかった、とお爺さんは頷いてくれた。
「じゃあ、教会の少し手前で降ろしてあげる。広場を突っ切ったら教会だ。んで、鐘が鳴ったらそこに戻る、いいね。」
「はいっ、ありがとうございます。」
お爺さんはワザとメインの大通りではなくその一本脇の小道を通って、広場まであと少し馬車が入れるギリギリのところで私を降ろしてくれた。
「あの家とあの店の間を真っ直ぐ行けば教会前の広場に出るから、じゃあ後で。」
とヒラヒラと手を振ってくれる。
「ありがとうございました。」
とお礼を言ってから、馬車を見送った。
さて、っと。
気を入れ直して辺りを見まわす。
あの家とあの店の間…を目指して歩き出す。
小さな通りといっても、メインの広場へ抜けられる道はそれなりの賑わいだった。
寄進用の花を店先に並べた花屋、買い求めやすいように既に束ねられて、値段に分けて並べられていた。
その隣は本屋、経典や聖者の偉業を元にして書かれた絵本が並んでいる。
その反対側は神具やロザリオを扱っていて、どうやらこの通りは教会に集まる人の為のお店が並んでいる通りだ。
おそらくだけど、あえて治安の良い場所で降ろしてくれたんだろう。
教会へ行く人がそんなに酷い事はしないだろうと。
その事に気付くと、またさらにお爺さんへの感謝の気持ちが湧いて心が温まる。
ムフフフ、楽しい。
久しぶりの外出で、人々の喧騒に囲まれて…楽しい。
後は、教会に行って、子祭様に会って…。
頭の中はこれからの計画でいっぱいになっていた。
だから、気付く事ができなかった。
それは、広場に入った時だった。
「見つけた!」
「いましたー!」
えっ!?
気付いたら、私は既に囲まれてしまっていた。
「あ、あのー。」
みた事がある人達ばかりだ。
私を取り囲んだのは、ライナス公爵家で働いている人達で…。
その人を割って私の前にヌッと現れたのは、エルンスト殿下その人だった。
えっ!?もう見つかったの!?早くない!?
忙しいって言っていたのに、わざわざエルンスト殿下自ら私を探しに来た?
「レーチェ、こんなところで何をしている。
帰るぞ。」
有無を言わさずに抱き抱えられて…私は馬車の中に放り込まれた。
「殿下…どうして?」
「何が?」
「いえ、なんでも…。申し訳ありませんでした。」
私はお爺さんの言葉を思い出していた。
…きっとあんたを大切に思ってる。訳があって気ままに外には出せねぇんだ。
どんな訳なんだろう…?
こんなに慌てて探しにくるくらいなんだから、きっとなにか深い理由があるに違いない。
そして…その理由はきっと聞いちゃいけないんだろう。
迷惑を掛けてしまったんだ。
…勝手に外に出たのは間違いだったんだろう。
手を煩わせてしまった…ごめんなさい。
見つかったのだけれど、一瞬飛び出るかと思うくらいに大きく目を見開いたお爺さんはすぐに柔和な笑みを浮かべて、口元に指を一本立てて、ウィンクしてくれた。
そして引き上げた空のミルク缶で私を隠してくれたのだ。
お屋敷の門を出て、すぐに荷台から御者台へと移してくれた。
「…懐かしいなぁ。若奥様を思い出すよ。」
「若奥様?クラリーチェ様の事ですか?」
うん、そうだよ、とお爺さんはかつての思い出を語ってくれた。
やっぱりこの服はクラリーチェ様のお忍び用の服で間違いなさそう。
「街の視察とかそれらしいこと言ってたけどな、ありゃただのお忍びでの遊興だったな。今のあんたみたいな服を着て、時々俺のことをコッソリ待っていたもんだよ。
元々、結構気ままに街歩きをされていらっしゃったらしいんだが、ブルーノ様とご結婚されてからは流石になかなか…なぁ。
…頼むから、約束しとくれ。絶対に無茶はしねぇって。
クラリーチェ様もエルンスト様もとっても優しいいいお方だ。
あんたがあの方々にとってなんなんだかはよくわかんねぇが、きっとあんたを大切に思ってる。訳があって気ままに外には出せねぇんだ。
ワシが配達をしてる間だけの少しだけだ。
昼の教会の鐘が鳴ったら、ワシとお屋敷に戻る。
それでいいんなら、このまま街へ連れてってやる。でなきゃこのままお屋敷に戻る。
…どうする?あんた次第だ。」
…驚いた。
てっきり面倒ごとはゴメンだと引きずり降ろされると思っていた。
でもこのお爺さんは、クラリーチェ様に信用されてて、お爺さんもクラリーチェ様やエルンスト殿下を信頼してる。
こういってはなんだけど、出入りの業者に過ぎないお爺さんなのに…。
ライナス公爵家との絆を感じた。
…裏切っちゃいけない、そんな気がした。
「教会に行きたいだけなんです。行って子祭様にひと目お会いしてお願いしたい事があるんです。
…だから、お約束します。必ず戻りますし、無茶なことはしません。」
そうか、わかった、とお爺さんは頷いてくれた。
「じゃあ、教会の少し手前で降ろしてあげる。広場を突っ切ったら教会だ。んで、鐘が鳴ったらそこに戻る、いいね。」
「はいっ、ありがとうございます。」
お爺さんはワザとメインの大通りではなくその一本脇の小道を通って、広場まであと少し馬車が入れるギリギリのところで私を降ろしてくれた。
「あの家とあの店の間を真っ直ぐ行けば教会前の広場に出るから、じゃあ後で。」
とヒラヒラと手を振ってくれる。
「ありがとうございました。」
とお礼を言ってから、馬車を見送った。
さて、っと。
気を入れ直して辺りを見まわす。
あの家とあの店の間…を目指して歩き出す。
小さな通りといっても、メインの広場へ抜けられる道はそれなりの賑わいだった。
寄進用の花を店先に並べた花屋、買い求めやすいように既に束ねられて、値段に分けて並べられていた。
その隣は本屋、経典や聖者の偉業を元にして書かれた絵本が並んでいる。
その反対側は神具やロザリオを扱っていて、どうやらこの通りは教会に集まる人の為のお店が並んでいる通りだ。
おそらくだけど、あえて治安の良い場所で降ろしてくれたんだろう。
教会へ行く人がそんなに酷い事はしないだろうと。
その事に気付くと、またさらにお爺さんへの感謝の気持ちが湧いて心が温まる。
ムフフフ、楽しい。
久しぶりの外出で、人々の喧騒に囲まれて…楽しい。
後は、教会に行って、子祭様に会って…。
頭の中はこれからの計画でいっぱいになっていた。
だから、気付く事ができなかった。
それは、広場に入った時だった。
「見つけた!」
「いましたー!」
えっ!?
気付いたら、私は既に囲まれてしまっていた。
「あ、あのー。」
みた事がある人達ばかりだ。
私を取り囲んだのは、ライナス公爵家で働いている人達で…。
その人を割って私の前にヌッと現れたのは、エルンスト殿下その人だった。
えっ!?もう見つかったの!?早くない!?
忙しいって言っていたのに、わざわざエルンスト殿下自ら私を探しに来た?
「レーチェ、こんなところで何をしている。
帰るぞ。」
有無を言わさずに抱き抱えられて…私は馬車の中に放り込まれた。
「殿下…どうして?」
「何が?」
「いえ、なんでも…。申し訳ありませんでした。」
私はお爺さんの言葉を思い出していた。
…きっとあんたを大切に思ってる。訳があって気ままに外には出せねぇんだ。
どんな訳なんだろう…?
こんなに慌てて探しにくるくらいなんだから、きっとなにか深い理由があるに違いない。
そして…その理由はきっと聞いちゃいけないんだろう。
迷惑を掛けてしまったんだ。
…勝手に外に出たのは間違いだったんだろう。
手を煩わせてしまった…ごめんなさい。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる