若松2D協奏曲

枝豆

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体育祭

リレー

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吹部デモが終わった後は実は少し時間に余裕がある。
ただ終わった後の開放感から少しみんなでのんびりとしてしまうだけ。

閉会式はジャージだから着替えだけすれば特にすることはない。

「翠、リレーは全員応援だって。」
同じクラスの中野さんと西さんから声を掛けられた。
リレーの結果次第では総合優勝が出来るらしく、最後の種目の応援にD組全員集合が掛かった。

校庭に戻る道すがら、中野さんにさっきのお礼を言う。
「別に。翠、頑張ったから。それだけ。」
前を向きながらぶっきらぼうにズンズン歩いていくのを見て、西さんと笑い合う。

軽く砂埃を払って練習もしたいからみんなのところには行かずに、グランドの端っこで中野さん達とリレーを見る。

「あっ、ほら。さっきの太鼓の人がいる。2年生なんだ。カッコいい人だよね。」

…和津くんのことだ。
1年生の女の子が話しているのが聞こえてきた。

優ちゃんが言っていた言葉が蘇る。
「体育祭が終われば和津はきっとモテ始める。」

元々和津くんはモテると思う。
皇子くんの方がモテるのは多分好みの違いと皇子くんがみんなに優しいからでしかない。

「あのかっこよさで、足も速いなんて反則だよね。」
知らない子達の会話がズケズケ耳に入ってくる。

体育祭では毎年スターが出る。
今年はきっと和津くんだ。
体育祭だけじゃない。これから文化祭も球技大会もある。

キューと胸が痛い。
「違う女の子のところに行ってもいいの?」
優ちゃんの言葉が頭の中で繰り返し繰り返し響いてる。

…嫌だ。

体操着に着替えてトラックの端から見ている私に和津くんは気付かない。

1年女子、1年男子、優ちゃん、そして…。
3位でバトンを受け取った和津くんはすぐに1人抜き去った。
そのまま私の前を通り過ぎて、1位とほぼ同時に次へと繋いだ。

「すごーい!やっぱりあの人カッコいい。」
周りはどんどん和津くんの話で埋まっていく。

和津くんは他のリレーの選手達と3年生が走るのを応援してる。
アンカーの先輩が1位でゴールすると、和津くんは周りのみんなと喜び合って。

綺麗な横顔は真剣な時しか見れない。
和津くんが私を見ていない、その時しか見れない。

でももしその視線の先に他の子がいたら、私はどうしたら良いんだろう?





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