修道院に行きたいんです

枝豆

文字の大きさ
65 / 100

準王族マヌエラ

しおりを挟む
秋の新成人の夜会は、例年より参加者が多かったのと、王族の殆どが外遊に出てしまっている為、今日のダンスは準王族となった末の王弟リンクス侯爵夫妻とその令嬢のマヌエラ様が駆り出されている。

ステファン殿下には2歳上の姉がいたけれど、既に侯爵家に嫁がれていらっしゃる。エルに姉妹はいないため、キッテンの貴族の中ではこのマヌエラ様が一番高貴な独身女性であったことから、私達令嬢の憧れの女性のひとりだった。

そのマヌエラ様が!
ウルウルと瞳を揺らめかせながら、
「あー、本当に一時はどうなることかと心配してたのよ。」
と挨拶もそこそこに抱きしめてくれたの!
信じられない!
もうそれだけでも報われた気がする!

私がステファン殿下の婚約者候補のひとりだった頃、エルが結婚するまでの間という時限措置ではあったけれど、おそらくマヌエラ様が相談役になるだろうと聞かされていた。

だからステファン殿下の相手が急展開でブリトーニャ様に変わり、更に私がエルの婚約者になった経過を逐一知らされていた数少ない人のおひとりだ。

「ご心配をお掛けしてしまいました?」
「もちろんよ!準王族の身分をこんなに歯痒く思ったことは無かったわ!」

ご自身が相談役となるのに、肝心の王太子妃がコロコロ変わる、しかも結局は相談役にはならないなんて。
さぞかしヤキモキされていたのだろう…と思ったのに違った。

「何を言ってらっしゃるの?あんな理不尽な事があっては堪らないわ!でもダリアン島が絡んじゃったから、政務にも関わるでしょう?私達は全く意見を述べられないじゃありませんか。
ただのステファンの心変わりとかだったら、従兄姉としてガツンと言えたし、いくらだって手を差し伸べられて差し上げられたのに。」

普段はおっとりした穏やかなマヌエラ様が、顔を紅くして怒りを滲ませる。
やっばりお優しい方なんだと知って改めて憧れてしまう。

「だけれど、本当にこれで宜しかったの?どこか無理はしてはいらっしゃいませんの?
もう手遅れなんて思わないで。
今でも手を差し伸べるつもりはありますからね。」

「ありがとうございます。でも自分で決めた事なので、そのお心だけで。
それより、これからの事の方が。
…果たして私で務まるかどうか…。それだけが…。」

大丈夫とマヌエラ様は言ってくれたけれど。
まず、今日のダンスが最後まで踊り切れるか…それだけが心配なんだわ。

だって。
「23人、随分いらっしゃいますよね。」
手分けして3人で分けるけれど、それでも8人。エルとも踊るので9曲もある。
比較的短めの曲ではあるし、途中合間の休憩も挟むみたいだけれど…。
足が持つかしら?

マヌエラ様もこんなに何曲も一晩に踊ったことはないそうだ。

「…全力を尽くしましょう。」
「ですね。」
と2人で新たに誓い合う。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...