66 / 100
準王族リンクス侯爵
しおりを挟む
「叔父上、今夜はありがとうございます。」
準王族となった叔父リンクス侯爵とその夫人に丁寧にお礼を述べる。
「いや、なんのなんの。大した事じゃない。」
父の弟のチェスター殿下はリンクス侯爵家に婿入りという形で王族離脱をされた。
サーシャ様がひとり娘でなかったら、まだ王族だったかもしれないが、チェスター殿下はさっさと離脱の道を選び取った。
準王族は普段の政務には全く関わらない、議員となり国政に目を光らせることもない。
しかし、外交や社交の場面になると良いように扱き使われる、ただの名誉位でしかないというのに。
「エル、大変だっただろう、よく頑張ったな。」
「何がですか?」
「ははは、レイチェルの事だよ。」
「それは…。」
チェスター殿下はこの度のレイチェルや俺、ステファンとの経過を具に報告されていた数少ない貴族のひとりだ。
ステファンの妃の相談役にはチェスター殿下の娘のマヌエラが候補に上がっていたからだ。
もちろんそれは俺にまだ婚約する気すらさらさら無かったからだけれど。
「レイチェルの身の振り方次第では随分と厄介なことになっていただろう。エルはそれを一番良い形で収めたと思うよ。」
「そうでしょうか。ただ欲のままに行動したまでなんですけれど。」
「みたいだな。ブルーノが呆れていたよ。
ただこれ以上ない策だったことは間違いがない。」
もしあのままレイチェルが妾としてステファンに囲われたままじゃどうなっていたか。
どこかの貴族の家に嫁がされていたらどうなっていたか。
まして教会や修道院に行かされていたら…。
「本人達がどう思い、どう望んでいたとしても、周りはそれを都合よく解釈する。自分達にとって得になるように画策していっただろう。
だからエル、よくやってくれた。礼を言う。」
「ありがとうございます。」
自分の気持ちのままにした行動だったのは間違いがないが、キッテンの王族にとって得策であったこともまた間違いはない。
レイチェルをどこかの貴族の家に行かせるわけにはいかなった。それは王族の弱みを掴ませることでもあったからだ。
「それよりだ。ダンスパートナーなんて良く引き受けたな。」
「仕方がありません、公務ですから。」
「…気をつけなさい。虎視眈々と狙っている輩は未だに沢山いる。」
「はい、父からも言われております。しっかり肝に銘じておきます。」
ふむ、とチェスターは満足そうに頷く。そして妻に、
「お前も頼むよ。これはマヌエラには荷が重すぎる。」
「はい。」
エルンストとチェスターとサーシャの3人はにこやかさを全面に出しながらも、瞳はしっかりと目の前の新成人達を見据えていた。
準王族となった叔父リンクス侯爵とその夫人に丁寧にお礼を述べる。
「いや、なんのなんの。大した事じゃない。」
父の弟のチェスター殿下はリンクス侯爵家に婿入りという形で王族離脱をされた。
サーシャ様がひとり娘でなかったら、まだ王族だったかもしれないが、チェスター殿下はさっさと離脱の道を選び取った。
準王族は普段の政務には全く関わらない、議員となり国政に目を光らせることもない。
しかし、外交や社交の場面になると良いように扱き使われる、ただの名誉位でしかないというのに。
「エル、大変だっただろう、よく頑張ったな。」
「何がですか?」
「ははは、レイチェルの事だよ。」
「それは…。」
チェスター殿下はこの度のレイチェルや俺、ステファンとの経過を具に報告されていた数少ない貴族のひとりだ。
ステファンの妃の相談役にはチェスター殿下の娘のマヌエラが候補に上がっていたからだ。
もちろんそれは俺にまだ婚約する気すらさらさら無かったからだけれど。
「レイチェルの身の振り方次第では随分と厄介なことになっていただろう。エルはそれを一番良い形で収めたと思うよ。」
「そうでしょうか。ただ欲のままに行動したまでなんですけれど。」
「みたいだな。ブルーノが呆れていたよ。
ただこれ以上ない策だったことは間違いがない。」
もしあのままレイチェルが妾としてステファンに囲われたままじゃどうなっていたか。
どこかの貴族の家に嫁がされていたらどうなっていたか。
まして教会や修道院に行かされていたら…。
「本人達がどう思い、どう望んでいたとしても、周りはそれを都合よく解釈する。自分達にとって得になるように画策していっただろう。
だからエル、よくやってくれた。礼を言う。」
「ありがとうございます。」
自分の気持ちのままにした行動だったのは間違いがないが、キッテンの王族にとって得策であったこともまた間違いはない。
レイチェルをどこかの貴族の家に行かせるわけにはいかなった。それは王族の弱みを掴ませることでもあったからだ。
「それよりだ。ダンスパートナーなんて良く引き受けたな。」
「仕方がありません、公務ですから。」
「…気をつけなさい。虎視眈々と狙っている輩は未だに沢山いる。」
「はい、父からも言われております。しっかり肝に銘じておきます。」
ふむ、とチェスターは満足そうに頷く。そして妻に、
「お前も頼むよ。これはマヌエラには荷が重すぎる。」
「はい。」
エルンストとチェスターとサーシャの3人はにこやかさを全面に出しながらも、瞳はしっかりと目の前の新成人達を見据えていた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる