悪役令嬢は溺愛される

yui

文字の大きさ
42 / 79

察しの良すぎる親友

しおりを挟む
「おや?遅かったね」

執務室に戻ると何故かロインが机で仕事をしてくれていた。
さすが相棒・・・一度はマリーナを部屋に送って帰ったと思ったのに、俺の思考を呼んだかのように先に仕事を手伝ってくれているとは。

「マリーナとはいいのか?」

せっかく長年の念願が叶ったのだ。初日は離れないと思っていたけど・・・
そんな俺の疑問にロインは首をすくめて答えた。

「何・・・あせる必要はないからね。これからじっくり愛を深めていくつもりだよ。それに・・・終わったんだろ?」

「・・・流石だよロイン」

「これでも君の懐刀のつもりだからね・・・ま、ジークフリードには負けるけど・・・」

「あの人外執事と比べる必要はないだろ?」

そもそも奴は存在がもはや超状的だからね。
執事になると人間を越えた力を持てるらしいから。古今東西、執事といえば最強がトレードマークと言っても過言ではないし、実質的には間違いなく優秀なロインが相棒と言えるだろう。

「人外・・・は失礼ですよアルト様」

「・・・・そう言うなら、気配を消していきなり後ろから現れるな」

見ればいつの間にか紅茶を持って後ろに立つジークフリードの姿が・・・もうね、馴れって怖いわー。最近、ジークフリードがいきなりいても心臓に悪くなくなってきたんだけど・・・

「お茶をお持ちしましたよ・・・ロイン様もどうぞ」

「ありがとう。ジークフリード」

俺も席に座りとりあえずジークフリードの淹れてくれた紅茶を飲む・・・はぁ・・・

「お疲れ様。さて・・・色々聞いてもいいかな?」

俺が一息つくとロインが苦笑気味にそう言ってきた。
はいはい・・・俺はとりあえず今日の出来事をかいつまんでロインに話していく。

まあとはいえ、ヒロインの記憶持ちとかストーリーとかは話せないからぼかしながら、行ったことと、結果を話すと、しばらく黙って聞いていたロインだったが・・・最後に納得したような表情を浮かべた。

「なるほど・・・つまり、あの女の掌で踊らされていたのか」

「端的に言えばな。まあ、とはいえ、俺達も早めに不穏分子を間引けたことは大きいよ」

「たしかに・・・それで?あの女はもう学園を止めたんだよね?」

「ああ、婚約者のセルゼ・マルート伯爵子息の家に行くんだと」

「婚約者・・・とりあえず今後は干渉はしてこないと見ていいんだよね?」

ロインの言葉に頷いて答える。

「ああ、俺達の目的とあいつらの目的は別だからな・・・とりあえず一件落着だよ」

「なるほど・・・それで?まだ何か話がありそうだけど?」

流石親友・・・俺の心を呼んでいるように話題をふってくれた。

「あぁ、この騒ぎでしばらくは学園も休みに入るだろうし・・・エミリーとマリーナを誘ってどこかに行こうかと提案しようと思ってな」

「まあ、学園の上層部はまだ慌ただしいみたいだしね。ただ、仕事が終わるかが問題だね・・・」

「そこなんだが・・・一度報告も兼ねて、父上に話をしようかと思ってな」

その俺の言葉に驚いたような表情を浮かべるロイン。

まあ、当然と言えば当然なんだけど・・・記憶にはあるが直接会ったことがない父親と前のアルトはあまり仲良しというよりウェットな関係・・・というか、アルトが一方的に苦手にしていたようなのでロインとしてはこの提案事態が驚きなのだろう。

「陛下に?ということは・・・城に一度帰るのかい?」

「ああ、ついでにお前らの婚約の件も話したいし・・・何より、エミリーとの関係をしっかりと見せつけておきたいんだ」

記憶にはあるが・・・父親はわりと俺とエミリーの関係を気にしていた節があるのでここでハッキリとさせておきたいのだ。

俺の決意の言葉にしばらくなにかを考えていたロインだが・・・ふと表情を緩めると言った。

「わかったよ・・・とりあえず陛下に色々報告も兼ねて4人で城に行くべきだろうね。それにしても・・・アルトが自分から陛下に会いたいなんて・・・陛下が知ったら泣くほど喜びそうだよね」

「そこまでか?」

確かに父親はわりと前のアルトを可愛がってはいたようだけど・・・そんなにか?

「まあ・・・王妃様も今の二人を見れば安心するだろうしね」

「母上も心配かけたからな・・・」

前のアルトさんは多方面に心配かけるキャラだったので後始末が大変すぎる・・・まあ、エミリーとの関係を見せつければ万事OKなんだけどね。

「とりあえず・・・明日の朝に二人には話して、明後日か明明後日には会えるようにしておきたいな。ジークフリード。父上と母上への謁見許可を頼めるか?」

「すでにお二人には許可を得ておりますよ。いつでも大丈夫だそうです」

「・・・急がしいはずだよな?」

こいつがすでに許可を得ていたことへのツッコミはなしにしておくが・・・いいのか国王と王妃がそんなんで・・・

呆れた表情をしているとジークフリードはいつもの微笑みで言った。

「お二人ともアルト様が大好きですからね。それに今のアルト様を見ればお二人も感動なさるでしょう」

「・・・前の俺を最悪のように語るなよ」

毒舌執事を睨み付けながら俺と、それを見て笑っているロインは仕事を進める。
少しでも早く終らせてエミリーとの時間を作ってみせる!








しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

処理中です...