悪役令嬢の父親に転生したので、妻と娘を溺愛します

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54 隠し味は愛情

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「ふんふーん♪」

オッサンが一人で鼻歌歌いながらレッツクッキング。普通に考えたらシュールだけど俺は気にせずに続ける。厨房に立ち、二人のためにお菓子を作る時は仕事よりも充実感がある。

いやー最近は仕事を頑張りすぎているから俺としてもこういう時間は大事にしたいんだよね。無事平穏、ローリエとサーシャを愛でる時間が大切なのであってーーー

「あの・・・フォール公爵」

ーーーこうして何故か攻略対象の王子が厨房に訪ねてくるなんてことはあっちゃいかんでしょ。うん。
俺はなんとか表情には出さずになんとか取り繕って言った。

「これはこれはセリュー様。本日はローリエとのお茶で来られたのですよね?」
「は、はい!姉さんと一緒に来ました」
「そうでしたか。それでこちらに何かご用でも?もしかして本日のお茶菓子お口に合いませんでしたか?」
「い、いえ!そんなことないです!すごく美味しかったです!」
「それは良かったです。では如何なさいましたか?」

そう聞くとセリュー様は少し躊躇いがちに言った。

「あの・・・フォール公爵はどうしてこんなにお菓子を作るのが上手なんですか?」
「そうですね・・・食べる人のことを考えていれば自然と美味しくできますよ」
「食べる人のことですか?」
「ええ」

そんなので美味しくなるのかと首を傾げるセリュー様に俺は少しだけ可笑しくなって笑って答えた。

「意外とそれが重要なんですよ。私は常に妻や娘が美味しく食べられるように考えて作ってます。食べる人のことを考えるということはその人が何を食べたら笑顔になってくれるかを考えることなんです」
「何を食べたら笑顔になるか・・・」
「ええ。相手の好みや性格なんかを把握していれば自然と相手に合わせたものが出来ます。まあ、あとは愛情を込めるというのも大切ですね」
「あ、愛情ですか?」
「どんな愛情でも構いません。好きな人への愛情でも、家族愛でも、親愛でも、友愛でもなんでも構いません。それらがお菓子の品質を高めてくれます」

と、そこで俺は少し喋りすぎたと思いセリュー様を見るとーーーセリュー様は何故かキラキラした瞳をこちらに向けてきていた。

「フォール公爵はいつもそんな凄いことを考えているんですね!」
「まあ、自然とそうなるというか・・・」

俺の場合行動の理由が基本的にサーシャとローリエの二人だからそうなってしまうのが必然的なのだがそんなことを知らないセリュー様は何故か納得したように頷いたのだった。

「僕も相手のことを考えて頑張ってみます!ありがとうございます!」
「いえ、お気になさらず」

あまりにも純粋な笑顔に思わずこちらも少しだけ笑みを浮かべてしまう。まあ、この子が将来的にゲーム通りの性格になるかはわからないけど、こんなに素直なら間違った道には行かないだろうと少しだけ期待するのだった。




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