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突貫結婚式
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まだ残暑が厳しい季節ではあったけれど、私とエルンスト殿下の結婚式は慌しく行われた。
まだ朝早くから行われたリハーサル、私達の前に立ったのは王都の大聖堂の大司教その人だった。
「キッテン大聖堂の大司教の任を賜っておりますコックスでございます。この度司式者の任を務めさせて頂きます。精一杯努めてまいりますのでどうぞよろしくお願いします。」
一瞬で目が覚めた。
はい、存じております…って!ワザワザ大司教を呼び出した!?
ああ、1年、せめて半年程早くお目に掛かりたかった…。
なんだ、エルンスト殿下がその気になればこうやって大司教自らやって来てくれるんじゃん!!
今更だけど。
「遠路お呼び立てしたことを陳謝する。どうか良き日となるように、よろしく頼む。」
「勿体なきお言葉でございます。」
ってエルンスト殿下がどこか涼しい余裕のある顔なのが、なんかムカつく。
立ち会いは両家の両親と、ヒュッテでお目にかかったレミー大佐と奥様のレイラ様だった。
レイラ様とクラリーチェ様は幼馴染のご学友だそうだ。
大司教と私とエルンスト殿下、立ち会いの6人だけ。
それでもライナス公爵邸の礼拝堂では手狭なくらいだ。
…本当にこれで良いのかな、と思わないわけじゃないんだけど。
サラとエッタにこねくり回されて、化粧と髪を整えて貰う。
エッタの目元には隈があった。
「眠れなかったの?」
と聞くと、
「いえ…ええ。」
と歯切れが悪い。
答えはサラが教えてくれた。
「眠れませんよ。昨日の今日で結婚式だなんて!」
アレやコレ、サラとエッタは準備のために徹夜せざるを得ない。
「ごめんなさい、私が煮え切らなかったから…。」
その瞬間だった、ブワァーとエッタの瞳が涙で溢れた。
「謝らないで下さい。いいんです、たった一晩寝れなかったなんて些細な事なので!
それに寝ろと言われてもきっと眠れませんでした。だって、だって!
やっと…やっと。お幸せに…あぁ、あぁ。」
…そうね。エッタは全部を見てきたものね。
ステファン殿下の婚約者選定の頃からずっと…。
婚約が取り消されて落ち込んだ私を慰めてくれたのも、お城で苦しい思いをしていた時に寄り添ってくれたのも。
「…ありがとう、エッタ。あなたがいなかったらきっと今日という日は来なかったわ。あなたのおかげよ。本当にありがとう。
これからも宜しくね。変わらず頼りにして良いかしら?」
グジュグジュと涙を流しながらもエッタは何回も何回も頷いてくれた。
「さあ、いきますよ。いつまでも泣いてないの!」
サラに叱咤されエッタは涙を拭った。
ドレスはクラリーチェ様からの借り物、アクセサリーは両親からの。全く突貫も良いところだ。
小さな礼拝堂の小さな祭壇の前で、私を待っていたのがエルンスト殿下、その人だった。
…あっ、軍礼服なのね。
濃紺に金のブレードは海軍の証。立派な体躯に似合う素敵な立ち姿だ。
そっか、エルンスト殿下の衣装も突貫だ。
式服が間に合わなかったから、軍礼服か、うん、納得。
…でも素敵。よく似合ってる。
そんな事をボンヤリと考えながら中央通路を通り抜け、父からエルンスト殿下へと引き渡された。
エルンスト殿下に真っ直ぐに見つめられ、なんだか急に恥ずかしくなってそっと視線を下げた。
「では、これより始めさせて頂きます。」
大司教の言葉から式は始まった。
「新郎エルンスト・ライナス・プリンス・キッテン、あなたはレイチェル・フィリアを妻とし、健やかなる時も 病める時も喜びの時も 悲しみの時も富める時も 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。神に誓って。」
大司教は満足そうに頷くと、その視線を私に向けた。
新婦レイチェル・フィリア、あなたはエルンスト・ライナス・プリンス・キッテンを夫とし健やかなる時も 病める時も喜びの時も 悲しみの時も富める時も 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?
そのとき、私の手の上に載せられたエルンスト殿下の手は震えていた。
「はい。神に誓って。」
ギュッと私の手をエルンスト殿下は握り締めた。
この時ようやくエルンスト殿下の瞳を真っ直ぐに見つめることができた。
この大嘘つき。
とうとう神様の前でも嘘を貫き通した。
いつまで…?の答えは
「命ある限り…。」
だなんて。
「どこまでも一緒に。」
この問いかけに私は
「ええ、いつまでも…。」
と答えてしまったのだから、もう後戻りはできないわね。
2人で見つめあって誓いのキスを交わして。
あの日の嘘はこれからの真実になる。
私は、いいえ私達はようやく覚悟を決めた。
ううん、させられたのかもしれない。
でも、そうでもしなかったらきっと…。
これで良かったんだ。
いろんな事があったけど、これで良かった。
次の日、ヒュッテからの荷を解くことなく、私達はお城へ向けて出立した。
…させられた。
まだ朝早くから行われたリハーサル、私達の前に立ったのは王都の大聖堂の大司教その人だった。
「キッテン大聖堂の大司教の任を賜っておりますコックスでございます。この度司式者の任を務めさせて頂きます。精一杯努めてまいりますのでどうぞよろしくお願いします。」
一瞬で目が覚めた。
はい、存じております…って!ワザワザ大司教を呼び出した!?
ああ、1年、せめて半年程早くお目に掛かりたかった…。
なんだ、エルンスト殿下がその気になればこうやって大司教自らやって来てくれるんじゃん!!
今更だけど。
「遠路お呼び立てしたことを陳謝する。どうか良き日となるように、よろしく頼む。」
「勿体なきお言葉でございます。」
ってエルンスト殿下がどこか涼しい余裕のある顔なのが、なんかムカつく。
立ち会いは両家の両親と、ヒュッテでお目にかかったレミー大佐と奥様のレイラ様だった。
レイラ様とクラリーチェ様は幼馴染のご学友だそうだ。
大司教と私とエルンスト殿下、立ち会いの6人だけ。
それでもライナス公爵邸の礼拝堂では手狭なくらいだ。
…本当にこれで良いのかな、と思わないわけじゃないんだけど。
サラとエッタにこねくり回されて、化粧と髪を整えて貰う。
エッタの目元には隈があった。
「眠れなかったの?」
と聞くと、
「いえ…ええ。」
と歯切れが悪い。
答えはサラが教えてくれた。
「眠れませんよ。昨日の今日で結婚式だなんて!」
アレやコレ、サラとエッタは準備のために徹夜せざるを得ない。
「ごめんなさい、私が煮え切らなかったから…。」
その瞬間だった、ブワァーとエッタの瞳が涙で溢れた。
「謝らないで下さい。いいんです、たった一晩寝れなかったなんて些細な事なので!
それに寝ろと言われてもきっと眠れませんでした。だって、だって!
やっと…やっと。お幸せに…あぁ、あぁ。」
…そうね。エッタは全部を見てきたものね。
ステファン殿下の婚約者選定の頃からずっと…。
婚約が取り消されて落ち込んだ私を慰めてくれたのも、お城で苦しい思いをしていた時に寄り添ってくれたのも。
「…ありがとう、エッタ。あなたがいなかったらきっと今日という日は来なかったわ。あなたのおかげよ。本当にありがとう。
これからも宜しくね。変わらず頼りにして良いかしら?」
グジュグジュと涙を流しながらもエッタは何回も何回も頷いてくれた。
「さあ、いきますよ。いつまでも泣いてないの!」
サラに叱咤されエッタは涙を拭った。
ドレスはクラリーチェ様からの借り物、アクセサリーは両親からの。全く突貫も良いところだ。
小さな礼拝堂の小さな祭壇の前で、私を待っていたのがエルンスト殿下、その人だった。
…あっ、軍礼服なのね。
濃紺に金のブレードは海軍の証。立派な体躯に似合う素敵な立ち姿だ。
そっか、エルンスト殿下の衣装も突貫だ。
式服が間に合わなかったから、軍礼服か、うん、納得。
…でも素敵。よく似合ってる。
そんな事をボンヤリと考えながら中央通路を通り抜け、父からエルンスト殿下へと引き渡された。
エルンスト殿下に真っ直ぐに見つめられ、なんだか急に恥ずかしくなってそっと視線を下げた。
「では、これより始めさせて頂きます。」
大司教の言葉から式は始まった。
「新郎エルンスト・ライナス・プリンス・キッテン、あなたはレイチェル・フィリアを妻とし、健やかなる時も 病める時も喜びの時も 悲しみの時も富める時も 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい。神に誓って。」
大司教は満足そうに頷くと、その視線を私に向けた。
新婦レイチェル・フィリア、あなたはエルンスト・ライナス・プリンス・キッテンを夫とし健やかなる時も 病める時も喜びの時も 悲しみの時も富める時も 貧しい時も、これを愛し 敬い 慰め合い 共に助け合いその命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?
そのとき、私の手の上に載せられたエルンスト殿下の手は震えていた。
「はい。神に誓って。」
ギュッと私の手をエルンスト殿下は握り締めた。
この時ようやくエルンスト殿下の瞳を真っ直ぐに見つめることができた。
この大嘘つき。
とうとう神様の前でも嘘を貫き通した。
いつまで…?の答えは
「命ある限り…。」
だなんて。
「どこまでも一緒に。」
この問いかけに私は
「ええ、いつまでも…。」
と答えてしまったのだから、もう後戻りはできないわね。
2人で見つめあって誓いのキスを交わして。
あの日の嘘はこれからの真実になる。
私は、いいえ私達はようやく覚悟を決めた。
ううん、させられたのかもしれない。
でも、そうでもしなかったらきっと…。
これで良かったんだ。
いろんな事があったけど、これで良かった。
次の日、ヒュッテからの荷を解くことなく、私達はお城へ向けて出立した。
…させられた。
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