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オマケ
石がないんです3
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「ったく、魂胆が見え見えだ。」
王都に住む貴族達との定例の謁見を終えたステフが荒々しく扉を開けて執務失礼に入ってきた。
椅子にドスンと座り込んで、握り拳でダン!と机を叩いた。
珍しい、これはかなり怒っている。
「…どした?」
「ラブレフだよ、アイツ、俺に直接レーチェに会わせろと言いやがった。」
「ステフに?ブリトーニャじゃなくて?」
「ああ、俺に、レーチェに、と。」
…面白くない。レーチェを誰かに引き合わせるとしたらそれは夫である俺の役目だ。
そもそもレーチェを誰かに引き合わせる予定も今のところ無いけどな。
ステファンとレイチェルの過去を知っているくせに、そのステファンに頼むか?普通はしない。ブリトーニャにも失礼だ!
「ブリトーニャの茶会にレイチェルを呼んでくれということらしい。無理だろ?」
「…無理なのか?」
「本気で聞いてる?」
ただでさえブリトーニャは茶会や夜会が好きじゃない。
婚約者の頃のトラウマもある。
ごくたまにカトリーナ様にせっつかれて形ばかりの茶会を開く。その殆どが名簿順に順繰りで集められたもの。
「今、どこまで?」
「Fだ。フィリア伯爵夫人には会いたかったらしい。ラブレフはRだろ。ほぼ最後の最後だ。」
「先は長い…か。」
「ああ、そんなことよりも、王族を私欲で振り回そうとしてるのが気に入らない。」
「ああ、確かにそうだな。」
さっき自分が面白くないと思ったばかりだ。
「ったく、エルのせいだぞ。」
「俺の?」
ラブレフとは接点がないのに!?
ああ、そうか、ないからだ。
ラブレフはリンクス侯爵派だ。事実上の無派閥、父にも叔父にも相手にされなかったのを未子のリンクス侯爵が上手く手懐けてる。
その状況が不満なのだろう。次代は上手くどこかに取り入りたい、ステファンか俺か。
「俺は無理だ。ラブレフ侯爵夫人はブリトーニャを虐めている張本人だ。
俺は許さない。」
「だから俺のせい?嫌だよ、俺だってレイチェルを政争に巻き込もうとした輩を許さない。」
俺も無理、ステフからも見放された、ブリトーニャは言わずもがな。
レイチェルが最後の…ってか。
まあ、それだけなら放っておけばいいだけなんだけど。
「問題はゴッツウォール…か。」
石が欲しければ派閥に入れろ、ってか。
ますます気に入らない。
昨日…。
レイチェルと散歩の途中で分かれた。
昨日はそんなに急ぎの話はなかったので、農場について行こうかと思ったのに、何故か全身で拒否のオーラが滲み出ていた。
まぁ、そう言うこともあるか…。
レイチェルにだって執務の中で行かなければならない事もあるだろう、と言い聞かせた。
逃げるように走っていく背中を寂しく見送り、ステファンの執務室に行く途中のことだった。
「あら?ひとり?レーチェは?」
カトリーナ様の部屋から出て来たブリトーニャに出会した。
「…なんか農場を見なくちゃって。何かあった?」
「…農場?何かしら…わからないわ。それよりカトリーナ様がレイチェルにも話があるって。」
胸騒ぎがした。だから、
「俺、探してくるよ。カトリーナ様の執務室で良いんだね。」
「ええ、でも私が行っても…。ふふふ、気になるのね、ではお願いするわ。」
焦りが伝わったのだろうか、ブリトーニャはあっさりとその役目を譲ってくれた。
さっき、レーチェはカトリーナ様とブリトーニャとの話し合いがあるからと言っていた。
嘘じゃないんだろうけれど…。同席を許されないどころか求められるような話し合いみたいなのに…。
そこで農場に向かったんだけど。
農場の脇で寄り添うようにダーランド補佐官と話しているレーチェがいた。
…何故ダーランドと?
彼は今はダリアン島に専従している財務官だ。
何故?
どこか冷たく突き放そうとしているダーランド、それを俯いて半泣きで耐えているレーチェ。
…どうした?何があった!?
慌てて2人の元に駆け寄った時、あまりにハッとした様子で警戒されたんだ。
ダーランドにもレーチェにも。
「エル!!…どうしたの?」
「カトリーナ様が呼んでる。」
「そ、そう。行かなきゃなのね。じゃあ、ダーランド補佐官、邪魔してごめんなさい。約束は必ず…。」
「…ええ、申し訳ありませんが、そのようにお願いします。」
足早にレーチェは城に向かって歩き出した。ついて行こうとした時、ダーランドに引き止められた。
「殿下、申し訳ないですが少し宜しいですか。…この数字を見ていただきたくて…。」
レーチェを送ろうかと思っていたのに、レーチェはひとりで戻れるとサッサとひとりで行ってしまった。
「ダーランド、何があった。約束とはなんだ?」
「約束…?なんの話ですか?特には何も…。」
明らかに今はここで話していた内容を俺に隠そうとしていた。
…密会。
まさかと思ったけれど、そんな言葉が胸に残る。
そして後からレーチェに確かめたんだけど…。
たまたま会っただけよ、約束?私は何もしてないわ、だから安心して、とはぐらかされて…。
ダーランドは政局にレーチェを巻き込むような事はしないとは思うけれど…。
ザワザワする胸騒ぎが…どうしても消えない。
王都に住む貴族達との定例の謁見を終えたステフが荒々しく扉を開けて執務失礼に入ってきた。
椅子にドスンと座り込んで、握り拳でダン!と机を叩いた。
珍しい、これはかなり怒っている。
「…どした?」
「ラブレフだよ、アイツ、俺に直接レーチェに会わせろと言いやがった。」
「ステフに?ブリトーニャじゃなくて?」
「ああ、俺に、レーチェに、と。」
…面白くない。レーチェを誰かに引き合わせるとしたらそれは夫である俺の役目だ。
そもそもレーチェを誰かに引き合わせる予定も今のところ無いけどな。
ステファンとレイチェルの過去を知っているくせに、そのステファンに頼むか?普通はしない。ブリトーニャにも失礼だ!
「ブリトーニャの茶会にレイチェルを呼んでくれということらしい。無理だろ?」
「…無理なのか?」
「本気で聞いてる?」
ただでさえブリトーニャは茶会や夜会が好きじゃない。
婚約者の頃のトラウマもある。
ごくたまにカトリーナ様にせっつかれて形ばかりの茶会を開く。その殆どが名簿順に順繰りで集められたもの。
「今、どこまで?」
「Fだ。フィリア伯爵夫人には会いたかったらしい。ラブレフはRだろ。ほぼ最後の最後だ。」
「先は長い…か。」
「ああ、そんなことよりも、王族を私欲で振り回そうとしてるのが気に入らない。」
「ああ、確かにそうだな。」
さっき自分が面白くないと思ったばかりだ。
「ったく、エルのせいだぞ。」
「俺の?」
ラブレフとは接点がないのに!?
ああ、そうか、ないからだ。
ラブレフはリンクス侯爵派だ。事実上の無派閥、父にも叔父にも相手にされなかったのを未子のリンクス侯爵が上手く手懐けてる。
その状況が不満なのだろう。次代は上手くどこかに取り入りたい、ステファンか俺か。
「俺は無理だ。ラブレフ侯爵夫人はブリトーニャを虐めている張本人だ。
俺は許さない。」
「だから俺のせい?嫌だよ、俺だってレイチェルを政争に巻き込もうとした輩を許さない。」
俺も無理、ステフからも見放された、ブリトーニャは言わずもがな。
レイチェルが最後の…ってか。
まあ、それだけなら放っておけばいいだけなんだけど。
「問題はゴッツウォール…か。」
石が欲しければ派閥に入れろ、ってか。
ますます気に入らない。
昨日…。
レイチェルと散歩の途中で分かれた。
昨日はそんなに急ぎの話はなかったので、農場について行こうかと思ったのに、何故か全身で拒否のオーラが滲み出ていた。
まぁ、そう言うこともあるか…。
レイチェルにだって執務の中で行かなければならない事もあるだろう、と言い聞かせた。
逃げるように走っていく背中を寂しく見送り、ステファンの執務室に行く途中のことだった。
「あら?ひとり?レーチェは?」
カトリーナ様の部屋から出て来たブリトーニャに出会した。
「…なんか農場を見なくちゃって。何かあった?」
「…農場?何かしら…わからないわ。それよりカトリーナ様がレイチェルにも話があるって。」
胸騒ぎがした。だから、
「俺、探してくるよ。カトリーナ様の執務室で良いんだね。」
「ええ、でも私が行っても…。ふふふ、気になるのね、ではお願いするわ。」
焦りが伝わったのだろうか、ブリトーニャはあっさりとその役目を譲ってくれた。
さっき、レーチェはカトリーナ様とブリトーニャとの話し合いがあるからと言っていた。
嘘じゃないんだろうけれど…。同席を許されないどころか求められるような話し合いみたいなのに…。
そこで農場に向かったんだけど。
農場の脇で寄り添うようにダーランド補佐官と話しているレーチェがいた。
…何故ダーランドと?
彼は今はダリアン島に専従している財務官だ。
何故?
どこか冷たく突き放そうとしているダーランド、それを俯いて半泣きで耐えているレーチェ。
…どうした?何があった!?
慌てて2人の元に駆け寄った時、あまりにハッとした様子で警戒されたんだ。
ダーランドにもレーチェにも。
「エル!!…どうしたの?」
「カトリーナ様が呼んでる。」
「そ、そう。行かなきゃなのね。じゃあ、ダーランド補佐官、邪魔してごめんなさい。約束は必ず…。」
「…ええ、申し訳ありませんが、そのようにお願いします。」
足早にレーチェは城に向かって歩き出した。ついて行こうとした時、ダーランドに引き止められた。
「殿下、申し訳ないですが少し宜しいですか。…この数字を見ていただきたくて…。」
レーチェを送ろうかと思っていたのに、レーチェはひとりで戻れるとサッサとひとりで行ってしまった。
「ダーランド、何があった。約束とはなんだ?」
「約束…?なんの話ですか?特には何も…。」
明らかに今はここで話していた内容を俺に隠そうとしていた。
…密会。
まさかと思ったけれど、そんな言葉が胸に残る。
そして後からレーチェに確かめたんだけど…。
たまたま会っただけよ、約束?私は何もしてないわ、だから安心して、とはぐらかされて…。
ダーランドは政局にレーチェを巻き込むような事はしないとは思うけれど…。
ザワザワする胸騒ぎが…どうしても消えない。
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