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20.ゲームと全然違う展開なんですが!?

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「うわぁ……本当に戻って来れた……」
無事に戻って来ることができて、俺はホッと胸を撫で下ろす。
「王子、助けに来てくれて……どうもありがとう」
「いや……。ミノルが無事で良かったよ……」
俺たちは微笑み合う。すると、急に恥ずかしくなって、お互い顔を背けた。
一時は、もう二度と王子に会えないかもしれないと思っていただけに、嬉しさもひとしおである。

とはいえ、まだ魔王討伐という大きな問題が残っているのだ。これから忙しくなるだろう。
「では、父上に報告しに行こう」
「そうだね」
俺達は国王の元へと向かおうとする。しかし、そこで1人の兵士がこちらへと駆け寄ってきた。
「アルベール様!!」
「どうした……?」
「実は先ほど、魔王軍の幹部を名乗るものが城に現れまして……!」
「何……!?」
王子は驚きの声を上げる。
「その幹部というのは……?」
「それが……黒いローブを着た人物でして、顔までは確認できませんでした」
「なるほど……。それで……?」
「はい。奴は勇者を差し出せと言ってきたのですが……そんな者はいないと伝えると、すぐに去っていきました」
そいつはもしかすると、俺が閉じ込められているところに話しかけてきた奴かもしれないな……。ラウルとかいったか。
「なるほど……勇者を探しているのか……」
「それと、奴は去り際にこんなことを言っておりました」
「なんだ……?」
「『魔王様は、必ず勇者を手に入れる』と……。一体どういう意味なのでしょう……?」
魔王は勇者を倒す、とかなら分かるが、手に入れるとは妙な言い回しだ。
「不明な点が多いな……。このことはまだあまり広めないようにしてくれ」
「はっ!」
兵士たちは急いで立ち去っていった。
「王子……、魔王は勇者を手に入れてどうするつもりなんだろう?」
「分からない……。だが、おそらく何かしらの手段を使って勇者を手に入れようとしているんだろうな」
王子は険しい表情を浮かべる。
「俺がさらわれたのも、関係があるのかな……」
「何か心当たりがあるのか……?」
「うん……。実は……」
俺はさらわれた時に、ラウルと名乗る男に会ったことを説明した。
「なるほど……。それは気になるところだ……」
「それで、あの男は俺をさらってどうするつもりだったのかなって……」
「魔王軍はミノルと勇者に何か関連があると踏んでいるのだろうか……」
王子は腕を組んで考えている。

本来ならリュネット姫がさらわれて、王子が勇者に隣国の姫を助けて欲しいとお願いするのが、ゲームでの流れだ。
姫は形だけの婚約者だったが、王子は俺を本気で好きになってくれていた。だから、王子自ら助けに行くことになり、勇者が関わらなくなってしまったのだろう。
やっぱり、俺のせいでストーリーがどんどん変わってきてしまっているな……。
俺が王子の恋人になっている時点で全然違うんだよな……。
って、恋人って普通に受け入れている自分に一番ビックリだ。
俺はチラッと王子の顔を見る。王子はこちらを見て微笑んでいた。
「どうかしたかい……?」
「い、いや……。なんでもないよ」
俺は慌てて視線を外す。すると、王子は怪しげに微笑み、さらに距離を詰めてきた。
「ふーん……。私には言えないようなことなんだね……」
「ち、違うってば……ほら、そんなことより早く報告にいかないと」
「まあ、それもそうだね……」
とりあえず諦めてくれたらしい。助かった……。
「それじゃ、今度こそ父上の元に向かおう」
そして、俺達は国王の元へと向かった。

国王への報告が終わり、2人で部屋に戻る。
「ふう……。やることがいっぱいだな……」
俺はソファに座ってため息をつく。
魔王のことに、勇者のことに、今後の方針など、考えることはたくさんある。
「そうだな……。だが、その前に……ミノルは少し休んだ方が良い」
「え?どうして……?」
「色々あって疲れているだろう」
「まぁ……たしかに……」
俺は苦笑いを浮かべる。
「一緒にお風呂入らないかい?身体を洗ってあげよう」
「お、おお……!?」
突然の誘いに、俺は思わず動揺してしまった。
「嫌なのかい……?」
「い、いや……!全然そんなことはないよ!?」
別に断る理由はないし、むしろ嬉しいのだが、ちょっと恥ずかしい……。
さらわれている時に、色々自覚してしまったというのもある。
「そうか。じゃあ、入ろう」
「う、うん……。分かったよ」
こうして、一緒にお風呂に入ることになった。

脱衣所で服を脱ぎ始めると、王子が俺の方を見つめてくる。
「ど、どうかしたの……?」
「いや……。ミノルの身体は綺麗だなと思ってな……」
「そ、そうなの……?」
「ああ……。とても美しい……」
王子は目を細めて言った。
「王子こそ……。すごくカッコいい身体だよ……」
俺は照れながら答える。
「ふふ。ありがとう」
2人とも裸になり、浴室に入った。

王子はタオルで泡を立て、それを俺の背中に乗せていく。
「気持ち良いかい……?」
「うん……」
王子は丁寧に俺の体を洗ってくれた。
「よし……。次は前もやらせてくれ……」
「う、うん……」
俺は恥ずかしかったが、王子に言われた通りにする。
「ん……くすぐったい……」
「ミノル……。君は本当に可愛いな……」
王子は俺の体に泡立った手を這わせていく。くすぐったくてゾクッとする感覚に襲われた。
(なんか……王子に触られると変な感じに……)
やがて全身を洗い終え、一緒に湯船に浸かった。
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