デッドエンドで処刑された悪役令嬢は、魔王様の手により蘇って溺愛されるそうです

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9 魔王様結婚式のために支配する

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「これは······思ってた以上に酷いなぁ·······」

遠見の魔法で魔王が見ているのはドランタ帝国という国だ。貧富の差が激しく、皇帝の独裁が強くそして·······おそらく1番支配が容易な国だが、魔王が着目したのはそこではない。

「やっぱりここの教会が1番理想的だよなぁ·······」

そう、魔王が着目したのは帝国の教会。とはいえ、本殿ではなく孤児院などと併設した小さなところだ。ローズに聞いたところ、結婚式はしたいけど人は呼びたくない。また、大きいところではなく小さいところで2人きりでやりたいということなので、そこが理想的なのだ。

「下準備はオーガストがしてくれた。すぐにでも支配は可能だが······まずは、ここに行くとするか」








「アレイ!しっかりして!アレイ!」

必死に横たわる少年に声を掛けつづける少女。少女の名前はレレイ。片目を貴族に焼かれて逃げたところ、この孤児院に拾われたのだ。そして、ぐったりと横たわる少年はアレイ。彼女の1番の友達だった少年だ。

少年趣味の貴族に玩具にされてから、自分のことを女の子だと思うようになってしまうまでに心を壊されていた彼が、先日から体調を崩していたのだが······今日になって、虫の息になっていたのだ。流行病だろうとシスターは言っていた。とはいえ、この孤児院に医者にかかるお金などなく、レレイが夜中にこっそり娼館で働いても払えるような額ではないのだ。

そう、本当に彼女達は無力だった。大人に弄ばれて最後まで苦しんでから死ぬ······これが地獄じゃなければなんだというのだろうか。

(神様······悪魔でもいいの。アレイを助けて······!)

涙を流して祈るレレイをシスターの1人がそっと抱き寄せると何やら表が騒がしくなった。シスターが様子を見に行ってからしばらくすると··········ポンっと、自分の頭に大きな手が乗ったことが分かった。振り返ってレレイは驚愕する。それは本で読んだような魔王と呼ばれる存在。しかし、レレイはそこまで怖くはなかった。

目が優しいと感じたのだ。だからこそ、レレイは思わず魔王に懇願していた。

「お願い·····!アレイを助けて······!」
「······いいだろう。その代わりお前は私に何を支払える?」
「わ······私の全てを!」
「よかろう」

ポンポンと頭を撫でてから魔王はそっとアレイに触れる。するとーーー奇跡が起こった。苦しそうにしていたアレイは一瞬で顔色が良くなり、それどころか体にあった古傷も消えていたのだ。

魔王は他にも流行病で倒れてる子供を触って助けていく。その光景に誰もが驚きつつも畏怖の念を抱いていつしか彼に頭を垂れていた。

「魔王様。子供達を救っていただき本当にありがとうございます······」
「礼は働いて示して貰おう」
「はい·········どうぞ、私達をお召し上がりください。ですが子供達だけは何卒·······」
「その必要はない」

魔王は空中から大きな袋をいくつかと、樽を3つ。そして持てるくらいの袋をシスターに投げて言った。

「数日はこれで持つだろう。その後にその袋は使うといい」
「これは······き、金貨!?」

眩いばかりのそれは間違いなく純度の高い金貨。価値にしたら相当なものに驚くシスター達に魔王は言った。

「これからこの国を支配する。その後で私は妃とここで式をあげる。その時に役に立て」
「は、はい!魔王様!」

ふと、魔王は先程縋ってきたレレイを見るとポンと触れてから言った。

「サービスだ。操はその好きな相手にでも使うといい」

そう言ってから今度こそ魔王はその場から立ち去った。そしてシスター達は近くの大きな袋に入った食料と、樽に入った飲水に歓喜をして、魔王に深い感謝を贈っていたのだった。

そして、レレイは気づいた。魔王が何を自分にしたのかを。それは本当に偶然だった。子供が産めないくらいに破壊されて痛みがあったはずの自分の大切なところが生娘だった頃のように普通に戻っていたのだ。それだけじゃない。焼かれて見えなかったはずの片目に光を感じ取ったのだ。

「魔王様······神様だったんだ······」

それが、レレイが魔王を崇拝するようになった出来事。そして、そこから魔王がこの孤児院と教会で崇拝する存在となったのは言うまでもないだろう。






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