修道院に行きたいんです

枝豆

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フィアット

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5曲目のお相手は、私が小さい頃からお付き合いのあった伯爵家の嫡男で、それこそ赤ちゃんの頃から知っている、フィアットだった。

「まさかレイチェルが王族になるなんて。」
「ね、私もビックリよ。」
「レイチェルは少しそそっかしいから、心配だよ。」
「酷いわ!フィアットには言われたくなーい!」

今のところは大丈夫…特に大きな失策はやらかしてはいない…はず!

「ねえ、フィアット。あなた私が相手で良かったの?」
フィアットとも私と同じくマヌエラ様の信奉者のひとりだ。
2人で街で買った大衆紙のマヌエラ様の記事を読んだりしていた。
フィアットが乗馬の練習に勤しんだのも、春の狩りでなら、マヌエラ様のお姿を直に見る事が出来るからだと知っている。

「レイチェル…まさかこちらが選ぶ事ができるだなんて思ってないよね?」
「…思ってた…けど?」

どのように手分けするかを相談した時。
私の時はエルンストが言う言葉の通りなら、家の身分で分けられた。
しかし生まれながら準王族だったマヌエラ様、長く王弟殿下の伴侶であり、侯爵家のサーシャ様より、ポッと出の伯爵家の私の方が今の身分が高いことになり、そうするのは控えようと思ったんだけど。

「あのね、儀典部のお役人は書類を見ながら俺たちを列に振り分けたよ。
そりゃそうだろ。悪意を持つ人をレイチェルの側に行かせる訳がない。」

呆れた表情を見せるフィアットについムキになって、
「でも、私となんか踊ったって嬉しくもなんともないでしょう!」
と言い切った。

フィアットは大きくため息を吐いて、
「今、レイチェルがどれくらいみんなの注目を浴びてるかわかってないんだねぇ。」
と言う。

「エルンストってそんなに人気があったの?」
「…違っ、ああ僕からは…。そうそう、ああそうだよ、いきなりエルンスト殿下の婚約者になったかと思ったら、領地でサクッと誰も呼ばないで式だけ挙げちゃって。

…どうしたらエルンスト殿下の懐に入れるかってみんなが知恵を絞ってる。
レイチェル、気をつけなよ。
隙を見せたらパクって喰われるよ。」

「私を?私をどうこうしたってどうにもならないわ。」
私はただの公爵夫人で、ブリトーニャ様の相談役だ。
基本はブリトーニャ様が決めた事をYESかNOかを判断するだけ。
フィアットの言うような、私を喰ったってエルンスト殿下をどうこう出来るはずがない。

「本当わかってないんだね。まあその辺りはエルンスト殿下がなんとかなさるだろう。
レイチェルは…大人しくしときなよ。」

フィアットの初ダンスに関しては私が緊張を解してあげるより、私がバカにされて説教されて終わった気がする。

最後にフィアットは、
「貴重なお時間を頂き感謝申し上げます。どうか末永くこのフィアット、レイチェル様の盾となり鉾となります事を誓わせて頂きます。」
と口上を述べた。

誓うのは私じゃなくて、キッテンの国やカルロ陛下に誓うべきなのに…でも。
「嬉しいわ。ありがとうフィアット。」

私よりも歳下なのに、幼馴染が私を案じてくれていると思うと、やっぱりそれは嬉しい事だった。
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