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体育祭 溢れ話
諦めきれない思い 遥視点
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赤ジャケ諦めきれないんだよね。
1コ上の部活の先輩で今は彼氏の了に話したら、
「トランペットのパートリーダーになった時点で、赤ジャケは無理!」
で終わった。
だよねぇ、と自分でも思う。
中3の時、学校見学で見た若松高吹部のマーチング。金モールと肩章が付いた赤いジャケットを着た指揮者に憧れた。
知らなかったのだ。
マーチングではトランペットのパートリーダーがそのまま金管セクションリーダーにスライドして紺ジャケを着る事が慣例になっているなんて。
理由は簡単。「先頭楽器が小さい方が見栄えがいい。」から。
木管ならフルートでもクラリネットでも格好が付く。
金管だけがトランペットと決められている。
なんなんだろう、そんな理由納得出来ない。
他の学校ではセクションリーダーの立ち位置に副指揮を置いたりするが、それでは若松マーチングにはならない。
入部して初めて知った時はショックだったけれど、今更トランペットを辞めることなんて出来なかった。
もうすぐ指揮者選考オーディションがある。
最後の最後で、諦めたくない気持ちが強くなった。
無理!の一言で片付けていた了が、泣きそうな表情をみて怯んだ。
「マジなの?」
うん、と頷く。
「うーん。荒れるぞ?」
うん、と頷く。
ひとつ大きくため息をついて、
「一緒に考えてやっから、頑張ってみろ。」
俯いた頭を大きな手でワシャワシャっと混ぜた。
了のこう言うところが好きだ。
「絶対聞かれるのは、誰を後任に指名するか、だ。」
ここで中途半端なヤツを指名すると顧問はお前を選ばない。」
技術があって行動でみんなを引っ張れる人…。
パッと浮かぶのは、翠。だけど翠は2年生だ。
そう告げると意外にも了は満足そうに頷いて、私の意見を支持してくれた。
まずトランペットの支持を固めろ。それから金管3年。1、2年は遥なら付いてきてくれるから。
先にトランペットの仲間に話した。意外にもみんなは納得してくれ、金管の仲間を説得までしてくれた。
他セクションから翠のリーダー案に反対はあった。無理矢理の3年案もホルンやトロンボーン案も出たけれど、最高の若松マーチングに何が大切か?を考えた結果だからと金管セクションのみんなが蹴ってくれた。
顧問にも説得とフォローは自分でやると言い切った。
そうして念願の指揮者になれた。
しかし部活内は割れた。
他のセクションからの容赦ないダメ出しが翠を襲った。
翠への心ない言葉に金管が反発する。
翠が泣いているのを見て自分の心が折れかけた。
私のわがままで、可愛い後輩が泣いている。
私の力不足で若松マーチングが崩れていく。
顧問に相談すると、フォローはすると言っただろう?と突き放された。
私が泣くと翠に矛先が行くと思って、絶対に泣かないと決めた。
それでも了の前で泣いた。
そのとき了が言った。
「お前が誰よりも先に誰よりも厳しくするんだ。指揮者が言うからみんなが黙る。遥の言葉だから翠に届く。
お前なら言葉を選んで届けてあげられるだろ?」
ハッとした。
そうだ。甘やかしちゃいけない。
誰よりも厳しく、誰よりも優しく。
気付いた事はなんでも言うようにした。
翠にだけじゃなく。金管にだけじゃなく。
その分丁寧に言葉を尽くした。
ある日を境に翠は泣かなくなった。
必死に食らいつくようになり、3年に対しても遠慮はしなくなった。
翠の中の何かが変わった気がする。
翠の成長と共に次第に部がまとまり始めた。
撮影会で目立つ赤ジャケの私の周りには人が溢れた。
それよりも紺ジャケの翠の周りにも同じくらい人が溢れたのが嬉しい。
見にきてくれた了がお疲れさま、よく頑張ったね、と頭を撫でてくれた。
その時にやっと私のマーチングが終わった。
翠と了と3人で撮った写真は、私の宝物になった。
1コ上の部活の先輩で今は彼氏の了に話したら、
「トランペットのパートリーダーになった時点で、赤ジャケは無理!」
で終わった。
だよねぇ、と自分でも思う。
中3の時、学校見学で見た若松高吹部のマーチング。金モールと肩章が付いた赤いジャケットを着た指揮者に憧れた。
知らなかったのだ。
マーチングではトランペットのパートリーダーがそのまま金管セクションリーダーにスライドして紺ジャケを着る事が慣例になっているなんて。
理由は簡単。「先頭楽器が小さい方が見栄えがいい。」から。
木管ならフルートでもクラリネットでも格好が付く。
金管だけがトランペットと決められている。
なんなんだろう、そんな理由納得出来ない。
他の学校ではセクションリーダーの立ち位置に副指揮を置いたりするが、それでは若松マーチングにはならない。
入部して初めて知った時はショックだったけれど、今更トランペットを辞めることなんて出来なかった。
もうすぐ指揮者選考オーディションがある。
最後の最後で、諦めたくない気持ちが強くなった。
無理!の一言で片付けていた了が、泣きそうな表情をみて怯んだ。
「マジなの?」
うん、と頷く。
「うーん。荒れるぞ?」
うん、と頷く。
ひとつ大きくため息をついて、
「一緒に考えてやっから、頑張ってみろ。」
俯いた頭を大きな手でワシャワシャっと混ぜた。
了のこう言うところが好きだ。
「絶対聞かれるのは、誰を後任に指名するか、だ。」
ここで中途半端なヤツを指名すると顧問はお前を選ばない。」
技術があって行動でみんなを引っ張れる人…。
パッと浮かぶのは、翠。だけど翠は2年生だ。
そう告げると意外にも了は満足そうに頷いて、私の意見を支持してくれた。
まずトランペットの支持を固めろ。それから金管3年。1、2年は遥なら付いてきてくれるから。
先にトランペットの仲間に話した。意外にもみんなは納得してくれ、金管の仲間を説得までしてくれた。
他セクションから翠のリーダー案に反対はあった。無理矢理の3年案もホルンやトロンボーン案も出たけれど、最高の若松マーチングに何が大切か?を考えた結果だからと金管セクションのみんなが蹴ってくれた。
顧問にも説得とフォローは自分でやると言い切った。
そうして念願の指揮者になれた。
しかし部活内は割れた。
他のセクションからの容赦ないダメ出しが翠を襲った。
翠への心ない言葉に金管が反発する。
翠が泣いているのを見て自分の心が折れかけた。
私のわがままで、可愛い後輩が泣いている。
私の力不足で若松マーチングが崩れていく。
顧問に相談すると、フォローはすると言っただろう?と突き放された。
私が泣くと翠に矛先が行くと思って、絶対に泣かないと決めた。
それでも了の前で泣いた。
そのとき了が言った。
「お前が誰よりも先に誰よりも厳しくするんだ。指揮者が言うからみんなが黙る。遥の言葉だから翠に届く。
お前なら言葉を選んで届けてあげられるだろ?」
ハッとした。
そうだ。甘やかしちゃいけない。
誰よりも厳しく、誰よりも優しく。
気付いた事はなんでも言うようにした。
翠にだけじゃなく。金管にだけじゃなく。
その分丁寧に言葉を尽くした。
ある日を境に翠は泣かなくなった。
必死に食らいつくようになり、3年に対しても遠慮はしなくなった。
翠の中の何かが変わった気がする。
翠の成長と共に次第に部がまとまり始めた。
撮影会で目立つ赤ジャケの私の周りには人が溢れた。
それよりも紺ジャケの翠の周りにも同じくらい人が溢れたのが嬉しい。
見にきてくれた了がお疲れさま、よく頑張ったね、と頭を撫でてくれた。
その時にやっと私のマーチングが終わった。
翠と了と3人で撮った写真は、私の宝物になった。
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