若松2D協奏曲

枝豆

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trick or treat 花音

ワークショップ

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「ワークショップ、ですか?」

画材店の新規客の掘り起こしのために、本店の方からワークショップ開催の指令が降りた。
講師はメーカーから派遣されるが、社員1名とアルバイト2名を助手としてつけたい、しいてはワークショップを開催する日、私はいつも通りの夕方からじゃなくて、朝からずっと通しで働けないか?店長の大和さんはそう言った。

朝から出るのは構わないし、ワークショップが終われば帰れるらしいから、二つ返事で引き受けた。

でも。
…どこでやるんだろう?
花音は首をかしげるしかなかった。

本店は小さいながらビルが丸々ひとつ、フロアは5フロアあるから、元々ワークショップが出来るスペースは確保されているけど…。

私達が勤務するこの店舗は1階に文具、2階に画材の2フロアしかない。
全判の用紙をカットするカット台がフロアの3分の1を占めるほどの狭さ。

「カット台でやる…しかない。」
店長大和さんの苦渋の決断。カット台でワークショップをするという事は、その日は用紙をカットするサービスを諦めるしかない?

「カットは…少し時間を貰って休憩室でやる。」

あー、なるほど。
それなら出来なくはないか。
ううん、ちょっと待って!?

「休憩…はどこで?」

「そこなんだよねぇ。」
大和さんは腕組みをして悩み始める。
「まあ、どこかのお店にでも行ってもらうしか…。飲み物代くらいは…経費で…かな。」

まあそれも仕方がないか。
嫌だと言ってもバイトの私には拒否権はない。

通常の営業も発注もしなければならないので、入社2年目の正社員の正野さんが大和さん交代で講師のサポートをするらしい。

品出しにもレジにもいてもいなくても困らない、担当のカテゴリーもない、ただのアルバイトの私だから、使い易いんだろう、な。

「じゃあ、10月の第4土曜と日曜、頼むね。」
と大和さんは話を打ち切った。


そして迎えたワークショップの日、商店街はハロウィン一色。子供達の仮装イベントもあってお祭りの雰囲気があって。
ワークショップの内容もハロウィンを意識している、フォトフレーム作りだった。

売り込む商品は、ダイカットメーカーという物。

機械に金型と画用紙をセットして、麵打ち機の容量でくるくるとハンドルを回すと、金型と画用紙がローラーの間を押されながら通過する。すると金型に合わせて画用紙がカットされる。

実はこれ、本体が2万、金型ひとつが千円以上する、かなり高価なマニア向けの商品。
しかし切り抜いて出来るダイカットはものすごく繊細で精密で…。

ハロウィンらしく、カボチャのお化け、コウモリ、お城、ウネウネと曲がりくねった木…。
好きなデザインを選んで、用紙を選んで、金型でくり抜いて。
それらを幾重にも重ねて貼り付けて、最後に、HALLOWEEN、trick or treat などの文字のダイカットを貼り付ける。

まともに機会と金型を買ったら、3万は下らない。
それがお手軽に500円で体験出来る。
出来上がった作品は、どこかの文房具店でひとつ千円ほどで売られているカードと比べても遜色ないほどの見事な出来栄え。

っ!悪魔な商品だ!

見本の作品を作りながら、どんどんと欲しくなってくる。
デザインは今回はハロウィンだけど、パンフレットの金型にはクリスマス用、お正月用、はたまたナチュラルなものからポップなものまで様々…。
そのひとつひとつが精巧で、それぞれに魅力がある。
しかし、高価!とにかく高価!!
高校生の一時の楽しみのために何万も掛けられる…訳がない!

…誰が買うんだろう…これ。
どんな人が買えるんだろう…。






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