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happy birthday
消えた電話帳
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吹部のメンバーが学校に楽器を届けに帰ってきたらしい。
「ちょっと抜けて良い?」
キャプテンになった皇にお伺いを立てる。
「ダメ!」
「ケチ!」
「うるせ~!」
その時校内放送が流れる。
「全国コンクールで優秀賞を取った吹奏楽部が結果報告会の演奏をします。
来れる生徒は至急音楽室に集まること。」
「ホラっ」
運が天を味方にした!
なんだかんだ皇はこういうのに弱い。
それで翠にも甘い。
「ちっ!」
皇が休憩を告げた。
「行ける奴は音楽室に移動!」
っていう声はシューズを脱ぎながら聞いていた。
吹部の部長の挨拶と後コンクール課題曲を二曲演奏して、賞状と記念のトロフィーが紹介された。
報告会が解散した途端、翠のところに駆けて行った。
「翠!」
「疾風くん!」
おめでとう、ありがとう。
素気ない気もするけど、みんながいる前でならこんなもんか?
「…疾風くん、部活何時に終わるの?」
「3時。」
「待ってていい?」
もちろん。まだあと1時間くらいあるけど。
部活を終わらせて速攻で着替えて、「お先に!」と部室を出たら、そこにはもう翠が待っていた。
「あのね、疾風くん。お願いがあるの。」
「何?」
「笑わない?」
「笑わないよ。」
「お父さんの連絡先、教えてくれる?」
うん?それは誰のお父さん?まさかとは思うけど…。
「ましろさんの?」
「…そう。でもなんでましろさんなの?」
なんで?と言われても…。そう呼べって言われたからなんだけど。
で翠のお父さんの連絡先を教えてくれっ?こっちがなんで?って聞いてもいいか?
「…あのね。去年消えちゃったの。」
貴行とのゴタゴタのせいで、短期間で学用品を買い替えなくてはならなくなった翠は当然だけど、ご両親からものすごく心配をされた。
今朝は大丈夫だったか?
今は大丈夫か?
あまりにも着信が多いので、煩わしさに耐えられなくなった翠は、最初はましろさんのメッセージを通知オフに、それからブロックした。
「ブロックっていってもね、学校着いてブロックして、家に帰る前に解除して…。」
LINEが上手く繋がらないので、ましろさんは余計に心配して、ショートメールに変えて…。
「で、ショートメールもブロックした?」
「…うん。」
そしてある日操作を間違えて、翠のスマホからましろさんの電話番号が消えた。
「多分…ブロックしたまま削除しちゃったんだと思う。」
「バックアップは?」
「そういうの、よくわからないから。」
家族の連絡先なんだから、直接聞いても、お兄さんでもナギさんでも聞けば教えてくれたはず。
それをしなかったのは…。
「煩わしかったから?」
「うん。無くてもそんなに困らなかったし。
お父さんの連絡先削除しちゃったなんて誰にも言えなかったし…。」
…藍さんのガッツポーズもナギさんのニヤニヤも朱里さんの申し訳なさそうな顔も全部が腑に落ちた。
多分だけど、あの家族は気付いてる。
…もしかしたらましろさんも、かも。
あんなにしつこく俺に連絡をしてきたのは、俺に翠が口を割る事を期待したからだ。
「いいよ。教える。」
パアッと翠の顔が華やいだ。
「クミもましろさんと連絡先交換してるハズなんだけどなぁ。」
「クミちゃんも!?」
「知らない?」
「うん、知らなかった。」
クミはクミで、違う方向で翠を守ってたのかもしれない。
お父さんからのメッセージを拒否したくなるほどに追い詰められてしまった翠。
防波堤になる、きっとあの頃の俺でもそうしていたと思う。
今だから。
学校で楽しくやれている翠だから。
「ほら、これ。」
ましろさんの連絡先を添付して、翠にメッセージを送る。
何回か操作して、翠が
「これから帰るね。」
とメッセージを送った。
…次の瞬間。
翠のスマホが光り出す。
1件、2件…5件のメッセージ。
ため息と共に、翠は通知をオフにした。
「ちょっと抜けて良い?」
キャプテンになった皇にお伺いを立てる。
「ダメ!」
「ケチ!」
「うるせ~!」
その時校内放送が流れる。
「全国コンクールで優秀賞を取った吹奏楽部が結果報告会の演奏をします。
来れる生徒は至急音楽室に集まること。」
「ホラっ」
運が天を味方にした!
なんだかんだ皇はこういうのに弱い。
それで翠にも甘い。
「ちっ!」
皇が休憩を告げた。
「行ける奴は音楽室に移動!」
っていう声はシューズを脱ぎながら聞いていた。
吹部の部長の挨拶と後コンクール課題曲を二曲演奏して、賞状と記念のトロフィーが紹介された。
報告会が解散した途端、翠のところに駆けて行った。
「翠!」
「疾風くん!」
おめでとう、ありがとう。
素気ない気もするけど、みんながいる前でならこんなもんか?
「…疾風くん、部活何時に終わるの?」
「3時。」
「待ってていい?」
もちろん。まだあと1時間くらいあるけど。
部活を終わらせて速攻で着替えて、「お先に!」と部室を出たら、そこにはもう翠が待っていた。
「あのね、疾風くん。お願いがあるの。」
「何?」
「笑わない?」
「笑わないよ。」
「お父さんの連絡先、教えてくれる?」
うん?それは誰のお父さん?まさかとは思うけど…。
「ましろさんの?」
「…そう。でもなんでましろさんなの?」
なんで?と言われても…。そう呼べって言われたからなんだけど。
で翠のお父さんの連絡先を教えてくれっ?こっちがなんで?って聞いてもいいか?
「…あのね。去年消えちゃったの。」
貴行とのゴタゴタのせいで、短期間で学用品を買い替えなくてはならなくなった翠は当然だけど、ご両親からものすごく心配をされた。
今朝は大丈夫だったか?
今は大丈夫か?
あまりにも着信が多いので、煩わしさに耐えられなくなった翠は、最初はましろさんのメッセージを通知オフに、それからブロックした。
「ブロックっていってもね、学校着いてブロックして、家に帰る前に解除して…。」
LINEが上手く繋がらないので、ましろさんは余計に心配して、ショートメールに変えて…。
「で、ショートメールもブロックした?」
「…うん。」
そしてある日操作を間違えて、翠のスマホからましろさんの電話番号が消えた。
「多分…ブロックしたまま削除しちゃったんだと思う。」
「バックアップは?」
「そういうの、よくわからないから。」
家族の連絡先なんだから、直接聞いても、お兄さんでもナギさんでも聞けば教えてくれたはず。
それをしなかったのは…。
「煩わしかったから?」
「うん。無くてもそんなに困らなかったし。
お父さんの連絡先削除しちゃったなんて誰にも言えなかったし…。」
…藍さんのガッツポーズもナギさんのニヤニヤも朱里さんの申し訳なさそうな顔も全部が腑に落ちた。
多分だけど、あの家族は気付いてる。
…もしかしたらましろさんも、かも。
あんなにしつこく俺に連絡をしてきたのは、俺に翠が口を割る事を期待したからだ。
「いいよ。教える。」
パアッと翠の顔が華やいだ。
「クミもましろさんと連絡先交換してるハズなんだけどなぁ。」
「クミちゃんも!?」
「知らない?」
「うん、知らなかった。」
クミはクミで、違う方向で翠を守ってたのかもしれない。
お父さんからのメッセージを拒否したくなるほどに追い詰められてしまった翠。
防波堤になる、きっとあの頃の俺でもそうしていたと思う。
今だから。
学校で楽しくやれている翠だから。
「ほら、これ。」
ましろさんの連絡先を添付して、翠にメッセージを送る。
何回か操作して、翠が
「これから帰るね。」
とメッセージを送った。
…次の瞬間。
翠のスマホが光り出す。
1件、2件…5件のメッセージ。
ため息と共に、翠は通知をオフにした。
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