若松2D協奏曲

枝豆

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優しい北斗七星

つい出てしまった本音

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駅から家まで北斗と歩く。
「ここからまた自転車でしょ?疲れてない?」
「うん、大丈夫。疲れてないし。」

今日の出来事を色々話す。
なんたって翠の「疾風くん」には驚いた。
「ああ、アレな。何があったんだろ、疾風絶対に教えてくれないんだよなぁ。」

そしてブレスレットの話になった。
結局みんなでお揃いになった。
「北斗ああいうアクセサリーとか好きではない?」
「そんな事ないけど…なんで?」
「皇子に無理やり買わされて、翠にあげようとまでしてたから。」
「ああ、うん違うよ。怖くて。」
「えっ?怖くて?」
「うん。あの辺さあ、島が御神体だから、ゲン担ぎとかお祓いとか占いとか結構本気だったりする訳。
で、疾風のが怖すぎて。」
「学業の?」
「違う…。アレはおみくじのほうで、石言葉に怖くなった。」
「なんて書いてあったの?」
「想い人を振り向かせる。」
「うわ、それは…、うん、確かに。」
「あれだけかき混ぜて、それを引くのって怖い。
もし俺が変なの引いたら…って。」

「北斗は…怖いものを怖いって言えちゃうんだね。」
「うん、言えるよ。
怖い物は怖いし、好きな物は好きだし、欲しい物は欲しいって言う。」

そっか。強いな、北斗は。

「優ちゃんは言えない?」
「うーん、どうだろう。」
言えない…って言えない。

「…俺になら言える?」
「なんでまた北斗に言わなきゃならない?」
「…怖いのに怖いと言えなくて、好きなものを素直に選べなくて、大丈夫じゃないのに大丈夫としか言えないのって辛くない?
こうありたいって言う気持ちもわかるけど、今の自分をもっと好きになっても良いんじゃない?」

…ドキっとする。
見透かされてた。
「…北斗のくせに。」
辛うじて出た言葉。ホント可愛くない私。

「俺は笑わないから、俺にだけで良いから、ちゃんと本当の事言ってよ。」
「だから…なんで北斗にー。」
「好きだから。優ちゃんが好きだから。
優ちゃんの全部、強いところだけじゃなくて、女の子らしいところも弱いところも全部見せて。」

…好き?今好きって言った?

ウソつくんじゃ無い!いきなり変な言葉を叩き込んでくるんじゃない!
ドキドキが止まらない。恥ずかしいじゃないか!
ずっとずっと恥ずかしくて誰にも見せて来なかった所を突くんじゃない!

…違う。
ウソじゃない。北斗はこんなウソはつかない。
本当に?見せてもいいの…?良いのかな?笑われない?

だけど、だけど、だけど…。

「…なんで今それを言っちゃうかなぁ。」
「…だって。我慢できなかったんだもん。」

なんでこんなに北斗は真っ直ぐなんだろう。
そして私はどうしてこんなに素直じゃないんだろう。
嬉しいのに嬉しいって言えない。
今だって断る理由を探し始めてる。
好きな人に好きだって言ってもらえるような可愛い女の子じゃない…。

「皇子は?」
翠と和津は時間の問題、私と北斗が付き合ってしまえば皇子はきっと私達から離れていく。

「皇はそんなことで離れたりはしないよ。んで、皇には悪いけど、友達のために好きな子を諦めるなんて俺には無理。」
「でも…。」
「俺が嫌い?」
ぶるんぶるん首を振った。
北斗のことはどっちかっていうと、多分好き。
好きだけど…。

「好きだけど、キャラじゃないから付き合わないなんて言わないで。」

詰んだ。
もうダメだ。

「でも…。」
「恥ずかしい?」
うん、と頷いた。
「じゃあ、内緒で。」
「えっ、無理だよ。すぐバレる。」
「じゃあみんなに宣言する?」
首を振った、それこそ無理。

「皇が離れていかないように、友達としてしっかりと絆を固める。それからもっと友達も増やそう?そのうち自然にみんなが気付いた頃にちゃんと話せば良い。
だから、うんって言って?
断る理由探さないで、仕方ないから付き合ってやる、って言ってよ。」

「もう断るの面倒だから、好きにしていい。」
素直じゃないけど、それが今の私の精一杯。
だけど北斗は嬉しそうに
「じゃあ、好きにする。優ちゃん俺の彼女にする、もう決まり!」
とまで言ってくれる。
はいはい、好きにしな。
そこまでちゃんと言わせてくれる。

「あっそうだ、コレ。」
北斗が小さな包みを渡してくれる。さっきのお土産屋さんの包み。
「何これ?開けていい?」
キーホルダー?あっ、コンパクトミラー。
「あっ、かもめ。」

これさっき見かけた。クローバーとお花…。
これはお花の方。
自分ならきっと諦めてしまう、可愛い方…。

「ありがとう、大切にする。だけど…」
こんな可愛いの似合わない…って言おうとした。
「大丈夫、大切に使っていたらきっとそのうち似合うようになる。」
と言われてもう言葉が続かなくなった。
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