悪役令嬢の父親に転生したので、妻と娘を溺愛します

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93 婚約と婚約者候補

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「いきなりの謁見とは驚いたが覚悟は決まったようだな」
「ええ、一応」

俺は国王陛下に直接謁見していた。どうしてもこいつに言わないといけないことがあったからだ。タイミングが良かったのか隣には王妃様もおり、不思議そうにこちらを見ていた。

「では、セリューとの婚約の話は進めて良いのだな?」
「いいえ、もちろん違いますよ」
「なに?」

眉を寄せる陛下に構わずに俺は言った。

「以前から申しているように私は娘の幸せを願っているのです」
「聞いておる。だからこそセリューとの婚約が一番の幸せであろう」
「陛下はそうお考えなのですね。でも私は少し違うのですよ」
「違うというと?」

そう聞いてきたのは王妃様だ。あまり話の邪魔をするつもりはなさそうだけど、好奇心からの質問に俺は逆に聞いてみた。

「王妃様は今幸せですか?」
「それは・・・まあ、そうね」
「ええ、お二人の関係を見てればそれは伝わってきます。でも王妃というのは誰にでも務まるものではない」
「・・・そうね。でもローリエちゃんならなれると私は思うわよ。あなたとサーシャの娘ですもの」
「ええ、あの子は賢いですからその辺も理解しているでしょう」

そう、ローリエは言ってしまえば天才なのだろう。でもだからこそ

「だからこそあの子には自分の目指す道をしっかりと自分で判断して欲しいのです」
「・・・つまり断ると?」
「ええ、そう言いたいところですが婚約にメリットがあるのも確かです」

ローリエの虫除け、将来のことなどを考えれば総合的にはプラスになりえるだろう。でもその影にあるデメリットも見逃してはいけない。この判断一つでローリエに過酷な王妃教育を強いることになるのだから。ましてや、乙女ゲームの展開に近くなるデメリットは大きい。だからこそ俺はこれを言いたくてここに来た。

「だからこその折衷案を提示しに来ました」
「折衷案だと?」
「ええ、もしローリエをセリュー様の婚約者にとどうしても望まれるなら二人の関係は学園の卒業までは婚約者"候補"としておくこと。もちろんローリエには王妃教育をうけてもらいますが、もし二人の気持ちが卒業までに変わったらすぐにローリエとセリュー様には別れてもらいます」
「・・・そんな一方的な話に乗るとでも思っておるのか?」
「ええ、乗らないなら断ります。でも今の陛下の情勢で他にローリエ以外の婚約者候補は何人いますかな?」

この人は今内外に敵が多い。だからこそこの話に乗らざるえない。よしんば陛下の力で無理矢理婚約させられたらいくつかの項目をつけて婚約破棄を有利に運べるようにするか、クーデターでもおこして国を乗っ取るのも悪くない。

そんな俺の予想外の言葉にしばらく陛下が黙っていたが、かわりに王妃様が笑いながら言った。

「最近のあなたは本当に面白いわね。まさか国王を脅すなんて」
「人聞きの悪いことを。取り引きですよ。娘の未来がかかってるものでね」
「ふふ、どうするのあなた。このタイミングでフォール公爵家を敵にしたら今度こそクーデターでもおこされて私とあなたは斬首にでもされるかもね」

思ったよりも楽しそうに笑う王妃様に呆れながら陛下は言った。

「楽しそうに笑うでない。まったく・・・フォール公爵。最後に聞いてもよいか?」
「なんなりと」
「貴公が大切なのは国か家族か」
「無論家族です」
「はは、なるほど。あいよくわかった。貴公を読み違えてたこちらのミスであろうな」

そうしてしばらくしてから陛下は頷いて言った。

「貴公の案に乗ろう。かわりに一層の忠節を頼む」
「ご心配しなくても、陛下が事を起こさなければ私は味方ですよ・・・今は」
「ゆめゆめ、忘れないでおこう」

こうしてローリエの婚約に関しては一応の決着を見せた。時間は稼いだ。あとはローリエの頑張りと判断に任せるしかないだろう。情けない父親だが、それでも絶対に娘を守ると誓うのだった。


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