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皇子くんの一番
ナーバスな壮
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大会の日。
壮はものすごくナーバスになっていた。
ただいつもとは違う。
前までは隅に蹲って項垂れているか、俺の足にしがみつくか。
今日の壮はソラから片時も離れようとしない。
ご飯を食べようとレストランに入ろうとすると、
「ソラは車でお留守番でしょ?だったら僕も車に残る。」
とまで言い出した。
やんわりと美和子さんが、
「それはソラの躾にならないの。」
と嗜める。
色々な方針がある犬と人間との関係だけど、美和子さんはソラを溺愛はしていない。
「壮くんが食事を抜くような可愛がり方はソラも喜ばないわ。」
美和子さんにそう言われてしまうと、壮にはそれ以上抵抗はしなかった。
気持ちの切り替えが下手な壮だったけれど、最近はそうでもない。
渋々レストランに入った壮は、
「早く決めて!」
とみんなを急かし出す。
どうやら早く食べて早くソラのところへ戻る作戦のようだ。
これにはみんなで顔を見合わせて苦笑するしかない。
「…先頼んでいいぞ。」
父がボソッと呟いたのを壮は聞き逃さなかった。
「いいの!」
「ああ、だからそんなにみんなを急かすな。」
「あ、あの!すみません!」
通りかがった店員さんを壮が呼び止める。
「一番早く出来るのなんですか?」
「そうですね…カレーとか。」
「じゃ、それで!とりあえずカレーひとつ下さい!」
戸惑う店員さんに父が謝る。
「すみません、他はまた後でオーダーします。とりあえずカレー先に出してやってもらえますか?」
父は仕事を休んで壮の大会に付き合っている。
仕事人間の父にしては珍しいこと。
本当は母も来たがっていたけれど、話し合って止めたと言った。
「仕事の邪魔をしてしまったと壮が思ってしまったら、きっとダメよね。」
とどこか寂しそうに…。
「アイツはアイツなりに後悔しているんだ。そろそろアイツを許してやってくれないか?」
父はそう俺に言った。
…別に。
「俺が許すとかじゃないだろ。傷付いてきたのは壮だ。」
…別に怒っている訳じゃない。別に嫌いな訳じゃない。
それだけ父に言い残して、部屋に戻ってしまったのを、少しだけ後悔し始めている。
今日の壮は大会への期待と不安とで少しだけナーバスになっている。
だけどいつもとは少し違う。
…ソラに負けちゃったか。
嬉しいような寂しいような、ゴチャゴチャした変な気持ちになっていた。
壮はものすごくナーバスになっていた。
ただいつもとは違う。
前までは隅に蹲って項垂れているか、俺の足にしがみつくか。
今日の壮はソラから片時も離れようとしない。
ご飯を食べようとレストランに入ろうとすると、
「ソラは車でお留守番でしょ?だったら僕も車に残る。」
とまで言い出した。
やんわりと美和子さんが、
「それはソラの躾にならないの。」
と嗜める。
色々な方針がある犬と人間との関係だけど、美和子さんはソラを溺愛はしていない。
「壮くんが食事を抜くような可愛がり方はソラも喜ばないわ。」
美和子さんにそう言われてしまうと、壮にはそれ以上抵抗はしなかった。
気持ちの切り替えが下手な壮だったけれど、最近はそうでもない。
渋々レストランに入った壮は、
「早く決めて!」
とみんなを急かし出す。
どうやら早く食べて早くソラのところへ戻る作戦のようだ。
これにはみんなで顔を見合わせて苦笑するしかない。
「…先頼んでいいぞ。」
父がボソッと呟いたのを壮は聞き逃さなかった。
「いいの!」
「ああ、だからそんなにみんなを急かすな。」
「あ、あの!すみません!」
通りかがった店員さんを壮が呼び止める。
「一番早く出来るのなんですか?」
「そうですね…カレーとか。」
「じゃ、それで!とりあえずカレーひとつ下さい!」
戸惑う店員さんに父が謝る。
「すみません、他はまた後でオーダーします。とりあえずカレー先に出してやってもらえますか?」
父は仕事を休んで壮の大会に付き合っている。
仕事人間の父にしては珍しいこと。
本当は母も来たがっていたけれど、話し合って止めたと言った。
「仕事の邪魔をしてしまったと壮が思ってしまったら、きっとダメよね。」
とどこか寂しそうに…。
「アイツはアイツなりに後悔しているんだ。そろそろアイツを許してやってくれないか?」
父はそう俺に言った。
…別に。
「俺が許すとかじゃないだろ。傷付いてきたのは壮だ。」
…別に怒っている訳じゃない。別に嫌いな訳じゃない。
それだけ父に言い残して、部屋に戻ってしまったのを、少しだけ後悔し始めている。
今日の壮は大会への期待と不安とで少しだけナーバスになっている。
だけどいつもとは少し違う。
…ソラに負けちゃったか。
嬉しいような寂しいような、ゴチャゴチャした変な気持ちになっていた。
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