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trick or treat 花音
セールストーク
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「あ、あの…。本当に大和さんも来るんですよね。」
「ええ、来ますよ。仕事をひとつ片付けたら。」
運ばれて来た食事はとっくに食べ終わって。
私の前にはたくさんのパンフレットが並べられている。
ひとつはさっきのダイカットメーカー。そして金型のパンフレット。200種類以上もあるという金型はシーズン毎に新しいシリーズが追加される。
そして…。何故かクレジットローンの契約書。
「あの、私まだ17なので、ローンとか組めないですよぉ?」
笑ってなんとか誤魔化そうと思ったのに、
「このローンはね、学生ローンだから問題ないよ。」
と返されて…。
確かにいいな、って思った商品ではあるけれど、何よりも高い!あまりに高すぎる!
本体とセットの金型がついて一番安いので3万円。もう1万円追加したら金型が更に20個も付く。
「お得でしょ?これね、ひとつ1500円する金型なの、普通に買うと金型だけで3万円もするのに、1万で買えちゃうの。」
「無理ですよ、まだ高校生ですし…。」
「そうかぁ、じゃあ本体セットだけでも。3万なら、伊佐さんならひと月バイトしたら余裕でしょう?」
「余裕じゃないですよ。だって…。」
私のアルバイト代は美大に進学するためのお金。
どんなに素敵な欲しいものでも、趣味のために使っていいお金じゃなくて…。
自分だからわかる。これは手を出してはいけない類の趣味だ。
きっとシーズン毎に新しいのが欲しくなって…どんどんとお金を注ぎ込んでいく、そんな領域の趣味になる。
だってさっき本人が言ってたじゃない。
「用紙でもマスキングテープでも、関連する商品を…って。」
「要りません!」
「えー、伊佐さんそれでいいの?大和さん困るんじゃない?」
「なんで大和さんが出てくるんですか!?」
「だって、ノルマあるんだよ?大和さん店長だから。」
「さっき、0じゃなくて良かった、って…。」
「そんなの本気にしちゃうの?アルバイトさんに心配掛けないために決まってるでしょう?
自爆営業って言ってね、ノルマに足りない分は大和さんが自腹を切って買うんだよ?
大和さん一体何台買うんだろう…ね?
だから伊佐さんが買ってあげたら、きっと大和さん凄く君に感謝すると思うんだけど。」
そ、そんなぁ。
「君を担当にしたのも、今日一緒に休憩に行くことにしたのも、大和さんが君ならきっと買ってくれるって思ったからじゃないのかなぁ。」
そ、そんなぁ。
「と、とりあえず、戻らなきゃ。もう時間ですし。」
「時間なら大丈夫だよ、次のワークショップの時間までに戻れば何の問題もないよ。
それに大和さんここに来るんだよ?待ってないと悪い、そう思わない?」
「お願いです!一回帰りましょう?でないと私…クビになります!」
多分大和さんはそんなことしないと思うけど、とりあえずここを出ないと!っとそう思うから。
「じゃあ、契約書にサインしてくれる?そうしたら帰ろう。ハンコは仕事場の認印で問題ないから、ね。」
「要りません!帰ります!せめて大和さんに相談させて下さい!」
本当に大和さんが自爆営業とやらをしなければならないなら、買う事は嫌ではない。
でもそれはちゃんと大和さんと話してから!!
「帰ります!」
と立ち上がった。立ち上がって上から講師さんを見下ろすと、講師さんは大胆にニヤリと笑った。
「靴…ないよ。裸足で帰る?
それもいいね、今日の街はイベントで、凄く賑わってる。
そんなところを裸足で泣きながら歩いてるなんて、人目を引いていい余興になるね。」
泣いてなんか…!と思ったけれど、ふと気付いた。
あっ。頬が濡れてる…。いつの間にか、知らない間に泣いていたんだ。
…もうどうしたら良いかわからない。
大和さん!助けて!!
「ええ、来ますよ。仕事をひとつ片付けたら。」
運ばれて来た食事はとっくに食べ終わって。
私の前にはたくさんのパンフレットが並べられている。
ひとつはさっきのダイカットメーカー。そして金型のパンフレット。200種類以上もあるという金型はシーズン毎に新しいシリーズが追加される。
そして…。何故かクレジットローンの契約書。
「あの、私まだ17なので、ローンとか組めないですよぉ?」
笑ってなんとか誤魔化そうと思ったのに、
「このローンはね、学生ローンだから問題ないよ。」
と返されて…。
確かにいいな、って思った商品ではあるけれど、何よりも高い!あまりに高すぎる!
本体とセットの金型がついて一番安いので3万円。もう1万円追加したら金型が更に20個も付く。
「お得でしょ?これね、ひとつ1500円する金型なの、普通に買うと金型だけで3万円もするのに、1万で買えちゃうの。」
「無理ですよ、まだ高校生ですし…。」
「そうかぁ、じゃあ本体セットだけでも。3万なら、伊佐さんならひと月バイトしたら余裕でしょう?」
「余裕じゃないですよ。だって…。」
私のアルバイト代は美大に進学するためのお金。
どんなに素敵な欲しいものでも、趣味のために使っていいお金じゃなくて…。
自分だからわかる。これは手を出してはいけない類の趣味だ。
きっとシーズン毎に新しいのが欲しくなって…どんどんとお金を注ぎ込んでいく、そんな領域の趣味になる。
だってさっき本人が言ってたじゃない。
「用紙でもマスキングテープでも、関連する商品を…って。」
「要りません!」
「えー、伊佐さんそれでいいの?大和さん困るんじゃない?」
「なんで大和さんが出てくるんですか!?」
「だって、ノルマあるんだよ?大和さん店長だから。」
「さっき、0じゃなくて良かった、って…。」
「そんなの本気にしちゃうの?アルバイトさんに心配掛けないために決まってるでしょう?
自爆営業って言ってね、ノルマに足りない分は大和さんが自腹を切って買うんだよ?
大和さん一体何台買うんだろう…ね?
だから伊佐さんが買ってあげたら、きっと大和さん凄く君に感謝すると思うんだけど。」
そ、そんなぁ。
「君を担当にしたのも、今日一緒に休憩に行くことにしたのも、大和さんが君ならきっと買ってくれるって思ったからじゃないのかなぁ。」
そ、そんなぁ。
「と、とりあえず、戻らなきゃ。もう時間ですし。」
「時間なら大丈夫だよ、次のワークショップの時間までに戻れば何の問題もないよ。
それに大和さんここに来るんだよ?待ってないと悪い、そう思わない?」
「お願いです!一回帰りましょう?でないと私…クビになります!」
多分大和さんはそんなことしないと思うけど、とりあえずここを出ないと!っとそう思うから。
「じゃあ、契約書にサインしてくれる?そうしたら帰ろう。ハンコは仕事場の認印で問題ないから、ね。」
「要りません!帰ります!せめて大和さんに相談させて下さい!」
本当に大和さんが自爆営業とやらをしなければならないなら、買う事は嫌ではない。
でもそれはちゃんと大和さんと話してから!!
「帰ります!」
と立ち上がった。立ち上がって上から講師さんを見下ろすと、講師さんは大胆にニヤリと笑った。
「靴…ないよ。裸足で帰る?
それもいいね、今日の街はイベントで、凄く賑わってる。
そんなところを裸足で泣きながら歩いてるなんて、人目を引いていい余興になるね。」
泣いてなんか…!と思ったけれど、ふと気付いた。
あっ。頬が濡れてる…。いつの間にか、知らない間に泣いていたんだ。
…もうどうしたら良いかわからない。
大和さん!助けて!!
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