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オマケ
石がないんです4
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そんなある日。
「ねえ、拘るのは構わないけれど、お2人はカタインロジェってご存じ?
シュタインがキッテンから石材を購入するのはゴッツフォールじゃなくて、カタインロジェという石だったわ。少し黒っぽくて固くて。」
ブリトーニャの質問に皆が黙り込んだ。
黒っぽくて固い石?
「それは…。」
エルが口籠る。
どうやら知らないみたい。
一方でステファン殿下は知らないとあっさりと口を割った。
「ありがとう、調べてみる。」
ステファン殿下はそう言って、石の話はそこで終わった。
そんな折。
クラリーチェ様からたまには実家に行ってこい!と城から出された。
エルに連れられてフィリア伯爵邸に足を運んだ。
庭にたくさんの建築資材が積み上げられていた。
聞けば、兄が結婚するにあたり離れを作るのだという。
完成予想の絵図では、黒っぽい石が積み上がった石造りの家になるらしい。
兄曰く、
「こうやってエルンスト殿下をお招き出来ることもあるから、見た目よりも頑丈さに拘った。」
そうだ。
兄もまたゴッツウォールの価格高騰に頭を悩ませたらしい。
やっぱりゴッツウォールは素晴らしい石なんだ。みんなが拘りを見せるくらいには質がいい石。
それでもしがない伯爵家では逆立しても手が出せなくなった。
仕方なくグレイシア公爵や上司のアドバイスで他の石を検討していた。
その見本の石を兄が見せてくれた。
見て触りエルが考え込んだ。
「見た事が無い…石だ。」
最近石に悩まされていらっしゃるから石に目が向いたらしい。
私も触らせてもらったけれど、固くて黒みがかった、ツルツルとした綺麗な石だった。
最初に反応したのはエルだった。
「義兄さんこれはもしかしてカタインロジェ?」
「そうです。お詳しいんですね。
あまり出回らない物なんですが、友人の領地で取れる石なんです。」
「友人?」
「ええ、レイモンド伯爵です。殿下はご存知ですか?」
「…ラウール・レイモンドか。」
ラウール様の名前が出て息が止まりかけた。エルは黙り込んでしまったので、慌てて話題を変えることにする。
「ねえ、お兄様、ご結婚のお相手はどんな方なの?」
「ああ、ラモー伯爵家のアルティナって…」
「まあ、アルティナ様なの。確か前にクラリーチェ様のお茶会にいらしていたわ。」
そっかそっか、良かった良かった。
兄はクラリーチェ様の手引きで結婚するのか。父と兄が望んだ高位貴族との縁は着々とその実を結びつけ始めているみたい。
レイチェルは朧げな記憶からアルティナとの思い出を引っ張り出した。
殆ど挨拶程度だったけれど、可愛らしかった…気がする。
必死に兄にエルに話し掛け続けて、なんとか石の話はそれきりに出来た、その時は。
後日、エルとステファン殿下はレイモンド領からカタインロジェを大量に買い上げて、漸くダリアン島の港湾工事が再開された。
「ねえ、拘るのは構わないけれど、お2人はカタインロジェってご存じ?
シュタインがキッテンから石材を購入するのはゴッツフォールじゃなくて、カタインロジェという石だったわ。少し黒っぽくて固くて。」
ブリトーニャの質問に皆が黙り込んだ。
黒っぽくて固い石?
「それは…。」
エルが口籠る。
どうやら知らないみたい。
一方でステファン殿下は知らないとあっさりと口を割った。
「ありがとう、調べてみる。」
ステファン殿下はそう言って、石の話はそこで終わった。
そんな折。
クラリーチェ様からたまには実家に行ってこい!と城から出された。
エルに連れられてフィリア伯爵邸に足を運んだ。
庭にたくさんの建築資材が積み上げられていた。
聞けば、兄が結婚するにあたり離れを作るのだという。
完成予想の絵図では、黒っぽい石が積み上がった石造りの家になるらしい。
兄曰く、
「こうやってエルンスト殿下をお招き出来ることもあるから、見た目よりも頑丈さに拘った。」
そうだ。
兄もまたゴッツウォールの価格高騰に頭を悩ませたらしい。
やっぱりゴッツウォールは素晴らしい石なんだ。みんなが拘りを見せるくらいには質がいい石。
それでもしがない伯爵家では逆立しても手が出せなくなった。
仕方なくグレイシア公爵や上司のアドバイスで他の石を検討していた。
その見本の石を兄が見せてくれた。
見て触りエルが考え込んだ。
「見た事が無い…石だ。」
最近石に悩まされていらっしゃるから石に目が向いたらしい。
私も触らせてもらったけれど、固くて黒みがかった、ツルツルとした綺麗な石だった。
最初に反応したのはエルだった。
「義兄さんこれはもしかしてカタインロジェ?」
「そうです。お詳しいんですね。
あまり出回らない物なんですが、友人の領地で取れる石なんです。」
「友人?」
「ええ、レイモンド伯爵です。殿下はご存知ですか?」
「…ラウール・レイモンドか。」
ラウール様の名前が出て息が止まりかけた。エルは黙り込んでしまったので、慌てて話題を変えることにする。
「ねえ、お兄様、ご結婚のお相手はどんな方なの?」
「ああ、ラモー伯爵家のアルティナって…」
「まあ、アルティナ様なの。確か前にクラリーチェ様のお茶会にいらしていたわ。」
そっかそっか、良かった良かった。
兄はクラリーチェ様の手引きで結婚するのか。父と兄が望んだ高位貴族との縁は着々とその実を結びつけ始めているみたい。
レイチェルは朧げな記憶からアルティナとの思い出を引っ張り出した。
殆ど挨拶程度だったけれど、可愛らしかった…気がする。
必死に兄にエルに話し掛け続けて、なんとか石の話はそれきりに出来た、その時は。
後日、エルとステファン殿下はレイモンド領からカタインロジェを大量に買い上げて、漸くダリアン島の港湾工事が再開された。
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