悪役令嬢は溺愛される

多分、迫られたら狼さんに変身する（確信）

翌日になり、朝食の席で二人に話をするとやはりというか、かなり驚かれたが・・・まあ、OKは貰えた。

うん、前のアルトがマジで情けなく感じるよ・・・親に会いに行くと言って驚かれる関係って・・・

「陛下にお会いするのはお久しぶりですね」

「エミリーは王妃教育で母上には結構会っていたしね」

流石は俺のエミリーというか、本来ならもう少し時間がかかりそうな王妃としての教育は学園入学前に終らせているので、母上とはわりと頻繁に会っていたようなのだ。

息子より婚約者の方が頻繁に会うのもどうかと思わなくはないが・・・まあ、そこはある程度アルトさんのせいなのでスルーで。

「はい。王妃様とは結構お会いする機会がありましたが・・・陛下にはどれくらいぶりでしょう？」

アルトさんの記憶が確かなら1年前の夜会以来です。
婚約者としてここ最近エスコートしていたのもそのあたりまでなのが本当に前のアルトさんの愚かしいところだよね。こんなに可愛いエミリーのエスコートをしないなんて・・・愚者の極みだよ。

「心配かけていたようだからね・・・エミリーと私のイチャイチャを二人に見せつけてあげようか」

「い、イチャイチャですか・・・？」

ん？変なこと言ったか・・・あ、イチャイチャの部分か。

「うん。私とエミリーの仲を二人に見せつけるのが今回の目的だからね」

「・・・・・・・」

エミリーはその言葉に顔を赤くして俯いてしまった・・・ちょ、可愛いすぎるでしょ！

「ラブラブなのはいいけど・・・私とロインも一緒に行くのはどうしてなの？」

マリーナが呆れた表情で聞いていた。
なお、エミリーはその言葉にさらに顔を赤くしていたので俺はそれを内心で悶えながら見守りつつ答える。

「ロインとマリーナの婚約の報告も兼ねてね。二人には今後は更に協力して貰うことが増えるだろうからね」

「そ、そうなんだ・・・でも、アルト様にそんなこと言われるなんて思いもよらなかったよ」

婚約の部分に少し照れたのかマリーナが話を反らしてきた。
俺は無意識のうちにエミリーを抱き寄せて愛でながら首をかしげた。

「そう？」

「うん。今のエミリーへの態度もそうだけど・・・昔は私やロインにもそんな感じに頼って来ようとしなかったしね」

「・・・まあ、好きな人のためなら人は変わるものだよ」

腕の中で恥ずかしそうに・・・でも嬉しいのか頬を赤くしているエミリーに表面上は慈愛の瞳を・・・内心では理性との激しい激闘を繰り広げながら俺はとりあえずそう答えた。

うん、だって、いきなり人格が変わったとか言えないもの。
前のアルトは確かに一人でなんでもしようとしていたからいきなり頼るのはかなり不自然かもしれないが・・・エミリーとの時間を作るには仕事を頼める人間に頼むしかないのだ。

にしても・・・エミリーが可愛いすぎる！

いつまでも些細な行動や言動で照れたり嬉しそうにしてくれる初なエミリーの可愛いさがヤバイ！
アルトの今までの行動のツケかもしれないが・・・こんな可愛いエミリーの姿を見れるなら少しだけ前のアルトには感謝もある。

ツンの時期が長かったせいなので、デレに極端に免疫がないエミリーには何をしても真っ赤になってくれるので見ていて感慨深いものがある。

いや・・・正直に言おう。

エミリーが可愛いすぎて、マジで狼さんへの変身が秒読みになってきている。
羊さん負けるな！俺は紳士なのだ！

まあ、エミリーに迫られたら簡単に落ちるけどね。うん。今のところエミリーからのアクションはないけど・・・今後、少しでもエミリーからのアクションがあればおそらく俺は羊を丸飲みして狼さんへと大変身を遂げることだろう。

そんなことをしみじみと思いつつ、目の前ではロインとマリーナもじれじれしたような感じの甘い雰囲気になっていたのに気づいたのは食後のことだった。

エミリーしか眼中になかったので仕方ないのだ。うん。