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オマケ
里帰り3
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それまで穏やかに兄嫁の話を聞いていたステファンの態度の変化に流石の兄嫁も少し懸念の表情を見せた。
…なんで怒るの?とでも思っているのだろう。
シュタインでは私への侮辱を止められる人はいない。
しかしわたしを落としながら兄嫁はステファンを蔑んだのだ。
妻への侮辱は耐えられても自分への侮辱を堪えられるほどステファンは弱くはない。
「我が妻、我が国の王太子妃への謂れ無い侮辱はやめていただきましょうか。
あなた方はいつまでブリトーニャを自分の国の者だと勘違いしているのか?
ブリトーニャは歴とした私の妻でキッテンの王太子妃です。
私とブリトーニャの間で拝剣の誓いは行われていません。
何故行われてもいない事をさもあったかのように話されるのでしょうか?
それにレイチェルとブリトーニャが和やかに過ごしたのはここに赴くわずか数日程前のこと。
ただの従兄弟夫妻と酒膳を囲っただけの事です。
何故でしょう?そんな些細な身内の事までも王妃殿下がご存じなのかご説明を願っても?
何を言ってるのかわかりませんね。
エルンストからの招待に私がブリトーニャを伴って赴いた、ただそれだけです。
関係の修復?エルンストと婚約したものの長く城を離れていたレイチェルとずっと城にいたブリトーニャがどのように関係を拗らせ、また修復したのだと仰るのですか?」
兄嫁の顔色がサッと変わった。
おそらく私の顔色も。
ステファンはハッキリ言った。
「我が妻への侮辱はやめてくれ!」
そんな事はあり得ない。
でもあり得ない事が目の前で繰り広げられていく。
レイチェルと私は、私が婚約者として発布された時から接点はない事になっている。…公には、だけれど。
レイチェルが城に残されていた事をカトリーナ様は必死で国民と諸外国には隠していらっしゃった。
「…だって、あれは…。」
「ライナス公爵が自領の習慣で私を招待して下さったものです。ヒュッテでは少なくても男が男をもてなし、それぞれの伴侶を同伴する社交のひとつでしかありません。
レイチェルが情けを掛けた?違いますよ、あれは従兄弟からの招待でただの家族の語らいです。
ブリトーニャとレイチェルは夫の社交に同伴しただけですよ。
王太子とその相談役、王太子妃とその相談役、顔を合わせて酒を飲む、家族なら当たり前の事でしょう?」
ステファンの言葉を受け止める兄嫁の顔がどんどんと嫌悪を現し始めた。
その表情を見ているのは、そう仕込まれた私にはただ怖い。
しかし見届けなくてはならないと腹を決めた。
ステファンは今私の為に戦ってくれている。
「拝剣は行われた…はずだ。」
「いいえ、行ってはいないですよ。どこにもそんな記録はありません。
ただの街の噂です。」
ステファンは嘘を、いやあくまでも公にされている造られた真実を語り続ける。
真実は義姉の方が正しいことは私もステファンも知っているのに。
私はステファンからの剣を突き返したし、レイチェルが示してくれた情けに擦り寄った。
しかし何故こんなことになったのか、…答えはひとつしか考えられなかった。
キッテンの城に義姉の手の者がいて、全てを具に報告し続けている間者がいる!それも相当に近い者だ。少なくてもあの夜の事を私が話したのは侍女だけ。そしてきっとレイチェルも…。
私達2人はあの日から城に他人を呼んで楽しく興に耽る事はしていない。
私は旅支度に、レイチェルは夜会の采配の準備でそれどころじゃなかった。
「あら。ただの噂をちょっと聞いただけの事…。家族なのにそんなに目くじらを立てなくても…。」
分が悪いと悟ったのか、義姉が守りに転じ始めた。
私は初めて兄嫁が言い負かされる場面を見た!!この場をどう逃れるかと必死になっているように見えた。
あり得ない光景はまだまだ続く。
私は呆然とし、黙って立ち、ただなり行きを見守るしかない。
下手な事を言えばステファンの足を引っ張ってしまうと思った。
「ただの噂?家族?ここは公の謁見室で、公の謁見なのでは?
シュタインの国王陛下と王妃はキッテンの王太子と王太子妃をただの噂で貶めるとでも?」
「公ではない。ただの家族としての交流だ。」
ここで初めて兄が割って入った。
さすがに兄も黙ってはいられないと思ったのだろう。
妃の不躾な態度が度を越した事を兄は悟ったのだ。
ただ、もう遅い。
愚かな私でもわかったのだ。兄にわからない筈はない。
座位の国王陛下夫妻に対して私達は立位だ。
これを家族の交流だと言うのならば…。
「陛下がそう仰るのならば、それで宜しいでしょう。わかりました。では国王陛下がキッテンにお越しの際は我々も同様に座位のまま謁見室でお迎え致しましょう。」
ほら、そうなるでしょう?
年が明けたらエルンストの結婚披露が行われる。招かれたシュタイン国王は立位のまま座位の私達に迎え入れられる事を認めるしかない。
おそらく他の国は立位の私達に迎え入れられるか、座位の私達に着席を促されるだろうに。
シュタインは他国より下げて扱われる、それが「シュタイン風の家族の在り方」だから。
ステファンの勝ちだ。
…いや、カトリーナ様の勝利かもしれない。
私の里帰りを執拗に勧めたのは義母だ。
「待て!!」
「なぜですか?ご説明下さいませ、陛下。」
兄の静止にもステファンは反撃の手を緩めようとはしなかった。
…なんで怒るの?とでも思っているのだろう。
シュタインでは私への侮辱を止められる人はいない。
しかしわたしを落としながら兄嫁はステファンを蔑んだのだ。
妻への侮辱は耐えられても自分への侮辱を堪えられるほどステファンは弱くはない。
「我が妻、我が国の王太子妃への謂れ無い侮辱はやめていただきましょうか。
あなた方はいつまでブリトーニャを自分の国の者だと勘違いしているのか?
ブリトーニャは歴とした私の妻でキッテンの王太子妃です。
私とブリトーニャの間で拝剣の誓いは行われていません。
何故行われてもいない事をさもあったかのように話されるのでしょうか?
それにレイチェルとブリトーニャが和やかに過ごしたのはここに赴くわずか数日程前のこと。
ただの従兄弟夫妻と酒膳を囲っただけの事です。
何故でしょう?そんな些細な身内の事までも王妃殿下がご存じなのかご説明を願っても?
何を言ってるのかわかりませんね。
エルンストからの招待に私がブリトーニャを伴って赴いた、ただそれだけです。
関係の修復?エルンストと婚約したものの長く城を離れていたレイチェルとずっと城にいたブリトーニャがどのように関係を拗らせ、また修復したのだと仰るのですか?」
兄嫁の顔色がサッと変わった。
おそらく私の顔色も。
ステファンはハッキリ言った。
「我が妻への侮辱はやめてくれ!」
そんな事はあり得ない。
でもあり得ない事が目の前で繰り広げられていく。
レイチェルと私は、私が婚約者として発布された時から接点はない事になっている。…公には、だけれど。
レイチェルが城に残されていた事をカトリーナ様は必死で国民と諸外国には隠していらっしゃった。
「…だって、あれは…。」
「ライナス公爵が自領の習慣で私を招待して下さったものです。ヒュッテでは少なくても男が男をもてなし、それぞれの伴侶を同伴する社交のひとつでしかありません。
レイチェルが情けを掛けた?違いますよ、あれは従兄弟からの招待でただの家族の語らいです。
ブリトーニャとレイチェルは夫の社交に同伴しただけですよ。
王太子とその相談役、王太子妃とその相談役、顔を合わせて酒を飲む、家族なら当たり前の事でしょう?」
ステファンの言葉を受け止める兄嫁の顔がどんどんと嫌悪を現し始めた。
その表情を見ているのは、そう仕込まれた私にはただ怖い。
しかし見届けなくてはならないと腹を決めた。
ステファンは今私の為に戦ってくれている。
「拝剣は行われた…はずだ。」
「いいえ、行ってはいないですよ。どこにもそんな記録はありません。
ただの街の噂です。」
ステファンは嘘を、いやあくまでも公にされている造られた真実を語り続ける。
真実は義姉の方が正しいことは私もステファンも知っているのに。
私はステファンからの剣を突き返したし、レイチェルが示してくれた情けに擦り寄った。
しかし何故こんなことになったのか、…答えはひとつしか考えられなかった。
キッテンの城に義姉の手の者がいて、全てを具に報告し続けている間者がいる!それも相当に近い者だ。少なくてもあの夜の事を私が話したのは侍女だけ。そしてきっとレイチェルも…。
私達2人はあの日から城に他人を呼んで楽しく興に耽る事はしていない。
私は旅支度に、レイチェルは夜会の采配の準備でそれどころじゃなかった。
「あら。ただの噂をちょっと聞いただけの事…。家族なのにそんなに目くじらを立てなくても…。」
分が悪いと悟ったのか、義姉が守りに転じ始めた。
私は初めて兄嫁が言い負かされる場面を見た!!この場をどう逃れるかと必死になっているように見えた。
あり得ない光景はまだまだ続く。
私は呆然とし、黙って立ち、ただなり行きを見守るしかない。
下手な事を言えばステファンの足を引っ張ってしまうと思った。
「ただの噂?家族?ここは公の謁見室で、公の謁見なのでは?
シュタインの国王陛下と王妃はキッテンの王太子と王太子妃をただの噂で貶めるとでも?」
「公ではない。ただの家族としての交流だ。」
ここで初めて兄が割って入った。
さすがに兄も黙ってはいられないと思ったのだろう。
妃の不躾な態度が度を越した事を兄は悟ったのだ。
ただ、もう遅い。
愚かな私でもわかったのだ。兄にわからない筈はない。
座位の国王陛下夫妻に対して私達は立位だ。
これを家族の交流だと言うのならば…。
「陛下がそう仰るのならば、それで宜しいでしょう。わかりました。では国王陛下がキッテンにお越しの際は我々も同様に座位のまま謁見室でお迎え致しましょう。」
ほら、そうなるでしょう?
年が明けたらエルンストの結婚披露が行われる。招かれたシュタイン国王は立位のまま座位の私達に迎え入れられる事を認めるしかない。
おそらく他の国は立位の私達に迎え入れられるか、座位の私達に着席を促されるだろうに。
シュタインは他国より下げて扱われる、それが「シュタイン風の家族の在り方」だから。
ステファンの勝ちだ。
…いや、カトリーナ様の勝利かもしれない。
私の里帰りを執拗に勧めたのは義母だ。
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