若松2D協奏曲

枝豆

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体育祭

当日 疾風視線

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体育祭の日が来た。

「あれ?あれ翠?」
開会式直前、入場待機していると、皇が何かに気付いた。

本部席の横、金モールがついたジャケットを着ている一団、吹部だ。
大抵の人は白に金、一部だけ紺に金、一人だけ赤に金。

皇が翠?と言ったのはトランペットを片手に持った紺ジャケットの小柄な女の子。
「翠だ。すげえ別人じゃん。」
北斗がいう。

いつもはふんわり下ろしている髪はきっちり纏め上げられて、前髪はピンで固められている。
軍服正装を思わせる紺の金モールジャケットと細身の黒パンツとでまるで男装の麗人。

その翠を先頭にスッと一団の前に金管楽器メンバーが歩み出て来たのだ。

ファーーーーー。
楽器が鳴るとざわついていた校庭は静まり返る。

翠達は楽器を構えると、ファンファーレが奏でられる。
その迫力に圧倒された。

「生徒、入場!」
勿体ぶった体育教師の声が響いて、吹部の曲が始まった。

「ヤバっ、翠、カッコいい。」
歩きながら優達女子が呟くのが聞こえた。

開会式が終わると吹部は一旦日光に弱い楽器を撤収するために校庭から離れる。
着替えて校庭に戻って、種目に出て、また演奏の準備に戻る。
一日中それをやる。
吹部席が別に用意されて校舎に近いのもそのためだ。

だけどそれだけの価値がある。
若松校の吹部、全国大会常連のそれを目指して入学してくる子は多い。
だから学校も意識して行事は吹部を前面に押し出した演出をする。
体育祭だけじゃない、合唱祭も文化祭も同じ。

そして、その年の応援団長だったり、吹部の総指揮だったり。リレーのアンカーだったりはするが、全校生徒の注目を浴びて、一気に目立つ存在になって、その後の学校生活をガラリと変えてしまう存在が出てくる。


今年は誰だろうね、と優たちは話していた。

もしかしたら。
…翠かもしれない。









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