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trick or treat 花音
助っ人
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ガラッと襖が開いて…。
大和さん!
と思ったのに違った。スーツを着た男の人。
スーツは普通のスーツだけど、顔がゴツイ、押し込んでくるような迫力がある人…。
まさか…ヤ…?
そんな雰囲気の人だった。
「この子?」
「はい!そうです!」
「…泣いてんじゃねーか。泣かせるなよ!」
一瞬良い人なのかと思った。けど違った。
パチーン!!
スーツの人が講師さんを平手で殴る。
「こんな目立つ場所で泣かれたら、怪しまれるじゃねーか!!」
「す、すみません。」
目の前の光景に思考停止した。
嫌だ、怖い怖い…怖い、怖い、怖い…。
スーツの人が私を見る。
「座って。」
と言われても身体が動かない。
「座れ!」
と低い声。
講師さんが慌てて、
「大丈夫だから、だけど逆らわないで。」
と座るように促されて、言われるままに座ってしまう。
「お嬢さん、あんまり大人に手を掛けさせねーで貰えるかな?
君がサッサとサインすれば、コイツも俺も、君も帰れる。
君のワガママで大人を困らせちゃいけねぇ。わかるね。」
「…そ、そんなぁ。」
スーツの人が私に優しかったのはここまでだった。
「サッサとサインしろ!ってんだって言ってんの!!」
怖い声で、大声で、怒鳴られる。
「は、や、く!」
テーブルをバンバンと叩きながら、サインをするように求められる。
大人の、男の人にこんなふうに怒鳴られた事なんかない。
ガラッと再び襖が開く。
また、また助っ人!?
もうヤダ!!
「ちょっとお話、良いですか?」
そこに立っていたのは制服を着たお巡りさんだった。
その瞬間、私の涙腺は崩壊した。
講師さんとスーツの人、そして私は警察署に連れて行かれた。
私の話を聞いてくれたのは、少年課の女性警官だった。
泣き噦る私を宥めてくれたり、お茶を飲ませてくれたり、優しかった。
「起きた事を全部話してくれたら帰れるからね。」
と言われて思い出せる事を全部話した。
ウンウン、と話を聞きながら、警官さんは私の行動で何が良くなかったか、何が良かったかを話してくれた。
まず何よりもよく知らない人と個室の居酒屋さんに行ったのがまずかった。
お財布とスマホを持っていなかった事も。
お店で大和さんを待つか、居酒屋を指定されたときにお店に帰るかしなければいけなかった。
そして靴。
外に出にくい状況を更に困難に思えるようにしたのは靴箱の鍵を相手に取られてしまった事。
座らされた奥側の席、更に講師さんが席を隣に移動したのは私の退路を塞ぐためだと思う、奥ではなくて出入り口側に座った方が良かった、とも言われた。
でもね、それは難しかったとも思う、と。
相手は相当下調べをして、念入りに準備して、悪意を持って私をあの店に連れて行ったと思う、とも。
褒めてもらったのは、とにかく絶対にサインをしなかった事。
要りません!相談したい!帰りたい!という言葉を大声でハッキリと言えた事。
食後にお茶を運んだ従業員が、ハッキリとパンフレットとローンの契約書を見ていたそうだ。
…どう見ても子供な私と大人の男の人の組み合わせとテーブルに広げられたパンフレットの山を見て、なんかヤバそう、と思ったその人は仕事をしながら、私たちの部屋の前を通る時に聞き耳を立ててくれていた。
帰りたいという声が聞こえた事で、店長さんと相談し警察に通報してくれたそうだ。
その時、既に大和さんから警察に私が連れ去られたかもしれない事は通報されていて。
もちろん直ぐに警察が動いてくれた訳じゃないけれど、イベントの最中とあって街には警備のための警察官が溢れていたのも幸いした。
女の子が執拗な悪質勧誘を受けているとの通報と合わせて、すぐに警察官が様子を見に来てくれたそうだ。
特定商取引法違反、よくわからないけれど、私は法律に守られたらしい。
「お迎え来たよ。」
店を閉めて総出で私を探してくれていたみんなが扉の前に立っていた。
正野さん、アルバイトの仲間たち、そして大和さん。
みんなが心配して私を迎えに来てくれた。
「大和さん!」
私は何にも考えないで、大和さんに抱きついて泣いた。
「ごめん、ごめん。怖い思いさせちゃったね。」
優しく優しく大和さんは私をただ抱き締めて、肩を叩いて慰めてくれた。
「帰ろう。送るから。」
あの講師さんはウソをついた。
販売ノルマはあるにはあったけれど、本社がそれを従業員に買い取らせる事はそもそも想定が無かった。
「2台くらいは店で買う事になるとは思ってた。あれは抜いた紙に著作権はないから、出来上がった作品を売ったり、シーズン毎のワークショップに利用したり出来るんだ。」
あのダイカットメーカーは二次利用を目的とする人への商品。
結婚式の招待状などのメッセージカードを作って売るクラフト作家さん、学校や幼稚園の先生たち、個人が趣味で買うものではなく、あれを使って商売をする人のための商品。
だから画材店としてはワークショップで全く売れなくても仕方がないと思っていた商品。
本社があれをワークショップで開催したのは、二次利用をする際の参考にする為で、大和さんが私を助手に入れたのは、文化祭の時の手際を買ってくれたのと、現役高校生ならどんな場面でカードを買うか?を聞くためでしかなかった。
残りのワークショップは正野さんがやる事になり、私は今日はもう無理だと判断されて、大和さんと家に帰る事になった。
大和さん!
と思ったのに違った。スーツを着た男の人。
スーツは普通のスーツだけど、顔がゴツイ、押し込んでくるような迫力がある人…。
まさか…ヤ…?
そんな雰囲気の人だった。
「この子?」
「はい!そうです!」
「…泣いてんじゃねーか。泣かせるなよ!」
一瞬良い人なのかと思った。けど違った。
パチーン!!
スーツの人が講師さんを平手で殴る。
「こんな目立つ場所で泣かれたら、怪しまれるじゃねーか!!」
「す、すみません。」
目の前の光景に思考停止した。
嫌だ、怖い怖い…怖い、怖い、怖い…。
スーツの人が私を見る。
「座って。」
と言われても身体が動かない。
「座れ!」
と低い声。
講師さんが慌てて、
「大丈夫だから、だけど逆らわないで。」
と座るように促されて、言われるままに座ってしまう。
「お嬢さん、あんまり大人に手を掛けさせねーで貰えるかな?
君がサッサとサインすれば、コイツも俺も、君も帰れる。
君のワガママで大人を困らせちゃいけねぇ。わかるね。」
「…そ、そんなぁ。」
スーツの人が私に優しかったのはここまでだった。
「サッサとサインしろ!ってんだって言ってんの!!」
怖い声で、大声で、怒鳴られる。
「は、や、く!」
テーブルをバンバンと叩きながら、サインをするように求められる。
大人の、男の人にこんなふうに怒鳴られた事なんかない。
ガラッと再び襖が開く。
また、また助っ人!?
もうヤダ!!
「ちょっとお話、良いですか?」
そこに立っていたのは制服を着たお巡りさんだった。
その瞬間、私の涙腺は崩壊した。
講師さんとスーツの人、そして私は警察署に連れて行かれた。
私の話を聞いてくれたのは、少年課の女性警官だった。
泣き噦る私を宥めてくれたり、お茶を飲ませてくれたり、優しかった。
「起きた事を全部話してくれたら帰れるからね。」
と言われて思い出せる事を全部話した。
ウンウン、と話を聞きながら、警官さんは私の行動で何が良くなかったか、何が良かったかを話してくれた。
まず何よりもよく知らない人と個室の居酒屋さんに行ったのがまずかった。
お財布とスマホを持っていなかった事も。
お店で大和さんを待つか、居酒屋を指定されたときにお店に帰るかしなければいけなかった。
そして靴。
外に出にくい状況を更に困難に思えるようにしたのは靴箱の鍵を相手に取られてしまった事。
座らされた奥側の席、更に講師さんが席を隣に移動したのは私の退路を塞ぐためだと思う、奥ではなくて出入り口側に座った方が良かった、とも言われた。
でもね、それは難しかったとも思う、と。
相手は相当下調べをして、念入りに準備して、悪意を持って私をあの店に連れて行ったと思う、とも。
褒めてもらったのは、とにかく絶対にサインをしなかった事。
要りません!相談したい!帰りたい!という言葉を大声でハッキリと言えた事。
食後にお茶を運んだ従業員が、ハッキリとパンフレットとローンの契約書を見ていたそうだ。
…どう見ても子供な私と大人の男の人の組み合わせとテーブルに広げられたパンフレットの山を見て、なんかヤバそう、と思ったその人は仕事をしながら、私たちの部屋の前を通る時に聞き耳を立ててくれていた。
帰りたいという声が聞こえた事で、店長さんと相談し警察に通報してくれたそうだ。
その時、既に大和さんから警察に私が連れ去られたかもしれない事は通報されていて。
もちろん直ぐに警察が動いてくれた訳じゃないけれど、イベントの最中とあって街には警備のための警察官が溢れていたのも幸いした。
女の子が執拗な悪質勧誘を受けているとの通報と合わせて、すぐに警察官が様子を見に来てくれたそうだ。
特定商取引法違反、よくわからないけれど、私は法律に守られたらしい。
「お迎え来たよ。」
店を閉めて総出で私を探してくれていたみんなが扉の前に立っていた。
正野さん、アルバイトの仲間たち、そして大和さん。
みんなが心配して私を迎えに来てくれた。
「大和さん!」
私は何にも考えないで、大和さんに抱きついて泣いた。
「ごめん、ごめん。怖い思いさせちゃったね。」
優しく優しく大和さんは私をただ抱き締めて、肩を叩いて慰めてくれた。
「帰ろう。送るから。」
あの講師さんはウソをついた。
販売ノルマはあるにはあったけれど、本社がそれを従業員に買い取らせる事はそもそも想定が無かった。
「2台くらいは店で買う事になるとは思ってた。あれは抜いた紙に著作権はないから、出来上がった作品を売ったり、シーズン毎のワークショップに利用したり出来るんだ。」
あのダイカットメーカーは二次利用を目的とする人への商品。
結婚式の招待状などのメッセージカードを作って売るクラフト作家さん、学校や幼稚園の先生たち、個人が趣味で買うものではなく、あれを使って商売をする人のための商品。
だから画材店としてはワークショップで全く売れなくても仕方がないと思っていた商品。
本社があれをワークショップで開催したのは、二次利用をする際の参考にする為で、大和さんが私を助手に入れたのは、文化祭の時の手際を買ってくれたのと、現役高校生ならどんな場面でカードを買うか?を聞くためでしかなかった。
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