修道院に行きたいんです

枝豆

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オマケ

里帰り2

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兄嫁の真っ赤な唇は、私への攻撃の手を緩めはしなかった。
幼い頃の事から嫁ぐ迄の間にどれだけ私が世間知らずで高慢ちきで恥知らずだったかを並べ立て始めた。
その一言ひと言に、ステファンは気にしてはいない、そんな事はないと反論し続けてくれた。
チクチクと刺してくる義姉の嫌味にさすがに涙を堪えきれそうもなくなった時、不意に隣で話を聞いていたステファンがボソッと一言呟いた。

「胸糞悪い。」

ああ、とうとうステファンの怒りに火がついた。とんだハズレを掴まされたと怒ったに違いない。

悔しくて悲しくて、
「…不甲斐なくて申し訳ありません…。」
涙混じりにそう謝れば、
「違う。そうじゃない。」
と、添えられた手のひらで私を宥めるようにポンポンと叩き、投げ掛けられる口調は優しい。

「…もう少しだけ我慢して。」
労りを感じさせる声音だった。
…我慢するのは慣れている。
私は瞬きで是と伝え、満足そうにステファンは微笑んだ。

それを見た兄嫁は不満だったのかもしれない。
兄嫁は容赦なく諍いの口火を切った。
兄嫁が発したのは、ステファンにとって侮辱行為にも等しい言葉だった。

「第一、捧げられた剣をいらないと突き返すなんて無礼をしでかしたんですもの。あり得ないわ。
まあ、結婚の挨拶と死者を悼む贈り物の区別も付かないようじゃ、人の気持ちを推し量れなんて無理な事よね。」

兄嫁の言葉に驚愕した。
何故兄嫁がそのことを知っている…の?

確かに剣は突き返した。しかしあれはステファンは、私が受け取らないであろうことは予想していた様な気がしている。
それに兄嫁はあの黒い壺の事を知っているらしい。
あれは私の知らないところで勝手にやられたこと。
なのに、どうして!?

ああ、でもそんなことは今は関係ない。目の前のことに気を配らないと。隙を見せたら食い殺される。

王太子が最上級の請願を撥ね付けられたことは、キッテンでは面白おかしく脚色され噂話は後を立たない。
もちろん周りには多少なり人がいたから、国王陛下には報告は上がっているし、結果、皆が知っていることだろう。

しかし愛を向けられない者から剣を捧げられたとして、それを必ず受けなければならない道理はない。
これは2人の気持ちの問題だからだ。
それに…あの時、ステファンが剣に私への愛の懇願を載せたとは私は思っていない。

懇願を跳ね除けられた者に対してそのことを直接揶揄したり、面と向かって話題にあげる愚か者はいない。これはキッテンの、いや人としての最低限の礼儀だ。
それを義姉は易々とやってしまった。

これはステファンへの侮辱だ!!

私に向ける悪意は我慢出来ても、ステファンに向けられるのは我慢出来ない!!

怒りが身体を駆けめぐる。せめて一言言い換えそうと息を吸った。
その瞬間、まるでそれをわかっているかのように私の背中をステファンがトンっと叩いた。
(…まだ、待て。)
そう伝えてきた気がした。

まだ?まだ待つの?
驚いてステファンを見上げると、ステファンは微かに微笑みを足して頷いた。

なぜ?こんな侮辱を受けてそれでもまだ笑うの?
理由はわからないが、何か思うところがあるのだろう…か?
「でも!」
「いいんだ。」

ステファンの声音は穏やなまま。ならばステファンに従うしかない、私に選択する余地はない。

「おお、そんな噂までご存じでしたか。」
私の困惑を他所に、ステファンは兄嫁の侮辱にさえも和かに応じてみせた。

「ええ、シュタインまで届くって事はもう随分とキッテンでは周知の事実なんでしょうね。全く躾も行き届かずにお恥ずかしい義妹で。

侍女にも見限られたというのに、おまけにレイチェル様に情けまで掛けて頂いたとか。
レイチェル様自らが情けを掛けて関係の修復に動いてくださっただなんて、まったく不甲斐いばかり。」

トドメを刺された気がした。
何故あの夜の事を!!あれは僅か数日前のこと。あの事を知っているのは僅かな限られた人だけ。

膝から力が抜けて崩れ落ちそうになったのをすかさずステファンが支えてくれる。
左手は私の左脇を通り右手は私の腹の辺りに添えられて、ステファンのしなやかな上半身に引き寄せられた。

「そんなことまでご存じなんですね。ですがさすがにもう止めていただきましょうか。」
静かだけれども強い口調に怒りを込めてステファンが言葉を紡いだ。
ステファンは私を抱きしめながらもしっかりと立ち、兄と義姉を睨みつけた。

ステファンの反撃が始まったのだ。
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