若松2D協奏曲

枝豆

文字の大きさ
151 / 242
happy birthday

翠と疾風

しおりを挟む
翠の誕生日は10月10日。ゾロ目だから覚えやすい。

うーん、どうしよう…。

「キチンとしないとだよなぁ。」
「うん、そうだね。やらない選択肢は無い!」

こういうの、相談するのは絵里に限る。
ハッキリ言ってどうしたら翠が喜ぶのかなんて俺にはさっぱりわからない。

「…でもな。」
まだ高校生、そんなに大盤振る舞いは出来ない。
部活もあるし、バイトなんてしている暇もそんなにないし…。

「お金や物じゃないよ。気持ち!」
彼からのプレゼントで痛い目を見ている絵里は、そんな事を平気で言う。

…でもな。…でもな、なんだよ。
出来れば喜んで貰いたいじゃん。

誕生日に一緒に過ごしたかったけど、今年はそれが叶わない。
今年の翠の誕生日の週は、吹部の全国コンクール大会の遠征と重なって、翠は一泊で広島に行ってしまう。

さすがに広島までは…。行きたかったけど、部活の秋の大会とも重なってて…。
泣く泣く諦めた。

…どうするのが良いのか…わからない。
物?思い出?

そんな時、当の翠からこんな話が持ち込まれた。

「誕生日会?」
「うん。」
毎年翠の誕生日会をお父さんの主催でお父さんのお店でやるらしい。
今年は遠征と重なってしまったので、出発の前日の金曜日。

…そういえば。

「去年、行けなかったヤツ?」
「うん、そう。」

…思い出した。俺達は部活で行けなかったけど。

「高校生にもなって誕生日会なんて恥ずかしいんだけど。お父さん張り切ってて…。やらなきゃやらないで後が面倒だから。」

あー、去年もそんな事言ってたなぁ。
「もちろん行く。部活休んでも行く。」
そう答えたら、翠が変なことを言い出した。

「でね、指定していい?」
「何を?」
「手ぶら指定。」

…誕生日会、手ぶらで来い!?

「…無理。だって翠の…」
誕生日なのに?

「じゃあ、来ないでいい。」
翠はあっけらかんとそう言った。

えっ!?何それ?

「あのね…。お父さんの自己満足なの。
プレゼントとか持ってきたら却って大変なの。だから、お願い!手ぶらで!」

参加出来るか出来ないか、それなら参加したい!
プレゼントは…別に…内緒ですれば良いか。

「うん、わかった。」
「じゃあ、よろしくね。」



翠のお父さんの面倒くささ、この時俺はまだ全然わかっていなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わり、転校してきたのは、初恋の相手だった——。 鬱々とした気分で二学期の初日を迎えた高須明希は、忘れかけていた記憶と向き合うことになる。 名前を変えて戻ってきたかつての幼馴染、立石麻美。そして、昔から気になっていたクラスメイト、河西栞。 親友の田中浩大が麻美に一目惚れしたことで、この再会が静かに波紋を広げていく。 性と欲の狭間で、歪み出す日常。 無邪気な笑顔の裏に隠された想いと、揺れ動く心。 そのすべてに触れたとき、明希は何を守り、何を選ぶのか。 青春の光と影を描く、"遅れてきた"ひと夏の物語。   前編 「恋愛譚」 : 序章〜第5章 後編 「青春譚」 : 第6章〜

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

after the rain

ノデミチ
青春
雨の日、彼女はウチに来た。 で、友達のライン、あっという間に超えた。 そんな、ボーイ ミーツ ガール の物語。 カクヨムで先行掲載した作品です、

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...