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召喚状
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私の執務室の机の上には2枚の召喚状が載っていた。
1枚目は城に戻る前、ライナス公爵領に届けられたもの。
王室が使う最上級の白い用紙に金の飾り枠が施されたこの召喚状を眺めると、その時の気持ちがありありとレイチェルの脳裏に蘇った。
「…召喚状?」
エルンスト殿下から渡された召喚状。
その差出人は国王陛下で、私を王太子妃の相談役に任命し、公務の一部を分け与えると書かれていた。
肝心のブリトーニャ様から添えられた手紙のようなものはなく、その真意は全くわからない。
渋々なのか、納得されたのか。
署名すらないという事は…そういう事なのだろうか?
ただ、エルンスト殿下は他に王族がいないから受けるしかないと言う。
「本当に私で宜しいのでしょうか…。」
ブリトーニャ様の相談役、務められるとは思えなかった。
身近な例はカトリーナ様とクラリーチェ様だけだからこそ、私には不安しかない。
カトリーナ様とクラリーチェ様はとても仲がよろしくて、些細な事から大きな事までなんでも包み隠さずに話し合われると聞いていた。
あの日もそうだった。
これから王妃殿下に話して来なければなりませんと部屋を出ていかれたクラリーチェ様を思い出す。
私達にあのような関係になれとでも?
無理だ…。
「あの、お断りは…」
「出来ない。見て。」
エルンスト殿下に指で示されたのは、私を相談薬にすることを認めた面々の署名だった。
命じたのは、カルロ・グレーナル・キングス・キッテン国王陛下。
その下にそれを認めた王族や公爵の名前がズラズラと並んでいる。
国王妃カトリーナ・ベリーズ・グレーナル・クィーンズ・キッテン
王太子ステファン・グレーナル・クラウンプリンス・キッテン
大公ブルーノ・ライナス・プリンス・キッテン
大公妃クラリーチェ・グレーデン・ライナス・プリンセス・キッテン
王族の意志を尊重し認めるという旨のグレーデン筆頭公爵の署名もアデリーナ様のお父様のグレイシア公爵の署名もある。
「確かに…。これではお断りは出来なさそうですね。」
流石にブリトーニャ様も断れなかったのだろうと察した。
合議制を図るキッテンの王族。この面子の署名を見てはレイチェルは受けるしかなかった。
しかし城に戻ってもブリトーニャ様からの呼び出しは全くなかった。
「大丈夫よ、直ぐに変わるから。」
クラリーチェ様はそう仰ったけれど…。何かが変わるようにも思えなかった。
そのうちに風の噂でステファン殿下とブリトーニャ様の関係が思わしくない事を知り、その原因が私との確執であるとも知った。
…このままじゃいけない。
そう思うのに謁見は叶わなかった。カトリーナ様ともブリトーニャ様とも。
クラリーチェ様は「放っておきなさい。まず動くのはブリトーニャの方よ。」と全く譲らなかった。
そして…。待ちきれずに断行したブリトーニャ様とエルンスト殿下とステファン殿下と…4人で筏でお酒を飲んだ翌日。
レイチェルに2枚目の召喚状が届けられた。
文言はさほど変わりがない。
むしろこちらの方が簡素かもしれない。
署名はブリトーニャ様の他はたった2名。
ステファン殿下とカトリーナ様のお兄様のベリーズ公爵の署名だった。
「ブリトーニャ・シュタイン・グレーナル・クラウンプリンセス・キッテンはレイチェル・フィリア・ライナス・プリンセス・キッテンが、私の過去の過ちを許し、私の良き相談役としての任を引き受けて下さることを心より請願致します。」
最後に足されていた一文が涙で滲んで見えなくなった。
「命令してってお願いしたのに…。」
おそらく公式にはなんの意味もない召喚状なのだろう。
私は既に国王令によるブリトーニャ様の相談役だったのだから。何も変わらない。前から相談役でこれからも相談役である事に変わりはない。
だからこそ、あえての2枚目の召喚状には重たい意味が込められている事に気付けない程には愚かではない。
私は2枚の召喚状を重ねて大切にファイルに挟んで、引き出しに仕舞い込んだ。
1枚目は城に戻る前、ライナス公爵領に届けられたもの。
王室が使う最上級の白い用紙に金の飾り枠が施されたこの召喚状を眺めると、その時の気持ちがありありとレイチェルの脳裏に蘇った。
「…召喚状?」
エルンスト殿下から渡された召喚状。
その差出人は国王陛下で、私を王太子妃の相談役に任命し、公務の一部を分け与えると書かれていた。
肝心のブリトーニャ様から添えられた手紙のようなものはなく、その真意は全くわからない。
渋々なのか、納得されたのか。
署名すらないという事は…そういう事なのだろうか?
ただ、エルンスト殿下は他に王族がいないから受けるしかないと言う。
「本当に私で宜しいのでしょうか…。」
ブリトーニャ様の相談役、務められるとは思えなかった。
身近な例はカトリーナ様とクラリーチェ様だけだからこそ、私には不安しかない。
カトリーナ様とクラリーチェ様はとても仲がよろしくて、些細な事から大きな事までなんでも包み隠さずに話し合われると聞いていた。
あの日もそうだった。
これから王妃殿下に話して来なければなりませんと部屋を出ていかれたクラリーチェ様を思い出す。
私達にあのような関係になれとでも?
無理だ…。
「あの、お断りは…」
「出来ない。見て。」
エルンスト殿下に指で示されたのは、私を相談薬にすることを認めた面々の署名だった。
命じたのは、カルロ・グレーナル・キングス・キッテン国王陛下。
その下にそれを認めた王族や公爵の名前がズラズラと並んでいる。
国王妃カトリーナ・ベリーズ・グレーナル・クィーンズ・キッテン
王太子ステファン・グレーナル・クラウンプリンス・キッテン
大公ブルーノ・ライナス・プリンス・キッテン
大公妃クラリーチェ・グレーデン・ライナス・プリンセス・キッテン
王族の意志を尊重し認めるという旨のグレーデン筆頭公爵の署名もアデリーナ様のお父様のグレイシア公爵の署名もある。
「確かに…。これではお断りは出来なさそうですね。」
流石にブリトーニャ様も断れなかったのだろうと察した。
合議制を図るキッテンの王族。この面子の署名を見てはレイチェルは受けるしかなかった。
しかし城に戻ってもブリトーニャ様からの呼び出しは全くなかった。
「大丈夫よ、直ぐに変わるから。」
クラリーチェ様はそう仰ったけれど…。何かが変わるようにも思えなかった。
そのうちに風の噂でステファン殿下とブリトーニャ様の関係が思わしくない事を知り、その原因が私との確執であるとも知った。
…このままじゃいけない。
そう思うのに謁見は叶わなかった。カトリーナ様ともブリトーニャ様とも。
クラリーチェ様は「放っておきなさい。まず動くのはブリトーニャの方よ。」と全く譲らなかった。
そして…。待ちきれずに断行したブリトーニャ様とエルンスト殿下とステファン殿下と…4人で筏でお酒を飲んだ翌日。
レイチェルに2枚目の召喚状が届けられた。
文言はさほど変わりがない。
むしろこちらの方が簡素かもしれない。
署名はブリトーニャ様の他はたった2名。
ステファン殿下とカトリーナ様のお兄様のベリーズ公爵の署名だった。
「ブリトーニャ・シュタイン・グレーナル・クラウンプリンセス・キッテンはレイチェル・フィリア・ライナス・プリンセス・キッテンが、私の過去の過ちを許し、私の良き相談役としての任を引き受けて下さることを心より請願致します。」
最後に足されていた一文が涙で滲んで見えなくなった。
「命令してってお願いしたのに…。」
おそらく公式にはなんの意味もない召喚状なのだろう。
私は既に国王令によるブリトーニャ様の相談役だったのだから。何も変わらない。前から相談役でこれからも相談役である事に変わりはない。
だからこそ、あえての2枚目の召喚状には重たい意味が込められている事に気付けない程には愚かではない。
私は2枚の召喚状を重ねて大切にファイルに挟んで、引き出しに仕舞い込んだ。
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